Exchange OnlineのERR制限強化とは?外部受信者2,000人制限の影響と回避策を徹底解説
Exchange Onlineを利用している企業や組織にとって、今回発表されたERR制限(External Recipient Rate Limit)は大きなインパクトを与える変更といえます。外部受信者へのメール送信が1日あたり2,000人までに制限されるこの新ルールはこれまでの運用方法を見直す必要性を生じさせています。
なぜこのような制限が導入されるのか、その背景にはスパム対策の強化やリソースの効率的な管理が挙げられます。しかし、メールマガジンやトランザクションメールなど大量のメール配信が日常的に行われる現場では、これまで通りの運用が難しくなる可能性があります。例えば、外部顧客への一斉送信を行う際にはERR制限の影響を考慮した新たな運用計画が求められるでしょう。
この記事ではExchange OnlineのERR制限について、制限内容の詳細、背景、影響、そして制限を回避するための具体策をわかりやすく解説します。
Exchange Onlineにおける制限強化の内容
Exchange Onlineではもともと、バルクメールや大量のトランザクションメールをサポートしていませんでした。従来、受信者数は1日あたり10,000人までに制限されていましたが、特に詳細な制限はありませんでした。しかし、今回新たに発表されたERR制限(External Recipient Rate Limit)では、1日あたり外部受信者へのメール送信数が最大2,000人に制限されることになりました。この制限は既存の10,000人の受信者レート制限内のサブ制限として適用されます。
具体的には、以下のルールが適用されます。
- 外部受信者への送信
24時間以内に最大2,000人まで送信可能。 - 内部受信者への送信
ERR制限に達しても同じ期間内に最大8,000人の内部受信者に送信可能。 - 外部受信者に送信しない場合
内部受信者への送信は最大10,000人まで可能。
また、ERR制限は「外部ドメインへの送信可能なメール数」を示す指標であり、制限の計算は以下の通りです。
- 同一受信者に複数のメールを送った場合でも、受信者1人としてカウント
- 受信者数のカウントは24時間単位で保持され、経過した時点でリセット
0時でリセットされるわけではなく送信時間を基準に24時間後にカウントが解除される仕組みとなるため注意が必要です。
バルクメールとトランザクションメールの違い
バルクメールとトランザクションメールは、その目的と送信方法に明確な違いがあります。バルクメールは広告やプロモーションなどを目的とし、不特定多数の受信者に一括送信されるメールを指します。
一方、トランザクションメールは顧客の行動(購入や登録など)をトリガーに自動送信されるもので、個別の通知や確認が目的です。それぞれ用途が異なるため適切な運用が求められます。
バルクメール
広告やマーケティングを目的として、不特定多数のユーザーに一括送信されるメールを指します。バルクメールには以下のような特徴があります。
- 繰り返し送信される場合もあるが、特定のキャンペーンに限られることが多い。
- 一部のユーザーには必要な情報と感じられる一方、スパムと捉えられる場合もある。
トランザクションメール
顧客の行動をトリガーに自動で送信されるメールを指します。通知メールやトリガーメールとも呼ばれ、以下のようなメール送信の用途として利用されます。
- 会員登録完了メール
- 注文確認メール
- 商品の発送通知
- 納品書や購入明細書メール
- 再入荷のお知らせメール
- 買い忘れ防止メール
- パスワードリセットメール
制限内容を具体的な例で紹介
今回発表されたERR制限について、具体的なシナリオを基に説明します。
例:送信制限の適用状況
1日目のスケジュールを以下のように仮定します。
- 1日目 午前8時
- 外部受信者1,000人
- 内部受信者2,000人
- 合計3,000人に送信
- 1日目 午前10時
- 別の外部受信者1,000人に送信
この時点で、外部受信者の送信数が制限の上限である2,000人に達します。そのため、2日目の午前8時まで外部受信者への送信がブロックされます。ただし、この期間中も内部受信者に対して最大6,000人まで送信可能です。ここでは内部受信者への送信は行わないと仮定します。
例:24時間後の制限解除
2日目の午前8時になると、1日目の午前8時に送信した1,000人の外部受信者と2,000人の内部受信者が24時間制限のカウントから外れます。この時点での送信可能な人数は以下の通りです。
- 外部受信者1,000人
- 内部受信者8,000人
- 合計9,000人に送信可能
例:さらに2時間後の状況
もし2日目の午前8時から午前10時の間に外部受信者も内部受信者も送信しなかった場合、午前10時になるとさらに制限が解除されます。この時点で以下の送信が可能となります。
- 外部受信者2,000人
- 内部受信者8,000人
