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メールサーバーの障害対策|初動対応の手順・原因別の対処法・再発防止策を解説

更新日:
執筆者: 森神 佑希

「朝出社したら、問い合わせフォームの自動返信が昨夜から1通も送られていなかった」。メールサーバーの障害は、多くの場合このように気づいたときには影響が広がっている形で表面化します。

社内のメールが送受信できなくなるだけではありません。会員登録の認証メール、パスワード再設定メール、注文確認メールなど、システムから送るメールが止まれば、ユーザーはサービスそのものを使えなくなります。問い合わせ窓口には「メールが届かない」という連絡が殺到し、復旧作業と並行してその対応にも追われることになります。

さらに厄介なのが、サーバーは正常に動いているのにメールが相手に届いていない「未達型」の障害です。管理画面上はエラーもなく送信済みになっているため、発見が遅れやすく、原因の切り分けにも専門知識が必要になります。送信側の障害は、受信側に比べて対策が後回しにされがちです。

本記事では、メールサーバー障害を「止まる障害」と「届かない障害」の2つに分けて整理し、主な原因、発生時の初動対応、SMTPエラーコードを使った切り分け方、そして再発を防ぐための設計・運用のポイントまでを解説します。メールサーバーを運用するエンジニアや、システムからのメール送信に責任を持つ担当者の方は、自社の備えを点検するチェックリストとして活用してください。

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メールサーバー障害とは?「止まる障害」と「届かない障害」の2種類

メールサーバー障害とは、メールの送信・受信・中継のいずれかが正常に行えなくなる状態を指します。障害対策を考えるうえでは、「停止型」と「未達型」の2種類に分けて捉えることが出発点です。両者は症状も検知方法も対策もまったく異なります。

停止型障害:送受信そのものができなくなる

停止型障害は、メールサーバーのプロセスやハードウェアが止まり、送受信ができなくなる状態です。メールソフトで「サーバーに接続できません」と表示される、Webメールにログインできない、といった分かりやすい症状が出ます。

利用者が即座に異変に気づくため、発見は早いのが特徴です。一方で、影響範囲は社内全体や全ユーザーに及ぶことが多く、復旧までの時間がそのまま業務停止時間になります。

未達型障害:サーバーは動いているのにメールが届かない

未達型障害は、メールサーバー自体は稼働しているものの、送ったメールが相手に届かない、あるいは迷惑メールフォルダに振り分けられてしまう状態です。送信ログ上は「送信済み」でも、受信側のサーバーで拒否されていたり、キューに滞留したまま配送されていなかったりします。

送信者側からは異常が見えにくく、受信者からの「届いていない」という問い合わせで初めて発覚するケースが少なくありません。IPアドレスのブラックリスト登録や送信ドメイン認証の不備など、原因が自社サーバーの外側にあることも多く、切り分けに時間がかかります。

停止型と未達型の違い

両者の違いを整理すると、次のとおりです。

項目停止型障害未達型障害
主な症状送受信できない、接続エラー、ログイン不可送信済みなのに届かない、迷惑メール判定、遅延
発見のしやすさ利用者がすぐ気づく問い合わせで発覚することが多い
主な原因ハードウェア故障、ディスク枯渇、プロセス停止、DoS攻撃、利用サービス側の停止IPレピュテーション低下、ブラックリスト登録、認証不備、流量制限
影響が出やすい領域受信系・社内メール全般送信系・システムからの自動送信メール
有効な対策冗長化、バックアップ、死活監視送信ドメイン認証、レピュテーション管理、到達監視

受信系の障害は冗長化の仕組みが確立しており、比較的対策しやすい領域です。対して送信系、とくにシステムから大量に送るメールの未達は、サーバーを増やすだけでは解決できないという点を押さえておく必要があります。

メールサーバー障害の主な原因

障害の原因は大きく7つに分類できます。原因によって取るべき対策が異なるため、自社の構成でどれが起こり得るかを確認しておきましょう。

ハードウェア故障・ディスク容量の枯渇

オンプレミスや自社管理のサーバーで最も基本的な原因が、ハードウェアの故障です。ディスク、電源ユニット、メモリなどの部品は経年で必ず劣化します。

見落としがちなのがディスク容量の枯渇です。メールサーバーはメールボックス、キュー、ログを同じディスクに書き込む構成が多く、ログの肥大化や大量の滞留メールで容量が尽きると、新しいメールを受け付けられなくなります。ハードウェアは正常なのに停止型障害が起きる、典型的なパターンです。

