IDCFクラウド障害でメールが止まったときの対処法|送受信への影響と今すぐできる切り替え手順

※本記事は2026年10月8日時点で公表されている情報をもとに作成しています。障害の状況は日々更新されるため、最新情報は必ずIDCフロンティアの公式発表をご確認ください。
2026年10月7日未明、IDCフロンティアのクラウドサービス「IDCFクラウド」で、ランサムウェア攻撃による障害が発生しました。IDCFクラウドを契約する495の企業・自治体に影響が出ており、その上で動いていたWebサイトや業務システム、SaaSにも停止が広がっています。
こうした障害で見落とされやすいのがメールへの影響です。会員登録やパスワード再設定、注文確認といったシステムからの通知メールは、アプリケーションと同じサーバーやリージョンで送信していることが少なくありません。基盤が止まれば、メールも同時に止まります。さらに、問い合わせ窓口や受信用のメールサーバーまで同じ環境にあると、顧客からの連絡も受け取れなくなります。
「通知メールが一通も出ていないが、どこから手を付ければいいのか」「顧客にどう告知すればいいのか」――そんな状況に置かれたシステム担当者や情報システム部門の方に向けて、本記事ではIDCFクラウドの障害がメールの送受信に与える影響を整理し、今すぐ確認すべきポイント、送信を再開するための切り替え手順、告知メールの文面サンプル、そして次の障害に備えるメール配信のBCPまでを解説します。

IDCFクラウドで発生した障害の概要(2026年10月8日時点)
結論から言うと、今回の障害は東日本リージョン1へのランサムウェア攻撃が原因で、2026年10月8日時点では全面復旧の見通しは公表されていません。メール対応を考える前提として、まず公式発表で確認できる事実を整理します。
発生日時・原因・影響範囲
IDCフロンティアは10月7日に第1報、同日夜に第2報を公表しました。公表内容を時系列でまとめると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日時 | 2026年10月7日(水)午前3時40分頃から継続中 |
| 第1報 | 「IDCFクラウド」の一部システムへの第三者からの不正アクセスにより障害が発生と公表 |
| 第2報 | 原因が第三者からのランサムウェア攻撃であると公表 |
| 影響範囲 | 東日本リージョン1(IDCFクラウドを契約する495の企業や自治体) |
| 実施済みの対応 | 二次被害・データ漏えい防止のため、東日本リージョン1をネットワークから遮断しシステムを停止 |
| 対応中の事項 | 侵入経路の特定と遮断、他リージョンの安全性確認 |
| 他リージョンへの措置 | 安全確認のため、顧客が外部からアクセスできる管理コンソールを一時停止 |
出典:当社サービスの一部システムに対する不正アクセスについて(IDCフロンティア)/【第2報】当社サービスの一部システムに対する不正アクセスについて(IDCフロンティア)
報道によると、影響を受けた東日本リージョン1は福島県白河市のデータセンターにあります。情報漏えいの有無は調査中とされています。
注意したいのは、東日本リージョン1以外を利用している場合でも、管理コンソールが一時停止されている点です。サーバー自体が動いていても、コンソールからの設定変更やスナップショット操作ができない可能性があります。
利用企業のサービスにも影響が波及
今回の障害は、IDCFクラウドと直接契約している企業だけの問題ではありません。報道各社のまとめによると、電話・コールセンター系のサービス、EC事業者向けの在庫連携サービス、セキュリティ製品の管理画面、リモートデスクトップ、CMSのクラウド版など、IDCFクラウド上で提供されていたSaaSが次々と停止しています。
つまり影響は「クラウド基盤 → その上のSaaS → SaaSを使う企業・エンドユーザー」と多段階に広がります。自社がIDCFクラウドと直接契約していなくても、利用しているSaaSの基盤が影響を受けていれば、そのSaaSから送られるはずの通知メールも止まります。
一方で、CMSのクラウド版を提供する事業者の中には、別のクラウドに保管していたバックアップを使い、他社クラウドへ移行して復旧を進めているケースも報じられています。データや機能を「別の基盤」に逃がしておけるかどうかが、復旧スピードを左右する一因になることがうかがえます。