- 合計10,000人に送信可能
ポイントまとめ
今回の新しい制限は24時間単位で受信者数がカウントされるため、計画的なメール配信スケジュールが求められます。送信タイミングを工夫することで効率よくリソースを活用することが可能です。
- ERR制限では、外部受信者2,000人/24時間が上限
- 制限の解除は、送信時刻から24時間経過ごとに適用される
- 内部受信者は、ERR制限の対象外で、外部受信者を含む10,000人まで送信可能
Exchange Onlineの制限が強化される背景
今回発表されたERR制限(External Recipient Rate Limit)を2,000人に引き下げるという制限強化の背景には主に以下の理由があります。
スパム対策の強化
Exchange Onlineは企業や組織にとって重要なコミュニケーションツールです。しかし近年、スパムや悪意のあるメールの送信が増加しており利用者全体の安全を確保するための対策が必要となっています。ERR制限を1日あたり外部受信者2,000人に引き下げることで以下のような効果が期待されています。
- スパム送信者が大量のメールを一度に送信することを困難にする。
- 迷惑メールを減らし受信者にとってよりクリーンで安全なメールボックスを提供する。
スパムメールには受信者の個人情報を詐取するフィッシングメールや、マルウェアが仕込まれた悪意のあるメールが含まれることがあります。例えば、スパムメール内のリンクにアクセスするとウイルス感染し端末の利用が制限されるケースもあります。こうした被害を減らすため、制限強化は重要な取り組みといえるでしょう。
リソースの保護
大量のバルクメールやトランザクションメールが送信されるとサーバーに過剰な負荷がかかり、Exchange Online全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。ERR制限の引き下げはリソースの乱用を防ぎ、以下のようなメリットをもたらします。
- サーバー負荷の軽減
- 全ユーザーに対して安定したサービスを提供
制限の導入スケジュール
新しいERR制限は2025年1月から段階的に適用されます。適用スケジュールは以下の通りです:
- フェーズ1(2025年1月1日~)
- 新規で作成されたすべてのテナントに適用。
- フェーズ2(2025年7月~12月)
- 既存のテナントに適用。
今回の制限強化はスパム対策とリソースの保護という2つの重要な課題に対応するために導入されます。企業や組織にとって信頼性の高いメール環境を維持するため、制限に応じた運用計画が求められます。
例えば、大規模なメール配信を計画する場合は、配信リストの整理やスケジュール管理がこれまで以上に重要になるでしょう。
xchange Onlineの制限が与える影響
新たなERR制限の導入により、企業のメール配信に大きな影響が生じる可能性があります。特に以下のような外部ドメイン向けの大量メール送信が困難になる点が挙げられます。
- メールマガジンやメーリングリスト
顧客や取引先に一斉メールを送信する際、制限内での送信計画が必要になります - プロモーションメール
メルマガなどの一斉送信において、新たな制約を考慮した運用が求められます
この制限によりメール配信業務の効率化や信頼性を確保するために、以下のような対策が有効です。
- 専用のメール配信サービスの利用
- 自社運用のメールサーバーによる送信管理
また、大量のメール配信がリソースを圧迫すると本来優先すべき重要な顧客へのメールが送信できないリスクがあります。例えば、緊急時に配信エラーが発生すると顧客への重要な連絡が滞る可能性があります。こうしたリスクを回避するためには、メールの種類に応じた適切な送信方法を採用することが重要です。
Exchange Online ERR制限による運用上の注意点
ERR制限の導入により、メール運用に関する考慮すべきポイントがいくつか存在します。企業がこの制限を乗り越えて効率的に運用を行うためには以下の注意点を理解しておくことが重要です。
制限に合わせたメール配信スケジュールの最適化
ERR制限の2,000人/24時間というルールを守るためには、配信スケジュールを決める必要があります。特に以下のようなポイントを意識すると効果的です。
- 配信リストをグループ分けする
配信対象を複数のグループに分けることで1日あたりの送信数を制限内に抑えつつ、継続的にメールを配信することができます。例えば、外部受信者を地域や購買履歴に基づいて分類すると配信効率が向上します。 - 配信時刻の調整を行う
ERR制限は24時間単位でカウントされるため、配信開始時刻をずらすことで連続的な配信を可能にする戦略が有効です。例えば、午前中に一部の配信を行い、翌日の午後に残りを配信するスケジュールを採用することで、リスト全体への影響を最小限に抑えることができます。
ERR制限を回避するためにはメール配信ツールを利用する
