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IPスプーフィングとは?仕組みや種類、効果的な対策方法を徹底解説

更新日: 開発技術

インターネットは私たちの生活に欠かせない存在となりましたが、その利便性の裏には数多くのサイバーリスクが潜んでいます。その中でも特に危険視されている手法の一つが「IPスプーフィング」です。この技術は通信の中継点であるIPアドレスを偽装し、なりすましや不正アクセスを可能にするサイバー攻撃の手法として悪用されています。

IPスプーフィングは単独で行われることは少なく、他の攻撃手法と組み合わさることでその威力を発揮します。例えば、大規模なDDoS攻撃や情報の窃取、中間者攻撃など、多岐にわたるサイバー攻撃の基盤として使用されているのです。特に昨今の事例では企業のサーバーへの不正アクセスやフィッシング詐欺の手口として活用され多くの被害が報告されています。

この記事ではIPスプーフィングの基本的な仕組みから、その攻撃手法や実際の被害事例、そして対策方法までを詳しく解説します。

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IPスプーフィングとは

IPスプーフィングとは他のコンピューターシステムになりすますために偽のIPアドレスを使用する手法です。この技術は、身元を隠しながらシステムを攻撃するために利用され、データの窃取や改ざん、サーバーのダウンを引き起こす原因となることがあります。

IPアドレスは、インターネット上で通信を行うデバイスに割り当てられる一種の「識別番号」です。この番号がなりすましの対象となることで、攻撃者は自らの存在を隠しつつ不正アクセスを行うのです。

もともとIPスプーフィングは悪用を目的として開発された技術ではありません。例えば、企業がウェブサイトを公開する前に、多くの仮想ユーザーを生成して負荷テストを行うために活用されていました。しかし、現在では悪意ある攻撃者により、サーバーへの不正アクセスや他人の通信を盗み見る手段として悪用されることが一般的です。

なぜIPスプーフィングが行われるのか

IPスプーフィングは攻撃者が自身の身元を隠しつつ、不正なアクセスを試みるために利用されます。以下のような動機が一般的です。

  • サーバーやネットワーク機器への直接攻撃(DDoS攻撃)
  • 情報の窃取(通信の盗聴や機密情報の収集)
  • セキュリティ機器を回避して侵入経路を確保する

例えば、DDoS攻撃では多数の偽装IPアドレスから大量のリクエストを送信することで、攻撃者の特定を困難にし同時に標的のサーバーをダウンさせる目的があります。

IPスプーフィングの利用場面と特徴

攻撃者がIPスプーフィングを選択する理由の一つは、ネットワーク機器やアプリケーションの脆弱性を突きやすい点にあります。具体的には以下の特徴が挙げられます。

  • 匿名性の確保
    実際のIPアドレスが隠れるため、追跡が困難
  • 幅広い適用可能性
    中間者攻撃、DDoS、フィッシング詐欺などさまざまな攻撃に応用可能
  • 影響の広範囲性
    企業のシステムだけでなく、一般ユーザーも被害対象になり得る

IPスプーフィングはこれらの特性により、攻撃者にとって非常に有用な手段となっています。

IPスプーフィングの手法と仕組み

IPスプーフィングはパケットの送信元IPアドレスを改ざんすることで、受信側に信頼できる送信元であると誤認させる手法です。インターネットで通信されるデータは以下のように複数の「パケット」と呼ばれる単位に分割されて送受信されます。

  • 各パケットには送信元や宛先のIPアドレスなどの情報が含まれている
  • パケットはネットワーク上で個別に送信され、最終的に受信側で再構成される
  • 攻撃者はこのパケット情報を改ざんし、正規の通信に見せかける

攻撃者が送信元IPアドレスを偽装することで、受信側は信頼できる送信元からの通信だと誤解します。このため、攻撃者の特定が困難になるばかりかシステムに不正アクセスを許してしまう可能性が高まるのです。特にこれが分散型サービス妨害(DDoS)攻撃やなりすまし詐欺に用いられるケースが多く報告されています。

IPスプーフィング攻撃のおもな種類

IPスプーフィングは単独ではほとんど意味を成しません。他の攻撃手法と組み合わせることで、その威力を発揮します。以下にIPスプーフィングが利用される代表的な攻撃手法を2つご紹介します。

ボットネットデバイスのマスキング

ボットネットとは複数のコンピューターが連携して大規模な攻撃を実行するネットワークのことです。このネットワーク内のデバイスはIPスプーフィングを活用して本来のIPアドレスを隠し、追跡を困難にします。攻撃者はこれにより、ボットネットの存在を隠蔽しつつ継続的な攻撃を可能にします。

