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LDAPとは?仕組みやメリット、シングルサインオン・Active Directoryとの関係性などを分かりやすく解説

更新日: 開発技術

LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)は、企業や組織でリソースやユーザー情報を効率的に管理するために広く利用されているプロトコルです。

ネットワーク上でユーザー認証や情報の検索やアクセス制御を行う基盤として、LDAPは情報の一元管理とセキュリティ強化を実現します。この技術により企業内のさまざまなシステムで利用者が共通のIDを持つことができ、管理者は煩雑になりがちなユーザー情報の管理を簡素化できます。

特にユーザー名やパスワード・役職や部門などの詳細情報を一元管理することで、組織内での情報整合性が高まり効率的な業務が実現できるのです。

本記事では、LDAPについてその仕組みやメリットのほか、シングルサインオンやActive Directorとの関係についても解説します。

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LDAPとは

LDAPとは、Lightweight Directory Access Protocolの略称です。「ディレクトリサービス」の維持と、ディレクトリサービスに接続するためのプロトコルを指します。

ディレクトリサービスとは、ネットワークを利用するユーザー名やパスワード、デバイスなどのさまざまな情報を管理するサービスです。これらの情報を一元管理し、効率よく検索や更新、検索といった手段を提供するのがLDAPとなります。

例として、社内にある多種多様なファイル情報を1つのディレクトリサービスに保存するとしましょう。このままでは、どこに何の情報があるか分かりにくい状態です。しかし、LDAPを利用すれば、特定のファイルをディレクトリ内から検索したり、ネットワーク上のどこにあるかを確認したりできます。

LDAPの仕組み

LDAPは、LDIF(LDAP Interchange Format)と呼ばれるテキストフォーマットで管理されています。また、階層的なツリー構造でデータの管理を行うのが特徴です。

LDAPは「エントリー」と呼ばれる要素によって成り立っています。エントリーの一例は、以下のとおりです。

  • Domain Component(dc):LDAPで管理する対象のルート
  • Organization Unit(ou):組織やグループなどのリソース
  • Common Name(cn):個人やコンピューターなどのリソース など

上記のエントリーを階層形式で管理し、階層ごとにアクセス権限を付与できます。

また、ツリー構造を簡潔に表し、かつ重複させずに識別しやすくするため「Distinguished Name(dn)」を用いて各エントリーに属性を定義できるようになっています。例として「会社の総務の山田さん」の属性を定義してみましょう。

  • ou:soumu(総務)、kaisya(会社)
  • cn:yamada(山田さん)

上記で述べた階層ごとに属性を定義すると、このようになります。実際に定義する際は、下の層から上の層へ向かうようカンマで区切り、つなげていきます。

cn=yamada,ou=soumu,ou=kaisya

これで「会社の総務の山田さん」の属性が定義できました。

LDAPは、このようなツリー構造によって、リソースを重複させずに識別し、管理できる仕組みとなっています。そのため、1つのディレクトリ内でも容易に検索や確認が行えるのです。

LDAPの導入プロセスと設定方法

LDAPを導入する際の基本的なプロセスと設定のポイントを解説します。導入手順を把握することで、LDAPの設計や設定がスムーズに進められるでしょう。

  • サーバーとネットワークの設計
    LDAPを導入する際には、まずサーバー構成やネットワーク設計を決定します。リソースの分散やレプリケーションを考慮した設計が推奨され、負荷の分散を考えた構成が重要です。
  • ユーザーとアクセス権の設定
    LDAPの設定ではユーザーごとのアクセス権を細かく設定し、各リソースへの適切なアクセス制御を実現します。組織ごとに異なるアクセス権を割り当てることで、セキュリティを強化します。
  • バックアップと障害対策の実施
    LDAPサーバーのバックアップ計画と障害対策も導入プロセスの重要なポイントです。レプリケーションや定期的なデータバックアップを行い、障害発生時のリカバリ対策を整備します。

LDAPでできること

続けて、LDAPを用いてできることについて、3つの例を挙げて解説します。

リソースの一元管理

LDAPを利用すれば、人やデバイスといったリソースを一元管理できます。具体例としては、社員のログインIDやパスワードといった個人情報、社員が使用するパソコンやプリンターのIPアドレス情報などが対象となります。こうしたリソースを一元管理することで、入社や退職、部署移動などに伴う社員の管理や、パソコンやプリンターなどの機器の管理がしやすくなるのです。