公式情報の確認先
障害対応中は、SNS上の真偽不明な情報も多く出回ります。判断の拠り所にすべきは次の公式チャネルです。
- IDCフロンティアの公式ニュース(第1報・第2報、以降の続報)
- IDCFクラウドに登録している連絡先宛ての個別連絡
- 利用中のSaaS事業者の障害情報ページ
ただし、後述するとおり「登録している連絡先宛てのメール」そのものが届かない構成になっている場合があります。この点は次の章で詳しく扱います。
IDCFクラウドの障害でメールに起きる影響
IDCFクラウドの障害がメールに与える影響は、メールサーバーをどこに置いていたかで大きく変わります。送信・受信・通知の3つの観点で整理します。
送信メール(システムからの通知メール)が止まる
もっとも影響が大きいのが、Webサービスや業務システムから自動送信されるメールです。代表的なものは次のとおりです。
- 会員登録・メールアドレス認証のメール
- パスワード再設定メール
- 注文確認・発送通知メール
- 予約受付・リマインドメール
- ワンタイムパスワード(OTP)などの認証コード
これらを「アプリケーションサーバー上のPostfixやSendmailから直接送信している」構成では、サーバーが停止した時点で送信も止まります。さらに、送信待ちのキュー(未送信メール)が停止したサーバーのディスク上にあれば、暗号化やデータ消失によってキューごと失われる可能性もあります。
特にパスワード再設定やOTPのメールが届かないと、サービスそのものが復旧してもユーザーがログインできない状態が続きます。メールの停止は「通知が遅れる」だけでなく、サービス全体の利用不能に直結する点を押さえておく必要があります。
受信用メールサーバー(MXレコードの指定先)が止まると何が起きるか
自社ドメインのMXレコードがIDCFクラウド上のメールサーバーを指している場合、外部からのメールを受け取れなくなります。
ただし、すぐにメールが消えるわけではありません。送信側のメールサーバーは、宛先サーバーに接続できない場合、一定時間おきに再送を試みます。メール配送の標準仕様(RFC 5321)では、再送をあきらめるまでの期間として少なくとも4〜5日程度を推奨しており、たとえばPostfixの初期設定(maximal_queue_lifetime)も5日です。
| 経過時間 | 送信者側で起きること |
|---|---|
| 数分〜数時間 | 送信側サーバーのキューに保持され、定期的に再送される |
| 数時間〜1日程度 | 設定によっては「配送が遅延している」旨の通知が送信者に届く |
| 4〜5日前後 | 多くのサーバーで再送を打ち切り、エラーメール(バウンス)が送信者に返る |
つまり、数日以内に受信環境を復旧するか、宛先アドレスを用意した別の受信環境へMXを切り替えれば、メールの多くを受け取れる可能性があります。逆に、受信環境の復旧に1週間以上かかる見込みなら、早い段階でMXの切り替えを判断する必要があります。なお、再送間隔や打ち切りまでの期間は送信側サーバーの設定次第のため、すべてのメールが確実に再送されるわけではありません。
障害通知メールが届かない「盲点」
見落としがちなのが、クラウド事業者からの障害連絡そのものを受け取れないケースです。
IDCFクラウドでは、障害やメンテナンスの情報を登録されたメールアドレス宛てに送るほか、クラウドコンソールからも確認できる仕組みになっています。ところが、登録している通知先アドレスのドメインが、障害の起きたIDCFクラウド上のメールサーバーで運用されていたらどうなるでしょうか。障害の連絡は届かず、コンソールにも入れない――状況把握の手段が大きく限られます。
インフラの障害通知先は、監視対象のインフラとは別の基盤で運用しているメールアドレス(Google WorkspaceやMicrosoft 365など)にしておくことが重要です。今回の障害を機に、IDCFクラウド以外のサービスも含めて通知先を見直しておくことをおすすめします。
メール復旧の前にまず確認すべきポイント
闇雲に設定を変える前に、自社のメール構成がどの程度影響を受けているかを把握します。次の項目を上から順に確認してください。
