AWSからメール送信するメリットと具体的な方法を解説!メール送信時の注意点も要チェック
AWSは、ビジネスのデジタル化を進める上で欠かせないクラウドコンピューティングプラットフォームです。
システムやサイトをAWSで構築していて、そこからメール配信も行いたいという場面は多いでしょう。
しかし、AWSからメールを配信する際には、さまざまな点に注意する必要があります。例えば、トランザクションメールなどシステムから自動配信されるメールは、迷惑メールとして誤判断されることも多く、相手に正常に届かないケースがあるのです。
この記事では、「AWS」を使用するために必要な知識について、詳しく説明します。
AWSとは
AWSは「Amazon Web Services」の略称で、ネット通販大手のアマゾンが提供しているクラウドサービスです。幅広い種類のサービスが存在し、多くの企業が自社のシステム構築にAWSを使用しており、クラウドインフラ市場でトップのシェアを誇っています。
元々は、アマゾン社のインフラ整備のために自社開発したものでしたが、現在では他社も利用可能なようクラウド展開もしています。
AWSを使うメリット
AWSにはコンピューティング、ストレージ、データベース、分析、機械学習、AI、IoT、セキュリティ、エンタープライズアプリケーションなど、あらゆるニーズに応えるサービスが揃っています。
それに加えて、費用面や機能面などでさまざまなメリットがあります。詳しく見てみましょう。
コストを抑えられる
AWSは2006年にサービス提供を開始し、迅速なスピードで規模を拡大しています。実際、80回以上の値下げがすでに実施されており、インターネット利用時に発生するデータ転送を低価格で利用可能です。例として、以下のサービスが存在します。
無料トライアル:該当のサービスをはじめて利用する場合、一定期間のみ使用可能な無料利用枠
Amazon GuardDuty | 30日間無料 |
Amazon Redshift | 2か月無料 |
12か月無料枠:AWSのアカウントを新規作成した日から、1年間のみ使用可能な無料利用枠
Amazon EC2 | 750時間/月無料 |
Amazon Connect | 90分/月無料 |
無期限無料枠:サービスごとに規定された利用期間を無期限に無料で利用できる枠
Amazon DynamoDB | 25GBのストレージ |
Amazon Lambda | 100万/月の無料リクエスト |
オンプレミスとは異なり、クラウドでは利用期間中に割引が反映されるのが特徴的です。今後も利用期間中に割引される可能性は大いに考えられるでしょう。
柔軟にリソースを変動できる
AWSは、ユーザーの利用内容に合わせて柔軟にカスタマイズできます。AWSで使用できるサービスの種類が豊富なため、組み合わせ次第でユーザーのニーズに合わせたリソースの変動が可能です。
また、AWSではマネージド型サービスを提供しているため、インフラ整備や運用における負担が軽減されています。
例えば、繁忙期や閑散期で利用ユーザー数が異なる場合、繁忙期は想定されるWebサーバーの容量を増やし、閑散期には想定されるWebサーバーの容量を減らすことができます。最適な容量だけを利用することで料金を節約できるため、費用の削減が見込めます。
時間をかけずに利用できる
AWSの操作は簡単で、数分間に数クリックするだけでユーザーに必要な分のサーバーを用意できます。利用開始したいタイミングで迅速に構築および運用に移れるため、ビジネスの効率化につながるでしょう。
オンプレミスで構築する場合、高額な初期費用やキャパシティの緻密な計画が必要でした。サーバーを発注しても数週間以上納品日数がかかり、納品後はエンジニアがミドルウェアやOSの取り付けだけでなく、ネットワーク設定まで行う必要があったのです。そして、注文書や見積書、契約書などの工程も発生するため、サービスが稼働するまでに多大な労力と時間を要しました。
しかし、AWSでリソースをする場合、API経由の操作や管理者画面が用意されているため、初期費用がかかりません。また、提供されているサービスから選択しカスタマイズするため、数分の工程だけで利用が可能です。
サービスの種類が豊富
AWSは200を超えるサービスが存在し、ユーザーからのリクエストをもとに新しい機能が実装されています。また、クラウド上でサービス提供しているため、国や地域を気にせずに最先端の技術を使用できるのも魅力です。
具体的なサービスを以下にまとめました。
- Amazon Elastic Compute Cloud(EC2):仮想サーバーの提供をする