リソースの情報は、LDAPサーバーに保存・保管されます。情報の更新もLDAPの仕組みを利用して行えるため、適宜更新を行って最新の状態を維持すると良いでしょう。

リソースのアクセス制御

LDAPでは、部署やユーザーごとに利用できるパソコンやプリンター、システムへのアクセスを制限することもできます。例として、人事システムへのアクセスは人事部ユーザーにのみ許可する、といったようなLDAPサーバーの設定です。

また、ディレクトリ内のアクセス権限についても細かく設定できるため、特定の情報を閲覧できるユーザーを限定したり、編集などの権限を付与したりできます。ユーザーごとのアクセス制御も可能です。ユーザー1は参照ができる、ユーザー2は参照と更新ができる、といった制御設定になります。

グループウェアなどとの連携

詳しくは後述しますが、LDAPの機能を持つ「Active Directory」というディレクトリサービスは、Microsoft社製です。そのため、同じくMicrosoft社のMicrosoft Teams、WordやExcelといったグループウェアと連携させやすい特徴があります。これにより、業務を効率化できたり、組織内のコミュニケーションをよりスムーズにできたりするのがメリットです。

LDAPのメリット

ここでは、LDAPのメリットについて「拡張性の高さ」「対応OSの多さ」「セキュリティ面」「サーバー負荷対策」の4点の観点から見ていきましょう。

拡張性が高い

LDAPの最大のメリットは、拡張性の高さです。LDAPでは「スキーマ」という機能があり、このスキーマによって情報の構造や属性をフレキシブルに定義できます。そのため、会社やシステムの要件に合わせたカスタマイズができることは大きなメリットでしょう。

さらに、多くのLDAPサーバーではプラグインなどのさまざまな機能やモジュールをサポートしています。このように、LDAPをさまざまな用途、環境に合わせて拡張できる環境が整っていることも拡張性の高さにつながっています。

対応OSが多い

LDAPは国内でも多く使われているWindowsに限らず、macOSやLinuxといった多様なOSでも活用できるところがメリットとなるでしょう。同じ社内でもWindowsやmacOSなど、さまざまなOSを扱う環境は少なくありません。こうした環境でもLDAPを利用すれば、統合的な管理が可能です。

セキュリティが強固

強固なセキュリティを保てることもメリットの一つです。具体的には、SSL/TLSを利用した暗号化や、多段階の認証システムなどがあります。また、上述した通りアクセス制御を細かく設定できる点もセキュリティを強化することにつながっています。

サーバー負荷を分散

LDAPサーバーは、リソースの複製を作成する「レプリケーション」に対応しています。レプリケーションを行えば、LDAPサーバーを参照するクライアントを分散させることで通信負荷を軽減できます。この他、災害などいざという時に、バックアップとして利用することも可能です。また、レプリケーションによってデータ消失のリスクを抑えられるというメリットもあります。

LDAPサーバーとは

LDAPサーバーとは、LDAPに基づき、ディレクトリサービスを提供するためのサーバーのことを指します。LDAPサーバーの役割は、以下の2つです。

  • ネットワークを介して、要求があった情報に回答する
  • 管理ツールを利用して、ディレクトリを変更したり、パスワードを変更したりできる

LDAPサーバーは、特に企業ではユーザー情報やデバイス情報の一元管理、また認証の基盤として利用されています。企業のアカウント情報は、情報漏えいのリスクが高いため、LDAPサーバーを操作できる管理者は限られていることが一般的です。さらに、LDAPサーバーには、重要な情報が保持されていることから、定期的なバックアップが重要となります。

LDAPのデメリットと注意点

LDAPは多くのメリットを持つ一方で、特定のデメリットや導入前に知っておくべき注意点も存在します。以下では、LDAPの導入に伴うリスクやデメリットについて解説します。

初期導入コストと運用負荷

LDAPの導入にはシステム設計やサーバー設定など、初期導入に関するコストと時間がかかります。特にLDAPを基幹システムの一部として利用する場合はセキュリティ強化やレプリケーション、バックアップといった付帯機能の導入も必要です。

また、LDAPの設定や運用管理には高度な知識が求められ、システムエンジニアやネットワーク管理者のリソースも割かれるため運用負荷が高くなる可能性があります。企業ではこの負担を軽減するために外部ベンダーに一部管理を委託するケースもありますが、その場合もコストがかかります。

運用における管理者のスキル要件

LDAPサーバーの運用管理には、専用のスキルが求められます。LDAPは柔軟性のあるプロトコルですが、その分設定項目も多くアクセス制御やスキーマ設計の段階で誤設定が発生しやすいです。