メールサーバーの所在リージョンと稼働状況
送信用・受信用のメールサーバーがIDCFクラウドのどのリージョン・ゾーンにあるかを確認します。東日本リージョン1であれば停止している可能性が高く、それ以外のリージョンなら稼働を続けている可能性があります。
あわせて、「メールサーバーは別の環境だが、メールを送る指示を出すアプリケーションがIDCFクラウド上にある」パターンも確認が必要です。この場合、メールサーバーが無事でも送信は止まります。
DNSを管理している場所
メールの切り替えには、MX・SPF・DKIM・DMARCといったDNSレコードの変更が欠かせません。DNSをどこで管理しているかによって、取れる手段が変わります。
- 外部のDNSサービスやドメイン登録事業者で管理している → DNSは変更可能。切り替えの自由度が高い
- 影響を受けた環境上のDNSサーバーで管理している → DNSの変更自体ができない可能性がある
DNSが変更できない場合は、ドメイン登録事業者側でネームサーバーを切り替える作業から始める必要があり、反映までの時間も見込まなければなりません。切り替え先には、MXやAなど既存の全レコードを再登録する必要があります。また、DNSSECを有効にしている場合は、DSレコードの更新も必要です。更新しないと、ドメイン全体が名前解決できなくなります。
メールの送信経路
アプリケーションからのメールが、次のどの経路で送られているかを確認します。
- アプリケーションサーバー上のMTA(Postfixなど)から直接送信
- 社内の別サーバーのMTAを経由して送信
- 外部のメール配信サービス(SMTPリレーやAPI)を経由して送信
外部のメール配信サービスを使っている場合、メール配信の機能自体は障害の影響を受けていない可能性があります。止まっているのが「送信指示を出すアプリケーション側」なのか「メールを送り出すサーバー側」なのかを切り分けることが、対応の第一歩です。
送れなかったメールの範囲
障害発生時刻(10月7日午前3時40分頃)以降に、送られるべきだったのに送られていないメールを洗い出します。アプリケーションのデータベースやログが別の環境に残っていれば、注文や会員登録の記録から「送信漏れリスト」を作成できます。復旧後にまとめて再送するのか、内容を改めて案内するのかは、このリストをもとに判断します。
メール送信を止めないための応急対応
ここからは、アプリケーション自体は別環境で稼働を継続できている、もしくは別環境に退避して再開できる前提で、メール送信を再開するための具体的な手順を解説します。
送信先SMTPを外部のメール配信サービスに切り替える
もっとも早く送信を再開できるのは、アプリケーションの送信先を外部のSMTPリレーサービスに向け直す方法です。多くのアプリケーションは、SMTPの接続先(ホスト・ポート・認証情報)を設定ファイルや環境変数で持っているため、コードを大きく書き換えずに切り替えられます。
たとえば環境変数でSMTP設定を管理している場合、次の値を差し替えて再起動するだけで済むケースも多くあります。
# 変更前(停止したIDCFクラウド上のMTA)
SMTP_HOST=10.x.x.x
SMTP_PORT=25
SMTP_AUTH=false
# 変更後(外部のSMTPリレーサービス)
SMTP_HOST=(配信サービスの管理画面に表示される接続先ホスト)
SMTP_PORT=587
SMTP_USER=(配信サービスで発行したユーザー名)
SMTP_PASS=(配信サービスで発行したパスワード)
SMTP_TLS=starttls※変数名や指定方法はフレームワークによって異なります。
あわせて、配信サービスへの送信ドメインの登録と、新しい環境から送信ポート(587番)への通信が許可されているかも確認してください。
別の環境でPostfixが稼働している構成であれば、main.cfでrelayhost = [接続先ホスト]:587を指定し、SMTP認証(smtp_sasl_auth_enable = yes)とTLS(smtp_tls_security_level = encrypt)を有効にする方法もあります。アプリケーション側の設定を変えずに済むため、複数のシステムが同じMTAを使っている場合に有効です。
SPF・DKIM・DMARCを切り替え先に合わせて更新する
