エンジニアにおすすめの資格15選!資格は必要?取得のメリットとは
エンジニアとしてキャリアを積む中で、資格の取得を検討する場面は多いでしょう。技術力や実務経験が重要視されるエンジニアの世界では、資格が必須というわけではありませんが資格はスキルや知識を体系的に証明する方法として活用されています。
この記事では「エンジニアにおすすめの資格15選」と題し、エンベデッドシステムスペシャリスト試験やシステムアーキテクト試験など、エンジニアに役立つ資格をピックアップして紹介します。また、資格取得がエンジニアにとってどのような意義を持つのか、どのようなメリットがあるのかについても掘り下げて解説します。さらに、エンジニアにとって資格取得が必須ではない理由や資格を取得する際のポイントについても触れ、資格取得がキャリアにどのように影響を与えるかを考察していきます。
資格はエンジニアが自身のスキルを客観的に評価できる手段であり、自己研鑽を積むための目標設定にもなります。資格を取得することで業務に直結する技術力を高められるだけでなく、知識の基礎を再確認し体系的に学び直す機会が得られます。また、資格を持っていることで職場の上司やクライアントにとっての信頼材料となり、転職活動時にはアピールポイントのひとつとして活用できるでしょう。
しかし、資格取得を目指す際には、取得すること自体が目的化しないよう注意が必要です。本当にキャリアアップに役立つ資格を選び、実務で活用できるスキルを身につけることが肝心です。資格が必須かどうかの議論もありますが、この記事を通してエンジニアにとっての資格の価値を見極め、自身のキャリアに最適な資格取得を目指すヒントにしていただければと思います。
エンジニアにおすすめの資格5選
ここでご紹介する5つの資格は、いずれも経済産業省所管のIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する国家資格です。難易度の基準としてIPAのITスキル基準であるITSS(ITスキル標準)を採用し、併記しています。
IPAによるとITSSは、ITサービスの提供に必要な能力を体系化した指標であり、座学におけるITサービス・プロフェッショナルの育成に有用な共通枠組みとされています。それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組み込みエンジニア向けの資格です。組み込みエンジニアとは、家電や設備に搭載される小型のコンピュータのプログラムを扱うエンジニアを指します。組込みシステム開発を行うメーカーへの就職やIoT技術に携わっている方、もしくはいずれ携わりたい方におすすめです。
IPAが実施する試験の中でもITSSレベル4に指定されており、組み込みシステムの開発について高度な知識と技能が問われます。試験は午前・午後と分かれており、午後問題は記述式です。合格率は約20%と難易度が高めとなっています。取得すると、最適な組込みシステム開発基盤の構築および、組込みシステムの設計・構築・製造の主導が可能です。
公式サイト:エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
システムアーキテクト試験
システムアーキテクト試験は、上級エンジニア向けの資格です。上級エンジニアとは、システム開発の上流階級を主導・豊富な業務知識から適切な分析を行う・業務ニーズに適した情報システムのデザインを設計し完成に導くエンジニアを指します。システムエンジニアの上に立つ上級エンジニアを、システムアーキテクトと呼びます。
出題範囲は、情報システム・組込みシステム・IoTシステムの要件定義・アーキテクチャ設計など幅広い知識が問われる試験です。出題の重点分野は、セキュリティ・システム開発技術・システム企画になります。IPAが主催する試験で、ITSSレベル4と高難易度になっており合格率は約15%です。取得するとシステム構築に関する専門性の高いエンジニアとして認めてもらえるでしょう。
公式サイト:システムアーキテクト試験 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験は、データベースエンジニアに向けた資格です。情報システムにおける企画・要件定義・開発・運用保守の技術サポートを行う方のための国家資格です。IPAが主催するITSSレベル4の高難易度試験で、合格率は約15%と低い水準となっています。