こうした設定ミスがセキュリティリスクやデータ漏えいにつながる可能性もあるため、LDAPに精通した管理者を確保することが重要です。運用上の更新やアクセス制御の変更も頻繁に行われるため、管理者がLDAPに習熟していることが求められます。

サーバー障害やアクセス集中のリスク

LDAPサーバーが障害を起こすと、すべての認証やアクセス制御が影響を受け企業全体の業務に支障が出ることがあります。

また、社員が同時に複数のアプリケーションにアクセスするなどアクセスが集中する状況ではLDAPサーバーの負荷が高まり、レスポンスが遅延する可能性があります。対策としてアクセス分散のためのロードバランサーや、複数のLDAPサーバーで冗長化を図る構成が推奨されます。

LDAPの活用事例と使用シーン

LDAPは多様なシーンで利用されるため、その活用方法についても知っておくと役立ちます。ここでは、LDAPがどのように活用されているかを具体例を挙げながら解説します。

大規模組織におけるユーザー管理

大規模な企業や組織では数千〜数万にのぼるユーザー情報を一元管理する必要があり、LDAPはこのようなニーズに応えます。LDAPを利用することで、各ユーザーのID、パスワード、役職、所属部署といった情報を一括して管理し全社的なアクセス制御が容易になります。

また、LDAPの階層構造により部門ごとや権限ごとにアクセス権を設定できるため、個別対応が不要になり効率的に運用が可能です。

クラウドサービスやSaaSとの連携

LDAPはクラウドサービスやSaaSアプリケーションと連携することで、シングルサインオン(SSO)を通じて一度のログインで複数のシステムやアプリケーションにアクセスすることが可能になります。

特にIDaaS(Identity as a Service)と組み合わせると、インターネット経由でのアプリケーションやサービスへのアクセスにもLDAPが利用可能です。これによりユーザーは効率的にリソースにアクセスでき、また管理者にとってもセキュリティを強化しやすくなります。

LDAPとシングルサインオンについての詳細は後述します。

教育機関や医療機関での利用

教育機関や医療機関でもLDAPは広く利用されています。教育機関では学生や職員の情報を一元管理し、アクセス制御にLDAPを活用しています。

また、医療機関では医師やスタッフのユーザー情報と診療記録へのアクセス管理にLDAPが使われ、情報セキュリティを確保しながらスムーズに業務が進行できる環境を整えています。特に役職や業務内容に応じたアクセス権限を設定できるLDAPは、セキュリティが重視される業界での運用に適しています。

LDAPとシングルサインオン

シングルサインオンとは、ユーザーが1回のログインで複数のサービスやアプリケーションにアクセス可能にする認証手法の1つです。

シングルサインオンを実現するには、まずはログイン情報を管理するサーバーを構築する必要があります。LDAPはその特性から、企業においてシングルサインオンを実現するために導入されていることも多くあります。LDAPはネットワークを経由してアカウント認証が可能なため、1つのユーザーIDとパスワードで複数のサービスやアプリケーションにログインできるのです。

さらに、クラウド経由でシングルサインオンを実現する「IDaaS(アイダース:Identity as a Service)」と組み合わせることが可能です。このことにより、インターネットを介したアプリケーションやサービスへのシングルサインオンもできるようになります。

LDAPとActive Directory

まずは、Active Directoryについて簡単に説明しましょう。Active Directoryとは、LDAPを実装したディレクトリサービスの一種で、ユーザーやデバイスなどのIT資産を構成するためのMicrosoft社の製品です。Active Directoryがサポートできる範囲はWindowsに限られますが、LDAPはWindowsを含めた他のOSにも対応できます。

また、Active Directoryがディレクトリサービスである一方で、LDAPはプロトコルである点に違いがあります。Microsoft Office、Windowsを多く使用する環境であれば、Active Directoryの利用が効果的です。

LDAPとActive Directoryは同じサービスや機能を提供するものではありませんが、混同されやすい傾向があるため、それぞれの特徴をおさえておきましょう。

まとめ

LDAPは、ネットワークを利用するユーザーや、パソコンやプリンターなどのリソースを管理するディレクトリサービスにアクセスするためのプロトコルのことです。LDAPを実装している製品には、Active Directoryなどがあります。

昨今では、多種多様なアプリケーションやクラウドサービスが存在しており、多くのアカウントを管理することも珍しくありません。本記事でご紹介したLDAPを導入することで、アカウントの管理をスムーズに行えるようになり、業務効率化が期待できます。

LDAPを導入する前に、仕組みや機能、メリットだけでなくデメリットについても理解を深めておきましょう。

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