API制限とは?影響と対策、ビジネスでの活用法や”X”の例もご紹介
APIは、さまざまなソフトウェアやサービス同士をつなぐ重要なインターフェースです。現代のビジネスにおいて、データの共有やシステム間の連携をスムーズに行うために不可欠な存在ですが、一方で「API制限」と呼ばれる仕組みによって、利用に制約が課されることがあります。
API制限とは、サービスの過剰な利用やシステムへの負荷を防ぐために、リクエスト数やデータ使用量などに上限を設ける仕組みです。この制限は、APIの提供者にとってシステムの安定性を維持するために重要ですが、利用者にとっては効率的な運用を妨げる課題となることもあります。例えば、リクエストがエラーとなることで業務が一時停止したり、制限値を超えないように操作を制限せざるを得なかったりすることがあります。
2023年7月1日、X(Twitter)が事前の告知なしにAPI制限を設けたことにより、ユーザーから多くの批判が寄せられました。突然、ツイートが閲覧できなくなり困惑した方もいるのではないでしょうか。
本記事では、Xなどさまざまなサービスで実施されているAPI制限について、その目的や種類、API制限がかけられた場合の対処法を解説します。API制限について理解を深めたい方はぜひご覧ください。
API制限とは何か
APIは「Application Programming Interface」の略で、ソフトウェアやサービス同士をつなぐ窓口のような役割を果たします。
API制限とは、APIを利用するユーザーに対して、リクエスト数やデータ使用量などを制限することを指します。この制限により、APIの利用をコントロールし、サービスの品質や安定性を守る仕組みが整えられています。
API制限には、以下のような目的があります。
- サーバーの負荷軽減
無制限に利用を許可するとサーバーが過負荷状態に陥り、サービス全体がダウンしてしまう可能性があります。API制限により、このリスクを抑えます。 - サービスの品質と性能の確保
過剰なアクセスが発生すると、他の正当なユーザーの利用に影響を及ぼします。API制限を設けることで、すべての利用者が安定した品質のサービスを受けられるようにしています。 - 公平なリソースの配分
特定のユーザーやアプリケーションがリソースを独占するのを防ぎ、すべての利用者に適切にリソースを分配します。 - 内部データの保護
APIへの過剰なアクセスはセキュリティリスクや内部データ漏洩の可能性を高めます。API制限により、不正アクセスや不適切な利用を防止します。 - 有料プランへの誘導
APIの利用量に応じた料金制度を設けることで、ビジネスモデルの一環として有料プランへの移行を促す役割も果たしています。例えば、高度な機能や大容量のデータ利用が必要な場合には、有料プランの利用を検討する形となります。
API制限の具体的な仕組みと対応方法
API制限は、リクエストの頻度制限(一定時間内に許容されるリクエスト数)やユーザーごとの制限(アカウント単位)、エンドポイント単位の制限など、さまざまな形式で実施されます。制限を超えた場合、一般的にはHTTPステータスコード「429 Too Many Requests」が返され、必要に応じて再試行のタイミングを示す「Retry-After」ヘッダーが含まれることがあります。
また、API制限には以下の種類があることも覚えておくと良いでしょう。
- ハードリミット
絶対に超えられない上限(超過時はエラーが返されます) - ソフトリミット
超過後も利用可能ですが、追加課金が発生する場合があります
これらの仕組みはAPIの利用を健全に維持し、すべてのユーザーにとって快適な環境を提供するために欠かせない要素となっています。
API制限の主な種類
APIには、利用をコントロールし、サービスの安定性を確保するためにさまざまな制限が設けられています。以下は、主な制限の種類とその概要です。
リクエスト数制限
1時間や1日といった一定期間内でのリクエスト数を制限する方法です。例えば、「1時間に1000リクエストまで」「1日あたり10万リクエストまで」といった形で設定されます。この制限により、過剰な利用を防ぎ、システムの安定稼働を実現します。
レートリミット
一定の間隔で送信できるリクエスト数を制限する方法です。例えば、「1秒間に10リクエストまで」といった制限があり、短時間で大量のリクエストを送信する行為(スパムやDDoS攻撃など)を防ぎます。リアルタイム性が求められるサービスでは特に重要な仕組みです。
同時接続制限
同じユーザーやIPアドレスからの同時接続数や、サーバーが同時に処理できるリクエスト数を制限します。例えば、「1ユーザーあたり最大5接続まで」などが該当します。この制限は、リソースの独占を防ぎ、他の利用者に影響が及ばないようにするために設けられます。