試験は、午前Ⅰ・Ⅱと午後Ⅰ・Ⅱの4部構成で行われます。午前Ⅰ試験は、同日開催の応用情報技術者試験の午前問題から選抜された30題の選択問題です。午前Ⅱ試験も同様に選択問題です。コンピュータ構成要素・システム構成要素・データベース・セキュリティ・システム開発技術・ソフトウェア開発管理技術について高度な知識が問われます。午後問題はⅠ・Ⅱともにデータベースに関する記述式の問題です。データの分析基盤を構築するデータベースの知識は、ビッグデータやデータサイエンスを扱う上で需要が高まっています。
公式サイト:データベーススペシャリスト試験 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験は、ネットワークエンジニアやインフラ系エンジニア向けの資格です。IPAが主催し、ITSSではレベル4の難易度で合格率は約14%です。
出題範囲はセキュリティを含むネットワーク技術に関する要件定義・設計・構築・運用保守が挙げられます。午前と午後に分けて行う試験で、午後には記述式で解答する問題もあります。午前の試験では応用情報技術者試験と同等の問題が出る他に、技術要素の中のネットワークとセキュリティから重点的に出題される傾向です。午後問題ではIoTネットワークやSDN(Software Defined Network)などの最新の技術動向について記述式で解答する問題もあります。
取得によってネットワークの専門家として大規模ネットワーク開発を主導できるスキルを証明できます。ネットワークに関わる方のスキルアップにおすすめの資格です。ネットワークについての知識を認められるため、就職や転職に有利になり人事評価アップにもつながるでしょう。
公式サイト:ネットワークスペシャリスト試験 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験は、セキュリティ分野を目指すエンジニア向けの国家資格です。IPAが主催しており、ITSSレベル2の難易度のため、IT初心者から中級者向けといえるでしょう。合格率は50%〜70%台と他の資格よりも高めとなっています。
試験は科目Aと科目Bに分かれており、それぞれ60問の全120問です。科目Aは情報セキュリティの考え方から、実践規範・各種対策・関連法規に加え、ネットワーク・システム監査・経営管理の知識を問われます。科目Bでは、情報資産管理・リスクアセスメント・情報セキュリティ確保・委託先管理などから出題されます。セキュリティの重要度が増している昨今において、取得することで高い評価を得られるでしょう。
公式サイト:情報セキュリティマネジメント試験 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
エンジニアにとっての「資格」とは?
エンジニアにとって資格とはどういう位置づけなのでしょう。また、就職時や転職時に必要なものなのでしょうか。ここでは、エンジニアにとっての資格とは、どのようなものなのか詳しく解説します。
エンジニアの資格は3種類に分類できる
エンジニアの資格は「国家資格」「ベンダー資格」「ベンターニュートラル資格」の3種類です。
国家資格
国家資格は経済産業省所管のIPAという独立行政法人が主催する資格です。先述のおすすめ資格5選はすべて、IPA主催の国家資格となっています。国内で幅広く認知されているため、信頼性が高く、転職や商談時に能力を証明しやすいことが特徴です。
また、資格の有効期限はなく受験料が7,500円(2024年10月現在)と安い利点もあります。しかし、いずれも年に一回しか受験できず、受験機会に乏しいのがデメリットといえるでしょう。
ベンダー資格
ベンダー資格は、ソフトウェアやハードウェアを提供する企業(ベンダー)の認定を受けられる資格です。ベンダーの製品に沿った知識や技術が問われ、その製品に関する詳細なスキルを示せます。世界的なサービスを提供する企業が実施するものもあるため、海外での認知度も高いです。
シェアの大きいサービスであれば有用である可能性が高いでしょう。しかし、ベンダーに技術的に依存するため、別のベンダーの製品を使っている現場では役に立たない恐れもあるため留意しておきましょう。また、数年に一度更新しなければ失効してしまいますが、こちらも見方を変えると継続して最新の情報を取得し続けていることをアピールできるとも捉えられます。
ベンダー資格の例としては、Amazon社が提供するクラウドサービスAWSが認定する資格であるAWS認定資格、Oracle社が認定するオラクルマスターなどです。オラクルマスターはデータベースの技能を問う試験で年4回受験機会があります。
ベンダーニュートラル資格
ベンダーニュートラル資格は、特定のベンダーの認定ではない資格です。一般社団法人やNPO法人などの民間の団体が主催しており、特定のOSやサービスに特化した内容ではないのがベンダー資格との違いです。