送信経路を変えたら、送信ドメイン認証の設定を必ず更新します。これを忘れると、GmailやYahoo!メールなどでの迷惑メール判定や受信拒否につながる可能性があります。
| レコード | 必要な対応 | 設定例 |
|---|---|---|
| SPF | 新しい送信元(配信サービス)を許可リストに追加 | 既存のSPFレコードにinclude:(配信サービス指定の値)を追記(末尾の-all/~allは既存の設定を維持) |
| DKIM | 配信サービスで署名用の鍵を発行し、公開鍵をDNSに登録 | selector._domainkey.example.jpにTXTまたはCNAMEレコードを追加(配信サービスの指示に従う) |
| DMARC | 既存ポリシーは原則維持。SPFまたはDKIMが整合(アライメント)することを確認してから送信を再開 | (既存のDMARCレコードを変更しない) |
SPFは1ドメインにつき1レコードしか記述できません。既存のSPFレコードに追記する形で設定し、DNSの参照回数の上限(10回)を超えないよう注意してください。
なお、配信サービスによってはReturn-Path(エンベロープFrom)が自社ドメインにならないため、SPFを追加してもDMARCの判定では整合しない場合があります。DMARCはDKIMで整合させるのが確実です。
DMARCをp=quarantineやp=rejectで運用している場合、SPF・DKIMのいずれも整合しない状態で送信すると、正規のメールまで迷惑メール扱いや受信拒否になる恐れがあります。DKIMの署名が正しく付いていることを確認してから本番の送信を再開するのが安全です。
受信側はMXの変更とバックアップMXで一時的に対応する
受信用のメールサーバーが停止している場合は、MXレコードを一時的に別の受信環境へ向けることで、新たに届くメールを受け取れるようになります(停止したサーバー内に保存済みのメールは、復旧まで参照できません)。
- 既存のグループウェア(Google WorkspaceやMicrosoft 365など)で独自ドメインを受信できるよう設定し、MXを切り替える
- 主系より大きいプリファレンス値(=低い優先度)でバックアップMXを登録し、主系の復旧までメールを預かってもらう(バックアップMXサービスの契約が別途必要)
※切り替え先で宛先アドレス(メールボックスやエイリアス)を作成してからMXを変更してください。未作成のまま切り替えると、送信側に恒久エラーが返り、メールが再送されません。
前述のとおり、送信側サーバーは数日間は再送を続けます。受信環境の復旧見込みと、MX切り替えにかかる作業時間を比較して判断してください。MXレコードのTTL(キャッシュ時間)が長いと反映に時間がかかるため、現在のTTL値も確認しておきます。
切り替え時に陥りやすい落とし穴
緊急時の切り替えでは、次のようなトラブルがよく起こります。
- 復旧後の二重送信:障害中のキューが復旧後に一斉に送り出され、切り替え先から送ったメールと重複する。被害を受けたサーバーはネットワークから隔離した状態でキューを確認・破棄し、安全性を確認してから再開する。期限切れの認証コードなどが遅れて届かないよう注意する
- 送信元IPアドレスのレピュテーション不足:新しく用意したサーバーから大量送信すると、送信実績がないため迷惑メール判定されやすい。運用中の配信基盤を持つサービスを使うほうが安全
- 送信量の上限:無料プランや試用環境では、1日の送信数に上限がある場合がある。障害対応で送信量が急増する点を考慮する
- 認証情報の管理:急いで発行したSMTPのパスワードをチャットやチケットに平文で残さない。障害対応が落ち着いたら再発行する
顧客・取引先への障害告知メールの送り方
サービスが止まっている間、顧客がもっとも不安に感じるのは「何が起きていて、いつ直るのか分からない」状態です。告知メールは、事実・影響・今後の連絡予定を簡潔に伝えることを優先します。
告知メールに入れるべき項目
| 項目 | 記載のポイント |
|---|---|
| 件名 | サービス名と「障害」を入れ、何の連絡か一目で分かるようにする |
| 発生日時 | 判明している範囲で具体的に記載する |
| 影響範囲 | 利用できない機能・できる機能を分けて書く |