特にDDoS攻撃ではボットネットが生成する大量のトラフィックが活用されます。DDoS攻撃の主な特徴は以下の通りです。

  • 特定のサーバーやネットワークに大量のリクエストを送りつける
  • 正常なサービスの提供を妨害する
  • ウェブサイトやオンラインサービスを一時的または永続的に停止させる

この攻撃は被害を受けたサービスが利用不能になるだけでなく、企業の信頼にも悪影響を与える可能性があります。

中間者攻撃

中間者攻撃とは2台のコンピューター間の通信を妨害し送受信されるデータを改ざんしたり、盗み見たりする攻撃です。例えば、ユーザーAとサイトBが通信している際、中間者Cが割り込むことで以下のような状況が発生します。

  1. Aの公開鍵をCが奪い、CがAのふりをして公開鍵をBに送信
  2. Bから送られてきたデータをCが取得
  3. 情報を盗聴したことを隠すため、CがAの公開鍵で暗号化してAへデータを送信

中間者攻撃は通信自体には目に見える異常が発生しないため、早期発見が難しいのが特徴です。この攻撃によって以下のようなリスクが発生する可能性があります。

  • 個人情報や機密情報の盗取
  • ユーザーを偽のウェブサイトへ誘導
  • アカウントの不正利用
  • 不正送金の被害
  • 情報漏洩による企業ブランドの損失

以上のようにIPスプーフィングを利用した攻撃は、システムへの大きな脅威となり得ます。それぞれの手法の特徴を理解し対策を講じることが重要です。

IPスプーフィングによって起こる被害

IPスプーフィングによる被害は大きく分けて以下の2種類に分類されます。

情報の盗難や改変

攻撃者は信頼できる個人や企業になりすますことで、機密情報や個人データを不正に取得します。例えば、偽のWebサイトを作成し正規のサイトと誤認させることで、ユーザーが入力した情報を盗み取る手口が代表的です。これにより、被害者はプライバシー侵害や金銭的被害を受けるリスクがあります。

サービスの遅延や停止

DDoS攻撃によりサーバーのリソースを枯渇させてサービスを停止させるケースもあります。この影響で、正規のユーザーがサービスを利用できなくなり以下のような深刻な影響を引き起こします。

  • サービス停止による顧客離れ
  • 復旧作業に多大な時間とコストがかかる
  • 企業の信頼性低下

これらの被害は、企業やサービス提供者にとって甚大な損失となり得ます。

過去に発生したIPスプーフィングの攻撃事例

IPスプーフィングを利用した攻撃は日常的に利用されるWebサービスや企業のネットワークに深刻な影響を及ぼします。以下に、特に注目された実例を挙げ、その被害内容と背景を解説します。

Yahoo!を装ったフィッシング詐欺

2016年11月16日、Yahooのホームページを装ったフィッシングサイトを使用して、他人のIDやパスワードを不正に入手した2人の男性が逮捕されました。

攻撃者は取得したアカウントを使い、ネットオークションで架空の商品を出品。購入者から代金をだまし取る手口で約36万円の被害が確認されています。この事件では購入者からの「落札した商品が届かない」というクレームがきっかけで捜査が進展しました。

GitHubへのDDoS攻撃

2018年2月28日、GitHubは過去最大規模とされるDDoS攻撃を受け、一時的に利用不能となりました。攻撃者はMemcachedサーバーの脆弱性を悪用し特定のIPアドレスを偽装して大量のデータパケットをGitHubに送りつけました。この攻撃の特徴は以下の通りです。

  • 攻撃による通信量は最大1.35Tbps
  • 1秒間あたり1億2690万パケットが送信される大規模な攻撃
  • GitHub.comは約10分間ダウン

この攻撃は、ボットネットを利用せずに行われた珍しいケースとして注目されました。

森永製菓のサーバーへの不正アクセス

2022年3月、森永製菓の複数のサーバーで異常が検知され、調査の結果、不正アクセスが発覚しました。この攻撃により、同社のECサイトに登録されていた約165万人分の顧客情報が漏洩しました。原因はネットワーク機器の脆弱性であり、サーバー内のデータがロックされるなどの被害も確認されています。復旧には多大なコストと時間が必要となりました。

IPスプーフィングを検知する方法

IPスプーフィングをユーザーが直接検知することは非常に困難です。理由として、IPアドレスが偽装されても見た目上は正規のものと区別がつかず、改ざんの痕跡が外部に残らないことが挙げられます。そのため、特別な対策が必要となります。

有効な対策として、トラフィックを監視・分析するツールの導入が挙げられます。これにより、疑わしい通信を検出することが可能です。代表的なツールや技術を以下にご紹介します。