特定の製品には依存しないため、汎用性の高い資格といえます。例としてはPMP(Project Management Professional)、LinuC(リナック)、UMTP(UML資格)などが挙げられます。PMPは世界最大のプロジェクトマネジメント協会であるPMI(Project Management Institute)が主催する国際資格です。LinuCはLPI-Japanが主催するLinux技術者認定試験で、UMTPは特定非営利活動法人UMLモデリング推進協議会主催のUMLの資格です。
ベンダー資格とベンダーニュートラル資格は、実務に直結しやすい傾向ですが、民間の企業団体が主催するため国家資格よりも受験料が高い傾向にあります。しかし、年に数回受験できるため、受験機会には恵まれているといえるでしょう。
エンジニアにとって資格は必須ではない
IT業界では、スキルや経験といった実務に沿った実力が評価されるため、資格があれば必ず年収が上がるわけではありません。
また、就職時に資格を条件としている企業はありますが、知識やスキルさえあれば資格がなくても実務での活躍も可能です。そのため、資格は必ずしも取るべきものではありませんが、取得するメリットはあります。資格を取得する具体的なメリットに関しては、次章で詳しく説明します。
エンジニアが資格を取るメリット
エンジニアになるための免許は存在しません。実力が評価される業界でもあり、資格の取得は必須ではないのです。
では、必ずしも資格の取得が必須ではないエンジニアにとって資格を取るメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
力試しになる
資格試験を受けると、自身にどのくらいの知識や技術があるのかを客観視できます。合格できればもちろんその資格のレベルに到達している証明となるでしょう。
また、合格しなくとも自身のできていない点を見直すことができます。「資格はなくても実務はできるから無駄」と思わず、力試しとして受けてみるのも良いでしょう。
体系的に学ぶ機会になる
資格取得のために学習すると、散らばった知識やスキルを体系化して自身の中に浸透させる機会になります。
また、知識やスキルを体系化すると、技術に関する理解が深まり応用力を高められます。応用力があると現場での対応が向上するため、資格学習は実務のためになるだけでなく自己の付加価値を向上させる機会でもあるのです。
職場や顧客にとって評価材料になる
資格の取得は所属企業や顧客などの第三者に対し、知識と技術を証明できます。一度試験に合格することにより、知識の取得を認定されるため、誰に対しても一定のスキルがあるという事実を示せるのです。
社内では成績評価においても役立ち、報酬金が支給されたり資格手当で年収増につながったりする可能性があります。さらに手当や報酬金だけではなく、キャリアアップから収入の増加も見込めるでしょう。
また、資格が評価材料になるのは社内だけではありません。顧客企業へのアピールにもなります。顧客企業に自社製品の説明をする際に資格があることで信頼度が上がり、結果として商談がうまくいく可能性もあります。エンジニアを抱える企業の営業にとっても、高度資格保持者がいる状況は自社の強みの一つとなるでしょう。
転職時の分かりやすいアピールになる
転職時に資格を必須としている企業は多くありませんが、資格を持っていると一定のスキルがあることをアピールできます。転職時に技術力をアピールする手段としてポートフォリオもありますが、これは作成の手間がかかり、更新し続ける必要があります。
資格は、合格していることで知識や技術の所有を第三者機関が認定してくれるため、作成と更新の手間なくスキルと知識を示せるのです。特に面接の際はアピールポイントになるため、面接が苦手な方は積極的に取得しておくと良いでしょう。
エンジニアが資格を取得する際のポイント
資格の取得を考えている方は取得資格の選定やその理由を明確にするのが重要です。これから解説するポイントを押さえて資格取得へと動きましょう。
初級レベルの資格の取得メリットは少ない
エンジニア向けの資格は数が多いですが、初級レベルの資格はメリットが少ないだけでなく非効率です。初級レベルの資格では難易度が低く合格率も高いため、職場や転職先にアピールするメリットがありません。
しかし、基礎知識の振り返りとして、初級レベルの資格を取得することも自身のレベルアップにつながるでしょう。
資格取得の理由を考えてから受験する
取得する理由がはっきりしていると、モチベーションが上がり資格の恩恵がうけやすくなります。例えば、今後のキャリアを考え、自身が希望する業務や職種に必要な資格だから、といった理由です。
