Return-Pathとは?役割・重要性や確認方法、仕組みを徹底解説

2024年3月30日

メールのヘッダーには、どこからどんな経路で送られたのかを示す情報が記載されており、そのうちの一つに「Return-Path(リターンパス)」があります。

メール通信の世界は、まるで見えない糸でつながっているかのように複雑なシステムによって支えられています。その多くの機能とプロトコルの中で、特にReturn-Pathはメール配信の根幹をなす要素の一つです。

今回は、Return-Pathの重要性や役割、メールソフト、サービスごとの確認方法や仕組みについて解説します。

Return-Pathの重要性

Return-Pathは、メールが配信不能な場合にバウンス(エラーメール)を送り返す際のアドレスを指定します。

この機能は、メール送信者が自分のメッセージが正常に届いていないことを知る手段となります。さらに、Return-Pathは受信者が信頼できる送信者からのメールだけを受け取るための重要な要素となり、フィッシング詐欺やスパムメールに対して重要な役割を果たします。

Return-Pathとは

Return-Pathとは、メールが正常に送信できなかった際にエラーを送り返すための宛先を指します。メールの配信エラーが発生したとき、受信側のメールサーバーでは、Return-Pathに設定されたアドレス宛にエラーが発生したことを通知するようになっています。

詳細は後半で解説しますが、Return-Pathは「エンベロープFrom」として設定される送信元アドレスです。メールの配信後、Return-Pathは受信メールサーバーによってメールヘッダに追加され、通常は受信側には見えませんが、メールのソースを見ることで確認できます。

なお、Return-Pathは差出人のメールサーバーが指定するアドレスであるため、差出人が設定を変更しなければヘッダFromアドレスとエンベロープFromは同じものになります。しかし、この設定が変更されていることも多くあるため、メールソフトやサービスで閲覧する際に表示される送信元アドレスとは異なるケースがあります。

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Reply-Toとの違い

Return-PathとReply-Toは訳せば同じ「返信先」という意味を持ちますが、本質は異なります。

Return-Pathはメールが送信されなかった際にバウンスメッセージを送り返す宛先で、Reply-Toはメール受信者が返信ボタンを押した時に自動的に宛先欄に入力される宛先です。

Reply-Toは受信者が送信者に返信する際に使う宛先のため、Return-Pathの宛先と同じでなくとも問題はありません。

Return-Pathの重要性・役割

Return-Pathは、配信エラーが発生した際に返ってくるメールの宛先を指定できる項目ですが、そのほかに重要な役割を持っています。具体的にどのようなものがあるか解説します。

バウンスメールの管理

バウンスメールとは、何らかのエラーが発生した際に送信者に戻されるメールのことで、「ソフトバウンス」と「ハードバウンス」の2種類があります。

ソフトバウンスとは、何らかの原因で一時的に送信できなくなった状態のことです。具体的には、メールボックスの容量に空きがなかったり、メールのサイズが大きすぎたりといったことが挙げられます。ソフトバウンスの場合は、時間をおいて再送することで改善するケースが多くありますが、何度もバウンスを繰り返すようであればメールリストから除外する必要があるでしょう。

対してハードバウンスとは、時間をおいても配信できないケースを指します。具体的には、メールアドレスが存在しないものであったり、ドメインやスペルミスがあったりといったことが挙げられます。存在しないメールアドレスに繰り返しメールを送信し続けると、迷惑メール判定を受けやすくなるといったリスクがあるため、早急に対処しなければなりません。

特にメルマガ配信など、大量にメールを送信するビジネスでは、多くのバウンスメールが発生するでしょう。そんなときに有効なのがReturn-Pathです。通常のメールアドレスではなく、専用の宛先をReturn-Pathで指定しておくことで、バウンスメールは通常の受信ボックスと別に入るように設定ができます。