アクセス集中・大量送信によるキューの滞留

キャンペーンメールの一斉送信や、セール時の注文確認メールの急増など、短時間に大量のメールを処理しようとすると、サーバーの処理能力を超えてキューに滞留が発生します。

受信側の事業者は、1つの送信元から短時間に届くメールの数に上限を設けていることが一般的です。上限を超えると一時的な受信拒否が返され、送信側のキューはさらに膨らみます。この状態では、大量送信の後ろに並んだパスワード再設定メールなど、緊急性の高いメールまで数時間単位で遅延します。

DNS設定・証明書の不備

メールの配送はDNSに強く依存しています。MXレコードの記述ミス、DNSサーバーの障害、ドメインの更新忘れなどがあると、メールは正しい宛先にたどり着けません。

SPFレコードの編集ミスも未達の原因になります。SPFはDNS参照回数が10回までという上限があり、外部サービスのincludeを追加していくうちに上限を超えると、認証結果がエラー扱いになります。また、TLS証明書の有効期限切れは、メールソフトからの接続エラーや、暗号化を必須とする相手との通信失敗を引き起こします。

サイバー攻撃とアカウント乗っ取り

DoS攻撃やメールボム攻撃で大量の通信を送りつけられると、サーバーのリソースが枯渇して停止します。ただし、近年より深刻なのはアカウントの乗っ取りによる「踏み台化」です。

推測されやすいパスワードのアカウントがブルートフォース攻撃で突破されると、自社のメールサーバーからスパムが大量送信されます。その結果、送信元IPアドレスがブラックリストに登録され、正規の業務メールまで一斉に届かなくなります。攻撃そのものが止まっても、レピュテーションの回復には時間がかかる点が厄介です。

IPレピュテーション低下とブラックリスト登録

IPレピュテーションとは、送信元IPアドレスの「信頼度」です。受信側のメールサーバーは、過去の送信量、宛先不明エラーの割合、迷惑メール報告の多さなどからこの評価を算出し、受信するかどうかを判断しています。

存在しないアドレスへの送信を繰り返す、古いリストに一斉送信して迷惑メール報告を多く受ける、といった運用を続けると評価は下がります。評価が一定以下になると、サーバーは何も壊れていないのにメールが受け取ってもらえない状態に陥ります。

IPレピュテーションとは?確認方法とメール到達率を改善する5つのポイントを徹底解説

受信側事業者の規制強化

自社の設定を何も変えていないのに、ある日から特定の宛先に届かなくなるケースもあります。原因の一つが、受信側事業者のポリシー変更です。

代表例がGoogleのメール送信者ガイドライン(2024年2月適用開始)です。すべての送信者に迷惑メール率を0.3%未満に保つことなどが求められ、個人用Gmailアカウント宛てに1日5,000通前後以上を送る送信者には、SPF・DKIM・DMARCの設定や、マーケティングメールでのワンクリック配信停止への対応も必要です。これらを満たさない送信元のメールは、迷惑メール扱いや受信拒否の対象になります。最新の要件は公式ヘルプで確認してください。

参考:Google Workspace 管理者ヘルプ「メール送信者のガイドライン」外部要因による未達型障害として、継続的に動向を追う必要があります。

メール配信サービス側の障害・セキュリティ事故

自社のサーバーに問題がなくても、利用しているクラウド型のメール配信サービスそのものが止まるケースも増えています。

2026年10月には、自治体の防災情報などの配信に使われているクラウド型メール配信サービスが不正アクセスを受けました。運営事業者は侵入経路となったサービスを緊急停止し、利用する自治体では防災メールの配信停止が相次ぎました。登録者のメールアドレスなど最大約313万件が漏えいした可能性も公表されています(2026年10月14日時点)。