| 原因 | 確定している事実のみ記載し、推測は書かない |
| 個人情報への影響 | 調査中であれば「調査中」と明記する |
| 代替手段 | 電話窓口や代替手続きがあれば案内する |
| 次回の連絡予定 | 「○日○時頃に続報をお送りします」と時刻を約束する |
原因の書き方には特に注意が必要です。調査中の段階で「ランサムウェア」「情報漏えいはありません」などと断定すると、後から訂正が必要になった際に信頼を大きく損ないます。公式に確認できた事実の範囲にとどめるのが原則です。
なお、個人データの漏えいやそのおそれがある場合は、個人情報保護法に基づき、個人情報保護委員会への報告(速報・確報)や本人への通知が必要になる可能性があります。顧客への告知とあわせて、法務部門や顧問弁護士と早めに確認してください。
そのまま使える告知メール文面サンプル
以下は、利用中のクラウド基盤の障害でサービスが停止した場合の文面例です。自社の状況に合わせて調整してください。
件名:【重要】○○サービスの一部機能停止について(第1報)
○○サービスをご利用のお客さま
平素より○○サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
現在、当社サービスが利用しているクラウド基盤の障害により、
○○サービスの一部機能がご利用いただけない状態となっております。
ご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
■発生日時
2026年10月7日(水)午前3時40分頃から継続中
■ご利用いただけない機能
・会員ログイン
・ご注文の受付
■ご利用いただける機能
・電話窓口でのご注文受付(受付時間 9:00〜18:00)
■お客さま情報への影響
現在、クラウド基盤の事業者とともに調査を進めております。
判明次第、速やかにお知らせいたします。
■今後のご連絡について
次回は10月8日(木)18時頃にあらためてご案内いたします。
なお、本件に関して当社からパスワードやカード情報の入力を
お願いすることはございません。不審なメールにはご注意ください。
株式会社○○ ○○サービス担当
お問い合わせ:○○○-○○○-○○○○最後の一文は省略しないことを強くおすすめします。理由は次の項で説明します。
障害に便乗したフィッシングメールへの注意喚起
大規模な障害や情報漏えいが報じられた直後は、「お詫び」や「補償」を装ったフィッシングメールが出回りやすくなります。偽のお詫びメールから偽サイトに誘導し、ID・パスワードやカード情報を入力させる手口です。
告知メールには「当社からパスワードや決済情報の入力を求めることはない」と明記し、正規の連絡手段を案内しておくことで、顧客が偽メールを見分けやすくなります。あわせて、DMARCをp=quarantine/p=rejectで運用していれば、自社ドメインそのものを詐称したメールは届きにくくなります(似たドメインを使ったなりすましは防げないため、告知での注意喚起も欠かせません)。
次の障害に備えるメール配信のBCP
今回の障害が示したのは、クラウドを使っていても、1つの基盤に依存していれば止まるときは止まるという事実です。メールは障害時の顧客連絡を担う重要な手段だからこそ、平時から備えておく必要があります。
メール送信をアプリケーション基盤から分離する
最も効果が大きいのは、メールの送信機能をアプリケーションと同じサーバー・同じリージョンに置かないことです。
アプリケーション上のMTAから直接送信する構成では、アプリケーション基盤の障害がそのままメールの停止につながります。一方、送信処理を外部のメール配信サービスに任せておけば、少なくとも「メールを送り出す機能」はアプリケーション基盤から切り離されます。障害時に別環境でアプリケーションを立ち上げ直した際も、SMTPの接続先は変えずに済むため(送信元IPアドレスを制限している場合は、新環境のIPの許可が必要)、復旧作業が単純になります。
自前のメールサーバーと外部配信サービスの比較
| 比較項目 | 自前のメールサーバー(MTA) | 外部のメール配信サービス |
|---|---|---|
| 障害の影響範囲 | アプリと同じ基盤なら同時に停止する | アプリ基盤の障害とは切り離される |
