CTO(最高技術責任者)とは?役割や求められる姿・スキルを詳しく解説
現代のビジネスにおいてCTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)は企業の成長と成功を支える重要な役割を担っています。特にテクノロジーの進化が急速に進む中で、CTOは企業の技術戦略の舵を取る重要なポジションです。
しかし、その役割や業務内容は非常に幅広く多岐にわたります。CTOとはどのような役職であり、CEOや他の役員(CIO、CFO、COOなど)とはどう違うのでしょうか。また、技術戦略の立案や意思決定や技術チームの監督など、CTOが担う具体的な業務内容についても理解が求められます。
さらに、企業の成長フェーズ(準備期間、創業期、事業拡大期、事業発展期)によってCTOに期待される役割や求められるスキルも変化します。例えば、創業期では実務的な技術リーダーとしての役割が重視されるのに対し、事業発展期には経営やチーム統率が求められることが多いです。そのため、各フェーズに合わせた適応力と戦略的視野が不可欠です。
CTOには経営知識だけでなくリーダーシップや高度な技術知識も求められますが、そのバランスをどのように保ち企業にとって最適な技術戦略を立案し実行するかが、企業の成長を左右する鍵となります。
この記事では、CTOの役割や求められるスキルや企業の成長段階に応じたCTO像について詳しく解説します。CTOという役職について知りたい方や、CTOを目指す方にとって参考となる情報をお届けします。
CTOとは
CTOとは「Chief Technical Officer」または「Chief Technology Officer」の略で、日本語に訳すと「最高技術責任者」になります。日本の企業では技術部長や開発部長を指します。1980年代のアメリカにて研究開発ディレクターの立場を拡大した役職として誕生しました。
日本の企業においては、CTOに関する取り決めはなく、配置の義務付けもありません。しかし、IT企業や外資系企業をはじめスタートアップ企業で浸透が進んでおり、キャリアの選択肢になりつつあります。
CTOとCEOの違い
CTOとCEOの違いは担当部門です。CEOは「Chief Executive Officer」の略で「最高経営責任者」と訳される通り、経営部門の最高責任者です。CEOは経営方針に対して責任を負い最終的な決定を行うため、序列としてはCEOが企業内のトップになるのです。日本国内では、会長や社長がCEOの役目を担っています。
また、CTOとCEOではそれぞれ活かせる経験も異なります。エンジニアやプログラマーなど技術職の経験が活かせるのがCTOで、経営の経験を活かせるのがCEOです。IT企業の創業時には、CEOがCTOを兼ねる場合もあります。
その他の責任者との違い(CIO、CFO、COO、CKO、CPO)
CTOやCEOといった責任者をまとめてCxOと呼ぶことがあります。CxOとは「Chief:組織の責任者」+「x:業務・機能」+「Officer:執行役」のことで、日本語に訳すと「最高◌◌責任者」です。◌◌の部分が異なるため、責任の対象が異なります。
責任対象が異なると業務範囲や仕事内容がどう違うのかを個別に見てみましょう。
COO
COOは「Chief Operations Officer」の略で「最高執行責任者」です。執行は経営との対比で名づけられており、業務全般の執行を担っています。
COOは経営ではなく実務側の最高責任者ということになります。企業内の序列はCEOに次ぐポジションで、CEOの決定方針を日々の業務に落とし込み、各部門へ適切に指示を出さなければなりません。そのため、自社事業の理解はもちろん実行力やマネジメント力が必須です。
CIO
CIOは「Chief Information Officer」の略で「最高情報責任者」です。企業の情報戦略に関する責任を持ち、企業利益に関連する情報を管轄します。
CTOがCIOを兼任する場合もあり近い存在ではありますが、CTOが技術を主に扱うのに対し、CIOは情報を主に扱う点に違いがあります。CIOは現場と経営陣との橋渡しをする役目を担うため、現場でのサポートも行うCTOのほうが現場との距離が近いといえるでしょう。
CFO
CFOは「Chief Financial Officer」の略で「最高財務責任者」です。社内全体のお金を統括する役割で、日本の企業では財務部長がCFOになるケースが多いです。
財務分析や予算管理から企業の経済的な安全性を評価し、経営陣や取締役会に対して経済的な視点から意思決定について助言をします。また、投資戦略や資金調達を立案し、企業の収益性を最適化する役目も果たします。しかし、最終的な判断はCEOの役目です。
CMO
CMOは「Chief Marketing Officer」の略で「最高マーケティング責任者」を表します。
データ活用を含んだマーケティング戦略の立案・利害関係者との関係構築・他部署との連携が主な業務です。マーケティングの最高責任者のため、消費者心理を理解する力が求められます。
CPO
CPOは「Chief Privacy Officer」の略で「最高個人情報保護責任者」を意味します。