資格取得の理由がはっきりしていると、自社での面談の際や転職の面接の際に取得理由をアピールでき、明確なビジョンを持っていると伝えられます。また、キャリアパスを描いてどのようなエンジニアになりたいかをハッキリさせると、受けるべき資格もハッキリとしてくるでしょう。
その他のエンジニアにおすすめの資格10選
本記事ではすでにおすすめの資格を5つ紹介しました。しかし、エンジニアに関連する資格はまだまだたくさんあります。
ここではエンジニアにおすすめの資格をさらに10個を紹介します。
CompTIA Security+
- 分野:サイバーセキュリティ
- 概要:CompTIAが提供するセキュリティの基礎資格で、セキュリティの基礎知識やリスク管理、脅威の特定と防止について学べます。
- 公式サイト:CompTIA Security+
CompTIA Network+
- 分野:ネットワーク技術
- 概要:CompTIAが提供するネットワークの基礎資格で、ネットワーク設計や管理、トラブルシューティングのスキルを証明できます。
- 公式サイト:CompTIA Network+
Microsoft Certified:Azure Solutions Architect Expert
- 分野:クラウド(Azure)
- 概要:Microsoft Azure上での設計・運用に関する高度な知識を問う資格で、Azure環境でのインフラ構築や運用に携わるエンジニア向けです。
- 公式サイト:Microsoft Certified:Azure Solutions Architect Expert
AWS Certified DevOps Engineer – Professional
- 分野:クラウド(AWS)/ DevOps
- 概要:AWSのDevOpsエンジニア向けのプロフェッショナル資格で、インフラの自動化、継続的なデプロイやモニタリングなどのスキルが問われます。
- 公式サイト:AWS Certified DevOps Engineer – Professional
Google Professional Cloud Architect
- 分野:クラウド(Google Cloud)
- 概要:Google Cloud Platform(GCP)におけるクラウドアーキテクチャを設計・管理するスキルを証明する資格です。
- 公式サイト:Google Professional Cloud Architect
Certified Information Systems Auditor (CISA)
- 分野:情報システム監査
- 概要:ISACAが提供する資格で、情報システム監査やITガバナンス、リスク管理に関するスキルが問われます。
- 公式サイト:Certified Information Systems Auditor (CISA)
Project Management Professional (PMP)
- 分野:プロジェクトマネジメント
- 概要:PMIが提供する世界的に認知されているプロジェクト管理の資格です。
- 公式サイト:Project Management Professional (PMP)
Certified ScrumMaster (CSM)
- 分野:アジャイル開発
- 概要:Scrum Allianceが提供する認定資格で、スクラムの基礎から実践に至るまでの知識を証明します。
- 公式サイト:Certified ScrumMaster (CSM)
Oracle Certified Professional, Java SE Developer
- 分野:プログラミング(Java)
- 概要:Oracle社が提供するJavaプログラミングの高度な資格で、Java SEでの開発スキルを証明できます。
- 公式サイト:Oracle Certified Professional, Java SE Developer
Cisco Certified Network Associate (CCNA)
- 分野:ネットワーク
- 概要:Ciscoが提供するネットワーク技術の基礎資格で、ルーティング、スイッチング、ネットワークセキュリティについてのスキルを証明します。
- 公式サイト:Cisco Certified Network Associate (CCNA)
まとめ
エンジニアになるための免許は存在しません。IT企業には、入社時に資格を要件にしている企業もありますが、基本的にはスキルや知識があれば働けます。しかし、資格取得は自身のスキルアップの機会や第三者に知識やスキルを証明する助けになるのです。また、キャリアパスを描いて理由付けすると取得すべき資格が明確化され、アピールする際に説得力が増すでしょう。
力試しも兼ねて、自身の得意分野や希望するポジションに合った資格を取得してみましょう。