メール暗号化とは?仕組みや必要性、設定方法を徹底解説

現代のビジネスシーンにおいてメールは欠かせないコミュニケーションツールです。しかし、メールのやり取りには「盗聴」「改ざん」「なりすまし」といったセキュリティリスクがつきものです。特に、企業が顧客情報や機密情報を含むメールを送信する場合、不正アクセスや情報漏えいのリスクを避けるための対策が求められます。
こうしたリスクに対応する手段のひとつが「メール暗号化」です。メール暗号化を実施することで、送受信されるデータを第三者が読み取れないようにし安全な通信を確保できます。特に個人情報保護法やGDPR(EU一般データ保護規則)などの法規制が強化されている現在、企業として適切なセキュリティ対策を講じることが必須となっています。Q
メール暗号化にはSSL/TLS方式による通信の暗号化や、PGP・S/MIMEといったメール自体を暗号化する方法など、さまざまな技術があります。それぞれの方式にはメリット・デメリットがあり、目的に応じた適切な手法を選択することが重要です。また、暗号化を行うだけでなく誤送信を防ぐ機能や添付ファイルの暗号化といった追加対策も併せて実施することで、より強固なセキュリティを確保できます。
本記事ではメール暗号化の必要性やリスク、具体的な暗号化の方式、各メーラーでの設定方法、導入時の注意点まで詳しく解説します。

メール暗号化とは
メールの本文や添付ファイルを暗号化することで第三者による不正アクセスを防ぐ仕組みです。インターネット上ではなりすましや盗聴、改ざんといったセキュリティリスクが常に問題視されていますが、これはメールも例外ではありません。
特にビジネスメールでは機密情報や個人情報を扱うことが多いため適切な暗号化を行わないと、情報漏えいのリスクが高まります。メールの暗号化はこうしたリスクを未然に防ぎ、取引先や顧客からの信頼を守るために不可欠な対策です。
メールを暗号化する必要性・リスク
メールはプライベートだけでなくビジネスでも頻繁にやり取りされるため、セキュリティ対策を怠ると企業の信用に関わる問題が発生する可能性があります。暗号化せずにメールを送信すると以下のようなリスクがあります。
- 機密情報の盗難
メールの内容が盗まれると、個人情報や社内機密が流出する可能性がある - 悪用による企業の信用低下
漏えいした情報が悪用されると、自社が加害者とみなされることも - 取引先との信頼関係の破綻
社外秘の情報が流出すると、取引先との関係悪化につながる
こうしたリスクを避けるためにメールの暗号化は必須の対策と言えます。
メール暗号化のメリットとデメリット
メール暗号化はセキュリティを強化する重要な手段ですが、導入にはいくつかのメリットとデメリットがあります。適切に導入を判断するためにはそれぞれのポイントを理解することが重要です。ここではメール暗号化の利点と注意点について解説します。
メール暗号化のメリット
メール暗号化を導入すると以下のようなメリットがあります。セキュリティ強化だけでなく、企業の信用維持や法規制への対応にも役立ちます。
- 情報漏えいの防止
メールを暗号化することで、通信が傍受されても第三者が内容を解読できなくなります。 - なりすまし・改ざん対策
PGPやS/MIMEを活用すれば、送信者のなりすまし防止や、メール内容の改ざん検出が可能です。 - 法規制やコンプライアンス対応
GDPRや個人情報保護法などの規制に準拠しやすくなり、企業のセキュリティ対策として有効です。
このようにメール暗号化は企業にとって大きなメリットをもたらします。特に顧客情報や社内機密を扱う企業にとっては、導入することで安心感を提供できます。
メール暗号化のデメリット
一方でメール暗号化には注意すべき点もあります。導入時の負担や運用の手間が発生するため、事前に課題を把握しておくことが大切です。
- 導入・運用コストがかかる
ソフトウェアや証明書の取得が必要な場合があり、社内教育にも手間がかかります。 - 受信者側の対応が必要
送信者が暗号化しても、受信者が適切な設定をしていなければ復号できません。 - 対応していないメーラーがある
古いメールソフトでは暗号化技術が使えない場合があり、利用環境の制限を受けることがあります。
これらのデメリットを考慮しながら自社にとって最適な暗号化方式を選ぶことが重要です。特にメールのやり取りが頻繁な企業では、導入コストとセキュリティ強化のバランスを慎重に検討する必要があります。
メール暗号化の方式
メールを暗号化する際には基本的に「鍵」を利用します。その鍵の扱い方によって暗号化方式は大きく2つに分かれます。
共通鍵暗号方式
送信者と受信者が同じ鍵(共通鍵)を共有し、その鍵を使って暗号化と復号を行う方式です。メリットは以下の通りです。