出典:株式会社アルカディア「SpeeCAN RAIDENへの不正アクセスによる個人情報漏洩の可能性について」

1つの配信基盤を多数の組織で共同利用するクラウドサービスでは、事業者側で起きた障害や事故が、すべての利用者に同時に波及します。メールの送信を外部に任せる場合でも、委託先の停止は自社の障害になるという前提で、事業者のセキュリティ体制の確認と、停止時の代替手段の準備が欠かせません。

メールサーバー障害発生時の初動対応

障害が起きたときに最も重要なのは、原因究明より先に影響範囲を確定させ、関係者に共有することです。ここでは初動対応を5つのステップで整理します。

STEP 1:影響範囲と障害の種類を特定する

まず、何が・どこまで・いつから影響を受けているかを確認します。「送信と受信のどちらが止まっているか」「全宛先か、特定ドメインだけか」「社内メールか、システムからの自動送信か」を切り分けることで、停止型か未達型かの見当がつきます。

特定ドメイン宛てだけが届かない場合は、自社サーバーではなく、相手側の拒否やレピュテーションの問題である可能性が高くなります。

STEP 2:関係者と利用者へ一次報告する

影響範囲がある程度見えた段階で、社内の関係部署へ第一報を入れます。原因が判明していなくても、「何が起きているか」「現在調査中であること」「次の報告予定時刻」の3点を伝えるだけで、問い合わせの重複や現場の混乱を抑えられます。

顧客向けのサービスに影響が出ている場合は、Webサイトのお知らせやSNSで状況を告知します。メールが送れない状況でメールによる告知を予定していると連絡手段を失うため、メール以外の告知チャネルを事前に決めておくことが欠かせません。

STEP 3:サーバー・ログ・キューを確認する

次に、サーバーの状態を確認します。Postfixを使用している場合の代表的な確認コマンドは次のとおりです。

※root権限で実行します。qshapeはディストリビューションによって別途インストールが必要です。ログは/var/log/maillog(RHEL系)、/var/log/mail.log(Debian系)、またはjournalctl -u postfixで確認します。

# サービスの稼働状態を確認
systemctl status postfix

# ディスク容量を確認
df -h

# キューに滞留しているメールの一覧を表示
postqueue -p

# 宛先ドメイン別に滞留状況を集計
qshape deferred

# 直近のエラーをログから抽出(ログのパスはOSにより異なる)
grep -E "status=(deferred|bounced)" /var/log/maillog | tail -n 50

キューが特定のドメインに偏って滞留していれば、そのドメインからの流量制限や拒否が疑われます。ログに記録されたSMTPエラーコードは、次の章で解説する切り分けに直結する重要な手がかりです。

STEP 4:原因に応じた復旧作業を行う

原因が特定できたら復旧に移ります。ディスク枯渇であれば不要なログの退避、プロセス停止であれば再起動、乗っ取りであれば該当アカウントの停止とパスワード変更に加え、キューに残ったスパムメールの削除が優先です(正規メールを誤って消さないよう、送信者で絞り込んで削除します)。

注意したいのは、滞留したキューの扱いです。原因を取り除かないまま一斉に再送すると、受信側からの拒否がさらに強まります。また、キューを削除すると該当メールは失われるため、再送が必要なメール(注文確認など)を把握してから判断します。なお、Postfixはデフォルト設定では送信できないメールを最大5日間キューに保持し、その後に送信者へエラーを返します。

STEP 5:記録を残し、再発防止策を決める

復旧後は、発生日時、検知のきっかけ、影響範囲、原因、対応内容、復旧時刻を時系列で記録します。とくに「検知までにどれだけ時間がかかったか」は、監視体制を見直すうえで最も重要な指標です。

記録をもとに、同じ原因で再び障害が起きないための対策を決め、担当者と期限を設定します。手順書の更新もこのタイミングで行います。

SMTPエラーコードから見る原因の切り分け

未達型障害の調査で最も役立つのが、受信側サーバーから返されるSMTPエラーコードです。先頭の数字が「4」なら一時的なエラー、「5」なら恒久的なエラーを意味し、この違いによって取るべき対応が変わります。