ERR制限を回避するには専用のメール配信ツールの利用が有効です。これにより大量のバルクメールやトランザクションメールを制限なく送信でき、到達率や分析機能も向上させることが可能です。
Microsoftが提示する代替案
今回の制限を受け、Microsoftは外部ドメイン向けの大量メール送信における代替案として「Azure Communication Services for Email」への移行を提案しています。このサービスは大量のバルクメールやトランザクションメールを効率的に送信できるAPIを提供します。主な機能は以下の通りです。
- Azureマネージドドメイン
事前に設定されたドメインでのメール送信が可能 - カスタムドメイン
検証済みの独自ドメイン(例:notify.contoso.com)からのメール送信をサポート - 送信者認証のサポート
SPF、DKIM、ARCを含む送信者認証機能 - メールの保護と不正行為の検出
Microsoft Defenderによるスパムやマルウェア対策機能 - メール分析
配信状況やエンゲージメントデータ(開封率、クリック率など)を追跡可能 - エンゲージメント追跡
バウンス、ブロック、オープン、クリックなどの追跡機能を提供
Azure Communication Services for Emailは1時間あたり最大100万~200万メッセージの送信をサポートしており、大規模な配信ニーズに応えます。
ERR制限を回避するためのメール配信ツールの選び方
ERR制限の影響を最小限に抑えるためには、適切なメール配信ツールを選ぶことが重要です。ここでは、上記で紹介したAzure Communication Services for Email以外のメール配信ツールを選ぶ際のポイントを解説します。
専用ツールを利用するメリット
専用のメール配信ツールを利用することで、ERR制限を気にせず効率的かつ大量のメール配信を行うことができます。具体的なメリットには以下が挙げられます。
- 大量配信に対応したインフラ
専用ツールは高負荷に耐えられる設計がされており、数十万件以上の配信もスムーズに行えます。 - 詳細な配信ログと分析機能
配信エラーの原因を特定したりメールの開封率やクリック率などを追跡する機能が提供されるため、運用の改善に役立ちます。
ツールを選ぶ際のチェックポイント
メール配信ツールを選ぶ際には、以下の点に注意してください。
- SPF/DKIM/DMARCなどの送信認証がサポートされているか。
- 分析機能が充実しており、エンゲージメントを高める施策が可能か。
- スケーラビリティがあり、将来的な配信量増加に対応できるか。
API連携・メールリレーサービス「blastengine」の活用
「blastengine(ブラストエンジン)」は高機能なメールリレーサービスとして、Exchange OnlineのERR制限の影響を受ける企業や組織にとって有効なツールとなります。特に大量のバルクメールやトランザクションメールを送信する必要がある場合にその強みを発揮します。SMTPリレーサーバーを使用して、簡単に大量のメールを高速配信することが可能です。さらに、メールサーバーを必要とせずAPI経由でメールを送信する仕組みも提供しています。
ブラストエンジンは、サーバーの運用やメンテナンスを行っているため、常に高いIPレピュテーションを維持しながら、安全にメールを送ることができます。
以下のような課題がある場合は、ブラストエンジンの利用を検討してみることをおすすめします。
- 自社のIPアドレスやドメインがブラックリストに登録されていて、メールが届かない場合
- 国内キャリアにメールが届かず、対応方法がわからない場合
- 自社でメールサーバーを管理・運用したくない場合
また、ブラストエンジンは各メールプロバイダーや携帯キャリアのドメインに最適化されており、大規模なネットワークを経由してメール配信を行うことで、日本国内での到達率を圧倒的に高めています。SPF・DKIM・DMARCの設定ももちろん可能です。
利用料金は月額3,000円からとコストパフォーマンスにも優れており、メールだけでなく、日本語での電話サポートにも対応しています。
メールアドレスの入力のみで無料トライアルが可能ですので、まずは気軽にお試しください。
まとめ
Exchange OnlineのERR制限は外部受信者へのメール送信を1日2,000人に制限することで、スパム防止やリソースの適正利用を目指しています。この変更により、企業や組織はメール配信方法の見直しを余儀なくされるでしょう。
特に大量のメール配信が必要なケースでは、ERR制限を意識した運用計画の策定や専用のメール配信ツールの活用が重要です。例えば、「blastengine」のようなAPI・メールリレーに特化したメール配信サービスを導入することで制限を気にせず効率的なメール配信が可能となります。
今回の制限強化は企業にとって課題であると同時に運用方法を改善する良い機会でもあります。適切なツールを活用し新たな運用計画を立てることで制限の影響を最小限に抑え、より効果的なメール配信を実現していきましょう。