- 暗号化・復号の処理がシンプルで高速
- 比較的低コストで運用可能
一方で、以下のようなデメリットもありますので注意しましょう。
- 共通鍵が漏えいすると、第三者に内容を解読される可能性がある
- 鍵の管理が重要になるため、大規模運用には向かない
この方式は「秘密鍵暗号方式」とも呼ばれ、主に社内ネットワークなど限られた範囲で利用されることが多いです。
公開鍵暗号方式
「公開鍵」と「秘密鍵」の2つの鍵を使用する方式です。
メール暗号化の流れ
- 受信者が秘密鍵から公開鍵を作成し、送信者に渡す
- 送信者が公開鍵を使ってメールを暗号化
- 受信者が暗号化されたメールを受け取る
- 受信者が秘密鍵を使って復号する
公開鍵暗号方式のメリットは以下の通りです。
- 暗号化と復号に異なる鍵を使うため、公開鍵が漏れても内容を解読される心配がない
- 送信相手以外が復号できないため、安全性が高い
一方で、以下のようなデメリットもありますので注意しましょう。
- 共通鍵方式に比べて処理が複雑で、運用コストが高くなる
- 鍵の管理が必要で、導入時に手間がかかる
公開鍵暗号方式はビジネスシーンでの機密情報のやり取りに適しています。
メール暗号化の種類
メールを暗号化する仕組みと実際に暗号化する技術(方法)は異なります。ここでは、メールの暗号化に使われる代表的な2つの技術を紹介します。
SSL・TLS方式
SSL/TLSはインターネット上の通信を暗号化する技術でWebサイトのHTTPS通信などにも広く利用されています。元々はSSL(Secure Sockets Layer)として開発されましたが後継のTLS(Transport Layer Security)に移行しており現在ではTLSが主流です。ただし、「SSL」という名称が広く浸透しているため一般的にSSL/TLSと表記されることが多いです。特徴は以下の通り。
- 通信の暗号化
メールの送受信を暗号化し、盗聴を防ぐ - 改ざん検出
信頼できる第三者機関の電子証明書を利用し、通信途中でデータが改ざんされていないかを確認できる - サーバーとクライアント間での保護
通信経路を暗号化するが、メールそのものは暗号化されない(サーバー側で復号可能)
この方式はメールの送受信を行うサーバー間の通信を暗号化するため、比較的手軽に導入できます。
PGP・S/MIME方式
PGP(Pretty Good Privacy)とS/MIME(Secure/Multipurpose Internet Mail Extensions)はメールそのものを暗号化する技術です。これにより、メールの内容を第三者に盗み見られるリスクを防ぎます。PGPとS/MIMEの違いは以下の通り。
- PGP
公開鍵の正当性を「Web of Trust(信用の輪)」という仕組みで証明する。個人間で鍵の信頼関係を築く方式。 - S/MIME
信頼できる第三者機関(CA: 認証局)が発行する証明書を利用し、公開鍵の正当性を証明する。企業や組織向けの方式。
PGPとS/MIMEはどちらもメール自体を暗号化するため、送信者と受信者以外は解読できません。特にビジネス用途ではS/MIMEのように証明書を使った方式が一般的です。
メーラー別メール暗号化の方法
メールソフト(メーラー)によって暗号化の方法や設定は異なります。メーラーの中には暗号化を手動で設定するものもあれば、自動的に暗号化されるものもあります。ここでは、代表的なOutlookとGmailでの暗号化の方法を紹介します。
Outlookでのメール暗号化の方法
OutlookではS/MIMEを利用した暗号化が可能です。ただし、設定を行う前に有効なS/MIME証明書をOutlookにインストールしておく必要があります。設定手順は以下の通り。
- 「ファイル」メニューから「オプション」→「セキュリティセンター」→「セキュリティセンターの設定」を開く
- 「電子メールのセキュリティ」タブで「電子メールの暗号化」の[設定]ボタンをクリック
- 「証明書とアルゴリズム」で[選択]ボタンをクリックし、S/MIME証明書を選択
- [OK]ボタンをクリックして設定を保存
- メールを作成し、送信時に暗号化を適用
S/MIMEを使用することで受信者側でも証明書を持っていれば、暗号化されたメールのやり取りが可能になります。
Gmailでのメール暗号化の方法
Gmailでは基本的にTLSを使用して接続を暗号化しています。これはメールの送受信時の通信経路を保護するもので、ユーザーが特別な設定をする必要はありません。
ただし、次の場合はS/MIMEによるメールの暗号化も可能です。
- Gmailの仕事用・学校用アカウント(Google Workspace)を使用している場合
- 組織の管理者がS/MIMEを有効化している場合