- Amazon S3:ストレージを提供する
- Amazon Aurora:データベースサービスを提供する
- Amazon SageMaker:機械学習のモデル構築やトレーニングのサポートをする
- Amazon Forecast:機械学習の予測機能を提供する
- Amazon Connect:注文やお問い合わせなどに関するプラットフォームの提供をする
海外展開がしやすい
AWSはサービス拠点をグループ化しながら、広い範囲でグローバルに展開しています。それぞれのリージョン内で独立して構成されているため、一度アカウントを作ってしまえば、世界中どこでもシステム展開が可能です。
従来、海外向けのシステム展開は、現地のデータセンター契約や事前の視察が必要でしたが、AWSでは必要ありません。
例えば、東京のリージョンでシステム構築をテンプレート化した場合、別のAWSアカウントや異なるリージョンでシステムの再構築ができるでしょう。主に、Amazon CloudFrontであれば東京のリージョンに限定することなく、世界中のユーザーに向けて効率的にデータ配信できます。そして、Amazon Route 53を使用すれば、ロードバランサー機能で複数のリージョンに同じ構成のシステム配置が可能です。
アップデートが速い
AWSでは、年間で3,000回以上の機能改修やバージョンアップを実行しています。
また、AWSはマイクロサービスアーキテクチャを前提にシステム開発をするため、システム同士の依存関係を少なくし、システムが大きく成長しても簡単に管理ができます。マイクロサービスアーキテクチャとは、システムをAPI経由のみで連携する方法で、連携先のOSやフレームワーク、データベースが異なっていても自由にシステム開発をすることが可能です。大きな影響を与えないAPIのアップデートについては、少人数の判断と承認のみで利用できるでしょう。
なお、今まで作動していた機能が動かなくなるといったデグレード障害はほぼ発生していません。
運用負荷を軽減できる
マイクロサービスアーキテクチャを導入した場合、アプリケーションに対して拡張性や柔軟性、俊敏性を得られます。しかし、次に課題になってくるのが、クラウド活用したインフラを含む管理および運営などの費用です。高性能なサービスの開発には大きな責任が伴うため、開発担当者と運営担当者が連携し、協力する必要があります。
例えば、仮想化したコンピューティングのAWS Lambdaの場合は、事前にメモリやCPU、ストレージを指定してから起動します。システムの処理速度を向上させれば、経済規模や技術の革新で起こる費用削減、オートスケールやリソース自体の増減が可能です。また、処理能力を下げれば低コストに利用できるでしょう。しかし、常に100%のメモリやCPU、ストレージなどを利用するのは容易ではないため、どうしても余分なリソースが発生してしまうのです。
一方で、マネージド型サービスであれば、Amazon S3でストレージを拡張できます。保存しているデータ量にのみ課金されるため、AWS Lambdaに比べてより低コストに利用することが可能です。
高いセキュリティを確保できる
AWSは2006年のサービス提供開始時から、セキュリティを最優先にシステム開発をされており、ユーザーのニーズに対して迅速に対応してきました。厳しいコンプライアンスの要件やセキュリティ機能の拡張などに対応した後は、第三者機関によって検証が行われ、認証および認定されています。実際に第三者認定を取得し、維持しているものは以下の通りです。
- PCI DSS レベル1
- SOC1/ISAE3402
- SOC2
- SOC3
- FIPS 140-2
- CSA
多くの第三者からの認定取得および維持は難しいでしょう。なぜなら「継続的なセキュリティ投資」「専門の対応部署設置」「24時間365日いつでも対応可能」「物理的に持ち出しが不可能な状態」のような条件があるためです。複数の厳しい条件をクリアする必要がありますが、全ての条件を満たしているAWSは信頼度の高いセキュリティを維持しているといえます。
日本語でのサポートを受けられる
AWSではメールや電話、お問い合わせフォームなど、24時間365日いつでも手厚いサポートが受けられます。
日本語に対応しているため、新規利用予定の方でも安心です。ユーザーのニーズに応じたパフォーマンスや費用で柔軟に提供してくれます。
AWSでのメール送信方法
AWS内で構築したシステムを通してメールを送信する方法は、主に3種類あります。
ここでは、それぞれの方法のメリットとデメリットを詳しく紹介します。