個人情報保護のため、プライバシーポリシーの策定・クレーム処理・コンプライアンスの徹底・内部監査体制の構築が業務です。昨今、個人情報保護の重要性の高まりから設置されるケースがあります。
CKO
CKOは「Chief Knowledge Officer」の略で「最高知識責任者」を表します。
知識やノウハウを社内に適切に浸透させる環境づくりが役目です。社内に蓄積される情報や知識、そして技術を精査し、必要な場面に応じて活用できるようにします。
CTOの役割・業務内容
CTOは、技術部門を担当する最高技術責任者であることを説明しました。では、その役割や業務内容はいったいどのようなものでしょうか。ここでは、CTOの役割や業務内容について詳しく解説します。
技術面に関する意思決定
CTOは技術的な部分の選定や最終意思決定を行います。技術面の意思決定をすることで技術開発の成果を製品に組み込み、新たな価値創出が期待できます。
企業のイノベーションには新しい価値観や技術の取り込みが必要です。そのため、CTOの意思決定は、企業の発展に関わる重要な役割です。
技術経営
CTOは、技術を利益に結びつける技術経営(MOT=Management of Technology)の役割も果たさなければなりません。ここでの利益とは、技術を売る直接的な利益と技術から製品開発を行う間接的な利益のどちらも含んでいます。
利益に結び付けるため、技術を費用対効果から見る事が求められます。なぜなら、エンジニアは利便性の観点から技術開発を積極的に行いますが、CTOの場合はコスト削減や利益拡大できるかといった経営視点から技術の利用を判断するためです。
技術チームの監督
技術チームの監督もCTOの役割です。具体的には目標に沿ったスタッフの任命・チームの構築・プロジェクト進行管理を担います。チームの人員が足りない場合、エンジニアの採用方針を決定する立場にあります。採用方針は不足している技術力と、既存のチームバランスを考えたうえで決定します。
また、採用決定した人物を含めチームの教育もCTOの担当です。技術的なアドバイスやトレーニングを提供し、チーム全体の成長を促進します。技術チームの監督として、CTOは多岐にわたる役割を果たします。
情報収集と社内共有
CTOは、プロジェクトに必要な技術を選択する役目もあります。そのため、最先端技術に関する情報収集をし、情報は社内共有しなければなりません。
情報を社内共有する理由は、技術の選定の際、経営層とビジョンを共通化するためです。スムーズに話し合いを進めるためには、社内共有が必須なのです。情報共有から新しいアイデアが生まれることも多く、これも情報共有のメリットといえます。
【企業フェーズ別】CTOに求められる姿
CTOに求められる姿は企業のフェーズによって異なります。企業のフェーズは「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」の4つです。それぞれのフェーズで、どのような姿が求められるのか解説します。
シード(準備期間)
シードは「準備期間」すなわち起業前の段階です。この段階で必要なのは率先した開発業務のため、マネジメントスキルよりも、実践的な技術力が重視されます。プロトタイプの開発を行いつつ、自身の持つ技術スキルをさらに高めるのが、CTOに求められる姿といえます。最新のテック事情への知見や開発能力を培いましょう。
アーリー(創業期)
アーリーは、創業して間もない創業期です。この時期には技術チームを率いて、技術開発の確立や方針の策定ができるマネジメントスキルの高さが求められます。なぜなら、創業期には商品・サービスのリリースとその運用・改善が必要なためです。
ミドル(事業成長・拡大期)
ミドルの時期には、事業が成長・拡大します。この段階で求められるのは、経営戦略を策定する経営層としての姿です。人事評価、エンジニアの採用や育成、トラブル対応、社外への発信など業務の幅が広がっていくことを考慮して業務に取り組みましょう。
レイター(事業発展)
レイターとはこれまでの活動が実を結び、企業の事業がより発展する段階です。この時期には、後任のCTOを育成していく姿が求められます。また、人数が増加した技術チームをまとめるマネジメントスキルも求められます。最新技術や次世代のビジョン作成はもちろん、経営層として会社を率いる高度なマネジメントスキルも必要です。
CTOに求められるスキル・知識
CTOには、技術に関するあらゆる面を網羅する、さまざまなスキル・知識が求められます。ここでは、代表的なスキルと知識を3つご紹介しましょう。
経営知識
CTOに求められる知識の1つは経営に関する知識です。CTO最大の役目は、技術から利益を最大化することにあります。そのためには、技術を開発・運用するだけでなく、既存の技術を新しい分野に応用して新サービスを創出するといった、技術の活用方法を考えていく必要があるのです。
さらに、開発プロジェクトに適切な予算を割り当て利益を最大化するために、予算編成に関する洞察力も必要になります。
リーダーシップ
技術チームをまとめるため、リーダーシップが求められます。技術戦略の適切な実行には、チームのエンジニアやプログラマーの協力がなくては成し得ません。協力してもらうためには指示するだけの一方的なコミュニケーションではなく、双方向のコミュニケーションが必要です。