S/MIMEが有効なアカウントではGmailの作成画面で鍵アイコンをクリックし、暗号化レベルを設定できます。
メール暗号化の注意点・ポイント
メールを暗号化する際は基本的なセキュリティ対策をしっかり行うことが大前提です。暗号化はメールの送受信を保護する仕組みですが、デバイスそのもののセキュリティを強化するものではありません。例えば、どれだけ強力な暗号化を施してもパソコンやスマートフォンがマルウェアに感染していたら、機密情報が漏えいするリスクは残ります。
メール暗号化を行う前に以下の基本対策を実施しましょう。
- ウイルス対策ソフトの導入(マルウェアやスパイウェアから端末を守る)
- OSやソフトウェアの最新アップデート適用(セキュリティホールを塞ぐ)
- 安全なネットワーク環境の利用(公共Wi-FiではVPNを活用する)
これらの基本対策を行ったうえでメール暗号化を適切に実施することが重要です。
添付ファイルの暗号化も行う
メール本文や通信を暗号化しても添付ファイルの内容がそのままでは意味がありません。機密性の高い情報を含む添付ファイルを送る場合は本文と同様に暗号化を行うことが必須です。
よく使われる方法として、添付ファイルをパスワード付きZIPファイルに圧縮する手法があります。しかし、パスワードを同じメールで送ると簡単に解読されるリスクがあるため、別の手段でパスワードを共有する工夫が必要です。
より安全な方法として以下のような手段を検討しましょう。
- クラウドストレージを活用し、ダウンロードリンクを送る(アクセス権限の設定が可能)
- 別の通信手段(SMSや電話)でパスワードを伝える
- エンドツーエンド暗号化(E2EE)対応のファイル共有サービスを利用する
このように添付ファイルの暗号化方法も慎重に選ぶことが大切です。
メール暗号化ソフトを利用する
自社で暗号化の仕組みを構築するにはそれなりの技術的知識が必要になります。そのため、専門知識がなくても簡単にメールの暗号化ができる「メール暗号化ソフト」を活用するのも一つの方法です。
メール暗号化ソフトには暗号化以外にも以下のような便利な機能が備わっていることが多いです。
誤送信防止機能
誤って別の会社や相手にメールを送信してしまうミスを防ぐ機能です。例えば、A社に送るはずのメールをB社に送ってしまうような事態が発生すると、機密情報の漏えいや信用問題につながります。誤送信を防ぐための機能例は以下の通り。
- 上司の承認後でないと送信できない仕組み
- 送信前に一定時間の保留を設定し、間違いに気づける仕組み
- 特定のメールアドレス宛の送信時に警告を表示
添付ファイルの自動暗号化機能
多くの企業では「社外へ送るメールの添付ファイルは必ず暗号化する」というルールがあります。メール暗号化ソフトを導入すれば添付ファイルの暗号化を自動化できるため、作業の手間を省きながらセキュリティを強化できます。
例えば、メールを送信する際に自動でパスワード付きZIPファイルに変換する機能を備えたソフトもあります。これにより「暗号化し忘れた!」という人的ミスを防ぐことができます。
メール配信システムを利用する
メール暗号化を適切に運用するためには手動で設定を行うだけでなく、メール配信システムを活用するのも有効な方法です。特にビジネスで大量のメールを送信する場合、手作業で暗号化を行うのは手間がかかり人的ミスのリスクも高まります。そこで、セキュリティ機能が組み込まれたメール配信システムを導入することで安全性と業務効率を両立させることが可能になります。
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- 自社のIPアドレスやドメインがブラックリストに登録されていて、メールが届かない場合
- 国内キャリアにメールが届かず、対応方法がわからない場合
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まとめ
メールはビジネスの場で重要な情報をやり取りする手段ですが、適切な暗号化を行わなければ情報漏えいのリスクが高まります。特に顧客情報や機密情報を扱う企業にとっては、メールの暗号化は欠かせない対策の一つです。
メール暗号化にはSSL/TLS方式、PGP、S/MIMEなどさまざまな方法があります。それぞれの特徴を理解し、自社のセキュリティポリシーに適した方式を導入することが重要です。また、暗号化だけではなく誤送信の防止や添付ファイルの安全な管理も併せて行うことで、より強固なセキュリティ対策を実現できます。
情報セキュリティがますます重要視される現代においてメール暗号化の知識と実践は、企業の信頼を守るために必要不可欠です。ぜひ本記事の内容を参考に適切なメール暗号化を実施し、安全なメール運用を心がけましょう。