EC2でSMTPサーバーを構築する
EC2とは「Elastic Compute Cloud」の略称であり、AWSが提供する仮想サーバーの一つです。EC2のプログラム上で自らSMTPサーバーを構築および運用し、メールを送信します。
メリット
自らSMTPサーバーを構築できるため、MTA使用経験のある方は自身のノウハウを発揮して構築および運用ができます。
また、国内の携帯キャリアであれば、送信先に対して細かく送信ルールを設定できるため、メール送信における幅広い場面で柔軟な対応が可能です。
デメリット
自らSMTPサーバーを準備するため、構築や運用だけでなくトラブル対策も必要です。サーバー運用に対して保守する業務が増えると、大きな負荷がかかります。
また、デフォルトのメール送信設定は25番ポートに対して制限があり、制限を解除するための手続きやDNS逆引き設定などの申請が必要です。さらに、送信時に利用するIPアドレスの取得やセキュリティ管理などの工程も加わるでしょう。自由度が高い方法ではありますが、安定したメール送信における運用は全て自社で完結しなければならないため、一番手のかかる方法といえます。
Amazon SESを利用する
Amazon SESとは「Simple Email Service」の略称であり、AWSが提供するフルマネージドのメール配信に関するサービスです。
独自のサーバー構築および管理をせずに利用できます。また、独自のドメインを所持している場合でもAmazon SESの利用は可能です。他のAWSサービスと比較して、連携が簡単です。
メリット
Amazon SESでは、メールを送信する際にSMTPサーバーの構築を必要としないため、構築にかかる負荷を軽減できます。
また、認証付きメール(DKIM)のような「なりすまし」を防ぐ機能を簡単に設定できるため、信頼度の高いサービスを提供できるでしょう。さらに、AWSが管理している数多くの共有IPアドレスから送信するため、送信元IPにおけるセキュリティ管理が不要です。
デメリット
迷惑メールや質の低いメールなど、悪意のあるコンテンツを送信しているとAWSが判断した場合、Amazon SESの利用が停止される確率が高まります。
そのため、エラーメールやリターンメールの割合を継続的に低くし、受信者から苦情が届かないよう未然に対策しなければなりません。
もし、アカウントが停止してしまった場合は、AWSから問題として指摘された点を改善し、再発防止のための計画を報告する必要が出てくるでしょう。
また、Amazon SESではアカウント一つにつき24時間以内に送信可能なメールの数が決まっている「送信クォータ」という制限があります。利用開始時のデフォルト設定は200通のため、大量にメール送信する予定の場合には注意が必要です。あらかじめ十分な送信クォータを確保するか、他の選択肢を検討しましょう。
SMTPリレーサービスを利用する
SMTPリレーサービスは、大量のメール送信に対して能力を発揮するサービスです。そのため、独自にメール送信のサービスを構築および運用する必要がなく、送信先が確実かつ迅速に大量のメールを送信できます。
メリット
SMTPリレーサービスのメリットは次の通りです。メールに特化したシンプルな機能のため、メールリレーのシステム設定だけで手軽に利用できるでしょう。
- 信頼できる送信元IPから配信するため、到着率が高い
- SMTPサーバーを運用する際の負担を軽減できる
- 日本国内のIPで配信できる
- 国内の携帯キャリアに対する到着率の向上
- 管理画面より配信内容の結果やログを手軽に確認できる
デメリット
SMTPリレーサービスはサービス利用時に費用がかかります。なぜなら、外部のサービスを利用するためです。外部サービスの利用には、事業所都合によるサービスの廃止や縮小のリスクがあります。
おすすめのSMTPリレーサービス「ブラストエンジン(blastengine)」
ブラストエンジンは、SMTPリレーサーバーを使用して、簡単に大量のメールを高速配信することが可能です。さらに、メールサーバーを必要とせず、API経由でメールを送信する仕組みも提供しています。
ブラストエンジンは、サーバーの運用やメンテナンスを行っているため、常に高いIPレピュテーションを維持しながら、安全にメールを送ることができます。
以下のような課題がある場合は、ブラストエンジンの利用を検討してみることをおすすめします。
- 自社のIPアドレスやドメインがブラックリストに登録されていて、メールが届かない場合
- 国内キャリアにメールが届かず、対応方法がわからない場合