データ制限
1つのリクエストにつき送受信できるデータ量を制限する方法です。具体的には、「リクエストボディの最大サイズは10MBまで」や「レスポンスペイロードは20MBまで」といった形で設定されます。この制限により、過剰なデータ転送を抑え、サーバーの負荷を軽減します。
CPU使用量制限(クラウド型API)
クラウド型APIでは、利用可能なCPU時間や処理能力を制限する場合があります。例えば、「1ユーザーあたり1秒間に0.5CPUまで」などが該当します。この制限により、過剰な計算リソースの使用を防ぎ、サービスの安定性を保ちます。
API制限の内容を確認する方法
APIを使用する際は、そのAPIが設けている制限の内容を事前に把握しておくことが重要です。ここでは、API制限の内容を確認する主な方法を紹介します。
ドキュメントやリファレンスを確認する
ドキュメントやリファレンスは、APIの機能や使い方を詳しく説明した公式の文書です。API制限についても、多くの場合「Rate Limiting」や「Usage Limits」といったセクションで詳しく記載されています。
例えば、1時間あたりのリクエスト上限や同時接続数の制限が明示されていることがあります。まずは公式サイトで公開されている資料を確認するのが基本です。
APIの規約や利用条件を確認する
APIの規約や利用条件には、制限に関する詳細が書かれていることがよくあります。例えば、「1ユーザーあたりのリクエスト数上限」や「上限超過時の対応(追加料金や利用停止)」について触れられていることがあります。こうした規約を事前に確認しておくことで、予期せぬトラブルを防げます。
APIからのレスポンスに含まれる情報を確認する
APIレスポンスとは、リクエストに対してAPIが返すデータのことです。一部のAPIでは、レスポンスヘッダーに現在の利用状況や残りの利用回数を示す情報が含まれることがあります。
例えば、X-RateLimit-Limit(上限値)やX-RateLimit-Remaining(残り回数)といったヘッダー情報を確認することで、リアルタイムで制限状況を把握できます。
API提供者に問い合わせる
最も確実な方法は、API提供者に直接問い合わせることです。公式サイトには、問い合わせフォームやサポート窓口、FAQページが用意されている場合があります。
また、専用のフォーラムやコミュニティが活用できる場合もあります。具体的な質問をすることで、正確な情報を得られるでしょう。
実際に導入されているAPI制限の例
API制限は、実際どのように導入されているのでしょうか。ここでは、「X(Twitter)」「Google Cloud」「Salesforce」におけるAPI制限を例として紹介します。
X(Twitter)のAPI制限
X(Twitter)におけるAPI制限は、主に過剰なデータスクレイピングや不正利用を防ぐ目的で設定されています。データスクレイピングとは、プログラムを用いてウェブページからデータを自動的に取得し、分析に活用する行為のことです。これにより、X(Twitter)のサーバーやシステムに大きな負荷がかかるため、以下のような制限が設けられています。
- 投稿
1日あたり2400件まで(リポストもカウント) - フォロー
1日あたり400件まで - ダイレクトメッセージ
1日あたり500件まで - アカウントに紐づくメールアドレスの変更
1時間に4回まで - フォロー上限
5000件以上フォローした場合、フォロワー対フォローの比率に応じて制限が適用
API制限への対策としては、まず操作回数を減らすことが挙げられます。例えば、2024年11月に無料プランの月間投稿数上限が1500件から500件に引き下げられたため、利用方法を見直し無駄なリクエストを削減する必要があります。
また、有料プランを契約することで制限が緩和される場合もあります。例えば、Basicプランでは1日の投稿数が100件に制限されるものの、月間では約3000件の投稿が可能となります。利用状況に応じて最適なプランを選ぶことが重要です。
Google Cloud
Google Cloudでは、リクエスト数の制限がデフォルトで設定されており、1日あたりや1分あたりのリクエスト数に制限が設けられています。これにより、APIの割り当てを使い切ってしまうのを防ぎます。
- Google CloudのAPI制限は以下の手順で確認・変更できます
- Google Cloud コンソールを開き「APIとサービスのダッシュボード」にアクセス