主な検知ツールと技術

以下の技術を適切に組み合わせることで、IPスプーフィングの検知と防御が可能になります。特に企業やサービス提供者はこれらの対策を積極的に導入することが重要です。

  • パケットフィルタリング
    パケットのヘッダーを精査し、設定したルールに基づいてパケットを許可または拒否します。例えば、発信元のIPアドレスが事前設定と一致しない場合に通信を拒否する設定が可能です。
  • イングレスフィルタリング
    ネットワーク機器に入力されるパケットを検査します。BCP38(ネットワーク運用者向けの指針)では、イングレスフィルタの設定を推奨しており、不正な発信元からの通信を防ぐ効果があります。
  • エグレスフィルタ
    ネットワーク機器から出力されるパケットを検査します。これにより、内部ネットワークから外部に向けたIPスプーフィング攻撃を防ぐことができます。

IPスプーフィングの対策方法

IPスプーフィングへの対策はサイト管理者や企業が行うものと、一般ユーザーが行えるものに分けられます。それぞれの立場で実施可能な対策を以下に紹介します。

管理者側で行える対策

サイトの管理者や企業が行える主な対策は以下の通りです。

  • ファイアウォールの設定変更
    ファイアウォールを適切に設定することで、不正なIPアドレスからのアクセスを遮断します。特に外部から社内用のIPアドレスを装ったアクセスを拒否する設定を行うことが重要です。
  • 複数の認証を行う
    IPアドレスに依存した認証だけでなく、IDやパスワード、トークンなど複数の認証手段を組み合わせることでセキュリティを強化します。
  • 通信の暗号化
    SSHやHTTPSのような暗号化技術を導入することで、通信内容の盗聴や改ざんを防ぎます。これにより、IPスプーフィングの成功率を下げることが可能です。

ユーザー側で行える対策

ユーザーがIPスプーフィングを完全に防ぐことは困難ですが、セキュリティ意識を高め以下の対策を取ることでリスクを軽減できます。

  • 複雑なパスワードの使用と多要素認証の設定
    • パスワードは12文字以上で、アルファベットの大文字・小文字、数字、記号を組み合わせる。
    • 多要素認証を設定することで、不正アクセスのリスクを大幅に減らせます。例えば、パスワードに加えて認証コードをスマートフォンで入力する方式を導入します。
  • HTTPSサイトを利用する
    • HTTPSを採用したWebサイトでのみ情報を入力するよう心掛ける。
    • アドレスバーに表示されるSSL証明書を確認し、安全な通信が確保されていることを確認します。
  • ウイルス対策ソフトウェアやOSの定期的なアップデート
    • 最新のウイルス対策ソフトウェアを導入し、常に最新の状態を保つ。
    • OSやアプリケーションも定期的にアップデートを行うことで、新しい脅威に対する耐性を向上させます。

AIを活用したトラフィック分析

近年、AI(人工知能)を活用したトラフィック分析が注目を集めています。AIは膨大な通信データをリアルタイムで分析し、通常とは異なるパターンや異常なトラフィックを検知します。

  • リアルタイム分析
    AIがリアルタイムでデータを監視し、通常のトラフィックとの違いを即座に検出
  • 攻撃パターンの学習
    AIは過去の攻撃データを学習し、新しい攻撃手法にも対応可能
  • 自動対応
    検知した異常に対し、自動的にトラフィックを遮断するシステムの導入が進行中

これにより、従来の手動監視では見逃されがちだった攻撃も迅速に対応できるようになっています。

攻撃シミュレーションによる脆弱性の特定

企業では攻撃シミュレーションを行うことで、ネットワークやシステムの脆弱性を事前に特定する動きが活発化しています。

  • ペネトレーションテスト
    模擬攻撃を実行し、脆弱性を発見・修正
  • 脅威モデルの作成
    攻撃のシナリオを事前に想定し、対応策を立案
  • 改善のための継続的テスト
    定期的にシミュレーションを実施することで、セキュリティレベルを維持

これらの手法により、未知の攻撃や新たな脆弱性にも対応できる体制を構築することが可能です。

まとめ

IPスプーフィングは現代のサイバー攻撃において広く活用される手法であり、その影響力は個人から企業まで幅広く及びます。本記事ではIPスプーフィングの仕組み、攻撃の種類、被害事例、そして対策方法について詳しく解説しました。理解を深めることで、自分自身や自社のシステムを守るための第一歩を踏み出せるはずです。

最も重要なのは、攻撃を「未然に防ぐ」意識を持つことです。トラフィック分析ツールやファイアウォール設定などの技術的な対策に加え、ユーザー自身がセキュリティ意識を高めることが必要です。特に、多要素認証の導入やHTTPSサイトの利用、ソフトウェアの定期的なアップデートといった基本的な対策を怠らないことがリスク軽減のカギとなります。

IPスプーフィングは完全に防ぐことが難しい手法ですが、適切な対策を講じることでその被害を最小限に抑えることが可能です。この記事を参考に、自分にできる対策を一つずつ実行していきましょう。

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