- 自社でメールサーバーを管理・運用したくない場合
また、ブラストエンジンは各メールプロバイダーや携帯キャリアのドメインに最適化されており、大規模なネットワークを経由してメール配信を行うことで、日本国内での到達率を圧倒的に高めています。
利用料金は月額3,000円からとコストパフォーマンスにも優れており、メールだけでなく、日本語での電話サポートにも対応しています。
メールアドレスの入力のみで無料トライアルが可能ですので、まずは気軽にお試しください。
AWSからメール送信する際の注意点
EC2やAmazon SESを含めた、AWSの一般的なメール送信には注意点もあります。リスクを事前に把握していなければ、エラーメールやリターンメールだけでなく、迷惑メールとしてブロックされる危険性が出てくるでしょう。
ここからは、メール送信の際に注意すべき点を詳しく説明します。
OP25Bの解除申請を行う
OP25Bは「Outbound Port 25 Blocking」の略称であり、送信元と外部のネットワーク間で25番ポートを利用した際にメール送信を遮断する機能です。AWSではデフォルト設定で、EC2から25番ポートである外部のSMTPサーバーへの接続制限があります。そのため、25番ポートを利用したメール送信の場合、あらかじめAWSに対して解除申請を行う必要があるのです。
一方で、OP25Bの規制はサブミッション・ポートなどの代替ポートで制限の回避ができます。
メール送信先リストを精査する
メールをブロックされないようにするには、メールの送信先を制限することも大切です。メールの送受信を制限する機能を「IPスロットリング」といい、基本的にISPや各携帯のキャリアは、受信可能なメール数を一定時間ごとに制限しています。そのため上限を超えた場合、受信はブロックされます。
時間が過ぎればIPスロットリングは解除されるものの、ブロック状態を解除するには送信元IPアドレスの変更以外の回避方法はありません。少量ずつ慎重にメールを送信しましょう。
IPレピュテーションを管理する
IPレピュテーションとは、IPアドレスが持つ評判を数値化して評価したものです。評価のスコアが高いIPアドレスは信頼性が高いことになるため、メールの到着率が向上します。反対に、スコアが低い場合は迷惑メールとして分類される危険性があるでしょう。なお、スコアはTALOSやSender Scoreなどで確認できます。
メルマガのように一斉送信を大量に行う場合、ブロックを防ぐためにも送信元のIPレピュテーションスコアを高くしなければなりません。そのため、IPウォームアップという作業を行ってIPレピュテーションを高め、事前に信頼度の高いスコアを所持したIPアドレスを準備する必要があります。
一方で、スコアの低いIPアドレスを回復するためには経験と手間がかかるため、短期間で送信環境の確保が必要な場合はレピュテーション管理が必要ない方法を選択しましょう。
バウンスを管理する
送信エラーの際に送られるリターンメールおよびエラーメールは「バウンスメール」といわれています。Amazon SESの利用時にバウンス率が高くなっていると、AWSの利用制限がかかる恐れがあります。また、「レビュー対象」に該当するバウンス率が5%以上になればAWSの機能制限や申請拒否につながるでしょう。さらに、バウンス率が10%以上になってしまうと、問題解決されない限りは利用の再開ができません。
そのため、バウンス率を2%以下に維持し、推奨されている基準を満たした状態での運用が必要不可欠です。
大量送信する場合は送信クォータを引き上げる
Amazon SESの新規利用時は、デフォルト設定で「送信クォータ」の制限があります。送信クォータとは、24時間で送信できるメールの数をいいます。200通以上のメールを24時間以内に送信したいのであれば、事前にクォータ上限を上げる申請や送信実績を積む工程が必要です。そのため、急を要する場合は外部のリレーサービスを利用するのも一つです。
まとめ
AWSはクラウド上で多くのサービス提供を行っており、柔軟かつ短期間でシステムを構築できる点が魅力的です。AWSからメールを送信する方法は複数あるため、サービスについてメリットとデメリットを深く理解し、ユーザーのニーズに応じたサービスを選択しましょう。
また、メールの運用やメンテナンスなどの手間をかけずにメールを確実に届けたい場合はSMTPリレーサービス「ブラストエンジン(blastengine)」を活用しましょう。
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