| 別環境への切り替え | MTAの再構築、IPアドレス変更、SPF修正、逆引き(PTR)設定が必要 | SMTP接続先の設定を新環境に移す(IP制限がある場合は許可設定も) |
| 送信元IPのレピュテーション | 新しいIPは実績がなく、迷惑メール判定されやすい | 事業者が運用・管理する配信基盤を利用できる |
| バウンス(エラーメール)処理 | 自前で解析・リスト管理が必要 | サービス側で自動処理されることが多い |
| 送信ドメイン認証 | SPF/DKIM/DMARCを自前で構築・運用 | サービスの手順に沿って設定できる |
| 運用負荷 | OS・MTAの更新、ブラックリスト対応などが常に発生 | メールサーバーの保守が不要 |
| コスト | サーバー費用に加え、運用担当者の工数がかかる | 送信通数に応じた月額料金 |
※外部サービスにも障害リスクはあるため、事業者の稼働状況ページや通知手段もあわせて確認しておくことが重要です。
自前運用にも、細かな配送制御ができるといった利点はあります。ただし、障害からの復旧という観点では、メールの送信基盤を外部に分離しておくことで、切り替えの手順を減らしやすく、復旧を早められる可能性が高まります。
平時に用意しておくべき手順書と設定
メール配信のBCPとして、最低限次の項目を文書化しておきましょう。
- メールの送信経路図(どのシステムが、どこを経由して、どのドメインで送っているか)
- DNSの管理場所と、変更権限を持つ担当者・アカウント
- SMTP接続先を切り替える手順と、設定ファイル・環境変数の場所
- SPF・DKIM・DMARCの現在の設定値と、切り替え先の設定値
- 障害告知メールのテンプレートと、配信リストの保管場所(障害が起きた基盤とは別の場所)
- インフラ事業者からの障害通知を受け取るアドレス(監視対象とは別の基盤で運用)
告知メールの配信リストや送信手段を、障害の起きた基盤の中にしか持っていないと、肝心のときに顧客へ連絡できません。連絡手段は「止まった基盤の外」に置くことを意識してください。
クラウド障害に強いメール運用ならメール配信システムを活用する
ここまで見てきたように、クラウド基盤の障害でメールまで止めないためには、メールの送信機能をアプリケーション基盤から分離しておくことが有効です。その有力な選択肢が、外部のメール配信システムの活用です。
メール配信システムを使うメリット
自前のメールサーバーを持たず、外部のメール配信システムを経由して送信することで、障害対応と平時の運用の両方で次のようなメリットがあります。
- 障害時の切り替えが簡単:アプリケーションを別環境で立ち上げ直しても、SMTPの接続情報を設定すれば送信を再開できる
- 到達率を維持しやすい:配信事業者が運用する送信基盤を使うため、新しいIPアドレスで一から送信実績を積む必要がない
- メールサーバーの保守から解放される:OSやMTAの更新、エラーメール処理、ブラックリスト対応を自社で抱えずに済む
障害が起きてから慌てて準備するのではなく、平時のうちに送信経路を整えておくことが、いざというときの復旧スピードを大きく変えます。
おすすめのメール配信システム「blastengine」

ブラストエンジン(blastengine)は、お客さまのシステムとSMTPリレーやAPIで連携するだけで、トランザクションメールや一斉配信を行えるメール配信サービスです。メールサーバーの運用・メンテナンスはブラストエンジン側で行います。送信機能をアプリケーション基盤とは別のサービスに分けておけるため、障害時の切り替え作業を減らせます。
- API連携・SMTPリレー:既存システムへの組み込みが容易で、アカウント開設と送信ドメイン認証の設定後は、接続先を変更するだけで送信できる
- IPレピュテーション管理:送信基盤の運用・管理をブラストエンジン側で行うため、IPアドレスの評価を自社で育てる必要がない
- SPF/DKIM/DMARC対応:送信ドメイン認証に標準対応し、切り替え後も迷惑メール判定のリスクを抑えられる
- バウンスメール自動対応:エラーメールの処理を自動化し、障害対応中のエンジニアの負荷を減らせる
- 配信ログ管理:詳細な配信ステータスを確認でき、送信状況の確認がスムーズ