また、バウンスメール専用の宛先を用意することで受信ボックスがバウンスメールであふれることがなくなるため、送信エラーをチェックしたりメールリストを精査したりと、バウンスメールの管理もしやすくなります。

ほかにも、メールリストが精査されていることでバウンスメールが減り、結果としてメールの到達率やレピュテーション(信頼性)を高めることにつながるのです。

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メール配信の効率と信頼性を高める一因となる

Return-Pathが有効なメールアドレスで設定されている場合、それがメール送信システムが適切に構成されていることを示します。しかし、この設定自体が直接、送信者の身元が明確であることやスパムでないことを保証するわけではない点は注意しましょう。

受信先のメールサーバーはSPF、DKIM、DMARCなどの認証メカニズムを通じて、メール送信者の身元を検証します。これらの認証手順は、メールが信頼できるソースから送信されているかを確認し、Return-Pathの設定の有無に関わらず、スパムメールのフィルタリングに役立ちます。

Return-Pathが適切に設定されていると、バウンスメールが正しく処理されるため、メールシステムの健全性を維持する上で重要です。これは、メール送信者が技術的な配慮をしていることを示し、間接的にそのレピュテーションに影響を与える可能性があります。しかし、送信者の評判は、認証の成功、送信履歴、受信者からのフィードバックなど、より広範な要素によって形成されます。

そのため、Return-Pathの正しい設定は、メール配信の効率と信頼性を高める一因となりますが、メールがスパムでない証明にはならなりません。送信者の身元の明らかさやメールの信頼性を判断するためには、Return-Pathの設定だけでなく、メールの内容と送信者のドメインに対する認証結果を総合的に評価する必要があります。

DMARCにおけるアライメント検査

DMARCは、メール送信の信頼性を高めるために開発された認証技術であり、SPFやDKIMによる認証結果に基づいて、さらに厳密な検証を行います。DMARCは、なりすましを含む不正なメールを大幅に減少させることができ、認証に失敗したメールについての詳細な情報を提供します。

SPFは送信元ドメインが使用を許可したIPアドレスからのメール送信を検証し、DKIMはメールの内容が変更されていないことを保証する電子署名を用います。これらの技術はそれぞれ有効ですが、メールヘッダの「From」ドメインとエンベロープFrom(SPFが参照する)やDKIM署名に含まれるドメインが一致するかどうかは、それ単独では検証しません。このギャップを埋めるため、DMARCは「アライメント検査」と呼ばれるプロセスを導入しています。

アライメント検査では、メールヘッダに表示される「From」ドメインが、SPFまたはDKIMの検証で使用されたドメインと一致しているかどうかを確認します。この一致を通じて、DMARCは「From」ヘッダの偽装を効果的に検出し、認証プロセスを強化します。

つまり、SPFまたはDKIMのいずれかが成功し、かつその認証結果が「From」ドメインとアライメントしていれば、DMARCはメールを合法と判断します。

この厳格な認証プロセスにより、DMARCはメール送信者の身元を確認し、受信者を保護する重要な役割を果たします。さらに、DMARCポリシーを設定することで、認証に失敗したメールをどう扱うか(拒否する、隔離する、または報告のみを受け取る)をドメイン所有者が決定できます。これにより、メールの送信者は自身のドメインの信頼性を高めるとともに、不正使用を防止することが可能になります。

Return-Pathを確認する方法

先述した通り、Return-Pathはメールヘッダーに含まれる項目の一つです。そのため、メールヘッダーに書いてある情報を見れば確認できます。

メールヘッダーの確認方法は、各メールソフトやメールサービスによって異なります。ここではGmail、Yahoo!メール、Outlookを例に、それぞれのメールヘッダーをー確認する方法について解説します。

Gmailの場合

Gmailでの確認方法は以下の通りです。

  1. ヘッダー情報を確認したいメールを選択する
  2. 「返信アイコン」 の横にある「その他アイコン(縦に点が三つ並んだアイコン)」をクリックする
  3. 「メッセージのソースを表示」をクリックする
  4. 新しいウィンドウに詳細ヘッダーが表示される