- プロジェクトを選択、もしくは新しいプロジェクトを作成
- 対象のAPIを選び「割り当て」をクリック
- 「フィルタ」機能を使い、特定の割り当てを検索(例:「Quota:Subnetworks」)
- 編集したい割り当てを選択し「割り当てを編集」をクリック
- 新しい上限値を設定し「リクエストを送信」して完了
一部のAPIでは有料プランの契約が必要ですが、割り当て変更が可能な場合もあります。デフォルト制限を超える場合は、Googleが指定する範囲内での変更が可能です。
Salesforce
Salesforceでは、「ハード制限」と「ソフト制限」の2種類を設けています。
- ハード制限
リクエスト上限を超えるとエラー(HTTP 403)が返され、リクエストは拒否されます。 - ソフト制限
上限を超えてもエラーは発生しませんが、パフォーマンスが低下する可能性があります。
例えば、24時間あたりのAPIリクエスト上限はSalesforceのエディションや購入プランによって異なります。ソフト制限を解除するには追加ライセンスの購入が必要です。
API × メール配信
APIとメール配信を組み合わせることで、メールマーケティングやトランザクションメールの配信などが可能になります。。特にAPIを活用してメール配信システムと連携させると、手動の負担を減らしながら効率的な配信ができます。API制限の課題をクリアしつつ、メール配信の柔軟性を活かす方法として注目されています。
APIとメール配信の連携で実現できること
APIとメール配信システムを連携させることで、自動化と効率化を図り、顧客体験を向上させることができます。この仕組みは、リアルタイム通知やパーソナライズされたメッセージ配信、大量メールの一括送信といった多岐にわたる用途で活用されています。
- リアルタイム通知
APIを利用して特定のイベントが発生した際に自動でメールを送信する仕組みを構築できます。例えば、ユーザーのアクション(注文完了や登録)に応じてトランザクションメールを即座に送信できます。 - パーソナライズされた配信
APIで取得したユーザーデータを基に、名前や購入履歴に基づいたカスタムメッセージをメールで送ることが可能です。これにより、顧客満足度を高めることができます。 - 大規模な一斉配信
API経由でメール配信システムを活用することで、大量のメールを効率的に送信できます。この仕組みは、マーケティングキャンペーンや重要な通知を迅速に広範囲に届ける際に特に有用です。
APIとメール配信の連携は、企業のコミュニケーションの質を高め、業務の効率化と顧客満足度向上に大きく貢献します。
メールリレーサービス「blastengine」でAPI連携をして配信
ブラストエンジンは、SMTPリレーサーバーを使用して、簡単に大量のメールを高速配信することが可能です。さらに、メールサーバーを必要とせず、API経由でメールを送信する仕組みも提供しています。
ブラストエンジンは、サーバーの運用やメンテナンスを行っているため、常に高いIPレピュテーションを維持しながら、安全にメールを送ることができます。
以下のような課題がある場合は、ブラストエンジンの利用を検討してみることをおすすめします。
- 自社のIPアドレスやドメインがブラックリストに登録されていて、メールが届かない場合
- 国内キャリアにメールが届かず、対応方法がわからない場合
- 自社でメールサーバーを管理・運用したくない場合
また、ブラストエンジンは各メールプロバイダーや携帯キャリアのドメインに最適化されており、大規模なネットワークを経由してメール配信を行うことで、日本国内での到達率を圧倒的に高めています。SPF・DKIM・DMARCの設定ももちろん可能です。
利用料金は月額3,000円からとコストパフォーマンスにも優れており、メールだけでなく、日本語での電話サポートにも対応しています。
メールアドレスの入力のみで無料トライアルが可能ですので、まずは気軽にお試しください。
まとめ
API制限は、APIを提供する側にとってはシステムの安定性を確保するための重要な仕組みですが、利用する側にとっては、リクエスト数やデータ使用量の制約が課される厳しい現実でもあります。そのため、制限内容を正しく理解し、適切な対策を講じることが求められます。
この記事で紹介したように、API制限に対してはリアルタイム通知やパーソナライズされた配信、大規模な一斉配信などの仕組みを活用することで、業務効率を向上させながら制限を回避する方法があります。また、メール配信システムなどの代替手段を活用すれば、制限の影響を最小限に抑えることも可能です。
API制限に対応しつつ、ビジネスの成長を支える効果的な活用方法をぜひ模索してみてください