初期費用は無料で、月額3,000円から利用できます。メールアドレスの入力のみで無料トライアルが可能なため、平時のうちに接続テストを済ませ、障害時の切り替え先として準備しておくこともできます。
ブラストエンジン公式サイト:https://blastengine.jp/
おすすめのメール配信システム「ブラストメール」

障害告知やお知らせを、管理画面から多数の顧客へまとめて送りたい場合は、ブラストメールが適しています。ブラストメールは16年連続で導入社数シェアNo.1を獲得しているメール配信システムで、導入実績は30,000社以上にのぼります。専門知識がなくても直感的に操作できるシンプルな管理画面が特徴です。
- フィルタ配信(セグメント配信):影響を受けた顧客だけを抽出して、障害告知を送り分けられる
- 効果測定:開封率・クリック率・エラーカウントを確認でき、告知の到達状況や閲覧状況の目安を把握できる
- 迷惑メール判定対策(SPF/DKIM):送信ドメイン認証に対応し、重要な告知が迷惑メールフォルダに埋もれにくい
- 配信承認機能:送信前に承認フローを挟めるため、緊急時の誤送信を防ぎやすい
自社システムとは別の基盤から顧客へ一斉に連絡できる手段を持っておくことは、障害時の顧客コミュニケーションを支える備えになります。まずは無料お試しで操作感を確認してみてください。
公式サイト:シェア1位のメール配信システム「ブラストメール」
まとめ
IDCFクラウドの障害は、東日本リージョン1へのランサムウェア攻撃によるもので、495の企業・自治体に影響が広がっています。メールについては、送信・受信・障害通知の3つの観点で影響を整理することが重要です。
本記事のポイントは次のとおりです。
- アプリケーションと同じ基盤でメールを送っている場合、障害と同時に通知メールも止まる
- 受信メールは送信側で数日間再送されることが多いため、復旧見込みに応じてMX切り替えを判断する
- 障害通知の受信先は、監視対象とは別の基盤のメールアドレスにしておく
- 送信再開は「SMTP接続先の切り替え」と「SPF・DKIMの設定、DMARCの整合確認」をセットで行う
- 告知メールは確認済みの事実だけを書き、フィッシングへの注意喚起を添える
次にやるべきことは、自社のメール送信経路を図に起こし、どの基盤が止まるとどのメールが止まるかを確認することです。そのうえで、メール送信をアプリケーション基盤から分離できる外部のメール配信サービスを、平時のうちに切り替え先として準備しておきましょう。
FAQ
FAQ
- IDCFクラウドの障害でメールが届かない場合、まず何を確認すべきですか?
- A:メールサーバーとメールを送信するアプリケーションが、IDCFクラウドのどのリージョンで稼働しているかを確認してください。あわせて、DNSの管理場所とメールの送信経路(自前のMTAか外部サービスか)を把握すると、切り替えの可否と手順を判断できます。
- 受信用のメールサーバーが止まっている間に送られたメールは消えてしまいますか?
- A:すぐには消えません。送信側のメールサーバーは一定期間再送を試みるのが一般的で、多くの場合は4〜5日前後で再送を打ち切ります。その期間内に受信環境を復旧するか、宛先アドレスを用意した別の受信環境へMXレコードを切り替えれば、多くのメールを受け取れる可能性があります。
- 送信経路を外部のメール配信サービスに切り替えるとき、DNSで何を変更する必要がありますか?
- A:SPFレコードへの配信サービスの追加とDKIMの公開鍵の登録が必要です。DMARCは既存のポリシーを維持したまま、DKIMの署名が正しく付き、DMARCの判定で整合することを確認してから送信を再開してください。
- 障害告知メールで原因を書くときの注意点はありますか?
- A:公式に確認できた事実だけを記載し、推測や断定は避けてください。個人情報への影響が未確定であれば「調査中」と明記し、次回の連絡予定を具体的な日時で示すと、顧客の不安を和らげられます。
- 次のクラウド障害に備えて、メールについて平時にやっておくべきことは何ですか?
- A:メールの送信経路を文書化し、メール送信をアプリケーション基盤から分離しておくことが有効です。外部のメール配信サービスを切り替え先として準備し、障害告知メールのテンプレートと配信リストを障害の影響を受けない場所に保管しておきましょう。