Yahoo!メールの場合

Yahoo!メールでの確認方法は以下の通りです。

  1. ヘッダー情報を確認したいメールを選択する
  2. 「詳細を表示」をクリックする
  3. 「詳細ヘッダー」をクリックする
  4. 詳細ヘッダーが表示される

Outlookの場合

Outlookでの確認方法は以下の通りです。

  1. ヘッダー情報を確認したいメールを選択し、ダブルクリックで表示する
  2. 「ファイル」をクリックする
  3. 「プロパティ」をクリックする
  4. ヘッダー情報が 「インターネット ヘッダー」 ボックスに表示される

Return-Pathの仕組み

Return-Pathは、メールが配信された後に設定される特殊なヘッダーであり、SMTPセッション中に「MAIL FROM」コマンドによって初めて指定されます。

メールサーバーはこのアドレスを使用して、配信不能メールを送信者に返送します。このプロセスは、メールが正確にどこから来たのかを追跡し、配信エラーがあった際にはその情報を送信者に返すための重要なメカニズムです。

エンベロープFromからReturn-Pathへの変換

エンベロープFromは、SMTPセッション中にメール送信者によって最初に指定されるものです。このアドレスは、メールが配信不能になった場合にバウンスメッセージが送り返される宛先を示します。

実際のメール送信プロセスにおいて、エンベロープFromはメールが最終的に配信された後、受信メールサーバーによってReturn-Pathヘッダとしてメールに追加されます。これは、メールが送信された後にエンベロープFromがReturn-Pathヘッダとして保持され、バウンスメッセージの宛先として機能するようになることを意味します。

この変換プロセスは、メールの配信状態を監視し、送信リストのメンテナンスを効率化する上で重要な役割を果たします。エンベロープFromアドレスは、メールの送信元として機能し、配信エラーが発生した場合の通知先を提供するため、このアドレスを正確に設定することが重要です。

SMTPコマンドによる指定

SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)は、インターネット上でメールを送信するための標準プロトコルです。メール送信時には、SMTPコマンドを用いて、メールの送信に必要な情報が送信サーバーに伝えられます。エンベロープFromアドレスの指定も、SMTPセッションの初期段階で「MAIL FROM:」コマンドを使用して行われます。このコマンドによって指定されたアドレスは、メールの実際の送信元を示し、メールが配信不能であった場合のバウンスメッセージの送信先となります。

SMTPセッションでは他にも、「RCPT TO:」コマンドでメールの受信者を指定したり、「DATA」コマンドでメール本文やヘッダ情報を送信したりします。しかし、「MAIL FROM:」コマンドによるエンベロープFromの指定は、メール配信プロセスにおいて特に重要な役割を担い、メールの送信元管理やバウンス処理の基礎を築きます。

エンベロープFromからReturn-Pathへの変換、そしてSMTPコマンドによるこれらの情報の指定は、メール送信の基礎をなすプロセスです。これにより、メールシステムは配信エラーを適切に処理し、送信者に対して配信不能メールに関するフィードバックを提供することができます。

まとめ

Return-Pathは、通常の返信先とは異なる宛先を設定できるもので、メールの配信エラーが発生した際のバウンスメールの宛先です。バウンスメールを受け取るメールアドレスを別途指定することで、バウンスメールの管理がしやすくなるほか、エラーの分析やレピュテーションを維持できます。

また、指定するアドレスは配信元とドメインが同じReturn-Pathのアドレスを使用することで、SPFによる認証を成功させられるため、DMARCによる認証もパスできます。

さらに、メールの信頼性や到達率を高めるためにもReturn-Pathは重要です。メールの到達率の向上やユーザーの満足度アップにつながるため、自社のReturn-Pathについて一度確認してみることをおすすめします。

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