信頼関係構築のために会社の方針をしっかり説明したり、エンジニアやプログラマーの意見に耳を傾けたりしていきましょう。信頼関係があることによって、同じ目標に向かって成果をあげられるのです。目標達成のためにチームの構成員が能力を発揮できるかどうかはCTOのリーダーシップにかかっています。
リーダーシップの型は以下3つに分類されることが多いです。
コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップはチームメンバーが成長し、独自の目標を達成できるようサポートするリーダーシップスタイルです。CTOはエンジニアや開発チームが自主的に動き、成果を上げる環境を作ることで、チームの能力を最大限に引き出すことができます。メンバーの強みを引き出し、個々の成長を促進することでチーム全体の生産性も向上します。
ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップは企業や技術チームに対し、長期的な目標やビジョンを示すスタイルです。CTOは自社の技術戦略を実現するための明確なビジョンを持ち、それをチームに浸透させることで、統一感とモチベーションを高めます。未来の方向性を示し目標達成への意識を共有することで、チームが同じ方向を目指しやすくなります。
指示型リーダーシップ
指示型リーダーシップは特定のプロジェクトや緊急事態において、迅速な意思決定が必要な場合に有効です。CTOが明確な指示を出し具体的な行動を指示することで、プロジェクトの進行やリスク対応がスムーズに行われます。特に短期間での成果が求められる場面では、指示型リーダーシップが効果を発揮し迅速な対応が可能となります。
技術に関する知識・ノウハウ
技術に関する知識とノウハウは、CTOに欠かせません。小規模な企業ではCTOもエンジニアとして業務に関わることもあります。知識レベルとしては製品やサービスを自身で再構築できる力や、アイデアの試作品を作れるレベルの力が必要でしょう。クラウド・ビッグデータ・AIなど最新のテクノロジートレンドの把握もしなければなりません。
また、経営戦略に沿って技術を選定し利益を最大化することが任務であるCTOは、エンジニアとしての知識だけでは不十分です。エンジニアの知識に加えて、利益最大化のためにどの技術をどのように運用するかという知識・ノウハウも必要となります。
CTOのキャリアパスとは?求められるスキルと成長のステップ
CTOは、企業の技術戦略を牽引するリーダーであり、そのキャリアパスには特定のスキルや経験が必要とされます。ここでは、CTOになるための一般的なキャリアステップと、それぞれのステージで求められるスキルを詳しく解説します。
エンジニアからCTOへのキャリアステップ
CTOへの道は通常エンジニアやプログラマーとしてのキャリアからスタートします。この初期段階ではコーディングや開発の知識が必要で、技術に対する深い理解が重要です。コードの記述やアーキテクチャ設計、問題解決能力などを磨くことで土台となる技術力が身につきます。
中には、プロジェクトマネージャーやテックリードを経験することで、技術とマネジメントのスキルを磨きながらCTOを目指す人もいます。エンジニアとしての幅広い経験が、将来のCTOとしての信頼を築く一歩です。
テックリードやマネージャーを経てCTOへ
次のステップでは、テックリードや技術マネージャーとして開発チームを統率する立場に進みます。この段階では単なる技術スキルだけでなく、チーム全体を見渡しプロジェクトの進行管理やメンバーの育成に携わる能力が求められます。メンバー一人一人の能力を引き出し、プロジェクト全体がスムーズに進行するように調整することで、CTOとしてのリーダーシップの土台が作られます。
さらに、マネージャーとしての評価制度や目標設定やフィードバックのスキルも身につくため、CTOに近づく上で大切な経験です。
CTOに就任した後のキャリアの可能性
CTOになった後も、企業の成長や方向性に応じて新たな挑戦が求められます。経営戦略に深く関与することも増え、技術統括だけでなく戦略的な意思決定や会社全体を見渡すビジョンが必要です。事業拡大期には後任の育成や技術の選定、M&Aに携わる可能性もあります。
CTOとしての成長は企業全体に影響を及ぼす新しい分野への挑戦、あるいは技術と経営をより強く結びつけた戦略の立案にあります。長期的には、経営層の一員として経営全体の意思決定にも関わる可能性があるでしょう。
まとめ
CTOは、社内の技術についての最高責任者です。その業務は多岐に渡り、技術を用いた会社の利益の最大化、そして現場チームのサポートなど数多くの役割が求められます。
また、多くの知識も必要で、技術チームのサポートを行うための技術に関する知識は必須です。他にも、技術を用いた利益最大化のためには経営知識も必要になります。さまざまな知識とノウハウを用いて技術についての責任を負うのがCTOなのです。
技術革新によってCTOの役職に、注目度が高まっています。今後、導入する企業が増えていくと考えられるため、CTOの業務や役割、求められている姿、必要なスキルについて理解を深めておきましょう。