主なエラーコードと対処法

コード主な意味想定される原因対処の方向性
421サービス一時利用不可相手側の負荷、送信元への流量制限間隔を空けて再送し、送信速度を落とす
450メールボックス一時利用不可グレイリスティング、相手側の一時的な制限自動再送に任せ、継続する場合は調査
451処理中の一時エラー相手側の内部エラー、DNS参照の失敗再送しつつ、自社のDNS設定も確認
452容量不足(一時)相手側サーバーやメールボックスの容量不足時間を空けて再送
550宛先不存在・ポリシーによる拒否アドレスの誤り、認証失敗、ブラックリスト拡張コードで原因を特定し、再送しない
552サイズ・容量超過添付ファイルが大きすぎる、相手のボックスが満杯メールサイズを見直す
554トランザクション失敗スパム判定、ブラックリスト登録送信元IP・ドメインの評価を確認

エラーコードの後ろに続く「5.1.1」のような拡張ステータスコードも確認しましょう。たとえば「5.1.1」は宛先アドレスが存在しないこと、「5.7.x」系は認証やポリシーによる拒否を示します。Gmailでは、送信ドメイン認証に失敗したメールに「550 5.7.26」を返すことがあります。

【メールエラーメッセージとエラーコード一覧】エラーの原因と対策がわかる!

4xx系は「待つ」か「流量を落とす」

4xx系のエラーは一時的なもので、一定時間後に再送すれば届く可能性があります。メールサーバーは通常、自動で再送を繰り返すため、単発であれば静観で構いません。

ただし、特定のドメインから421や450が継続的に返ってくる場合は、送信元が流量制限を受けているサインです。再送間隔を短くして送り続けると評価がさらに下がるため、送信速度を落とし、送信量やリストの品質を見直す必要があります。

5xx系は「原因を直してから」が原則

5xx系のエラーは恒久的な拒否です。受信側の実装によっては一時的な要因で5xxが返ることもありますが、原因を確認しないまま同じ条件で再送を繰り返すのは避けます。拒否されるメールを送り続けると、送信元の評価を下げてしまうためです。

宛先不存在(5.1.1)のアドレスは配信リストから除外し、認証関連(5.7.x)のエラーであればSPF・DKIM・DMARCの設定を確認します。ブラックリスト登録が原因であれば、各リストの解除申請手続きを行うとともに、登録に至った原因を取り除くことが先決です。

メールサーバー障害を未然に防ぐ対策

ここからは、障害の発生そのものを減らし、起きたときの影響を最小化するための対策を解説します。冗長化だけでなく、送信系の未達まで含めて備えることがポイントです。

冗長化とバックアップを組み合わせる

停止型障害への基本的な備えは、冗長化とバックアップです。受信側は、DNSのMXレコードに優先度を付けて複数のサーバーを登録しておけば、プライマリが応答しないときに送信元が自動的にセカンダリへ配送を試みます。なお、セカンダリMXにもプライマリと同等のスパム対策と宛先の存在チェックを設定しておかないと、スパムの抜け道になる点に注意が必要です。

ただし、冗長化は「止めない」ための仕組みであり、誤削除やデータ破損からは守れません。メールボックスのバックアップは別途取得し、実際に復元できるかを定期的にテストすることまでが対策です。冗長構成の詳しい設計は、以下の記事で解説しています。

メールサーバーの冗長化とは?仕組み・構成・メリット・デメリットを徹底解説

監視項目を「死活」から「到達」まで広げる

多くの現場では、サーバーが応答するかどうかの死活監視は行われています。しかし、それだけでは未達型障害は検知できません。監視対象を次のように広げると、障害の兆候を早期に捉えられます。

  • 死活監視:SMTP・IMAP・POPのポートが応答するか
  • リソース監視:ディスク使用率、CPU、メモリ、キューの滞留件数
  • 到達監視:主要な宛先ドメインへのテスト送信が届くか、バウンス率の推移
  • 評価監視:送信元IPのブラックリスト掲載状況、Google Postmaster Toolsでの迷惑メール率
  • 期限監視:ドメイン、TLS証明書の有効期限

特にキューの滞留件数とバウンス率は、未達型障害の早期警報として機能します。平常時の値を把握し、急増した際にアラートが出る閾値を設定しておきましょう。

送信ドメイン認証を正しく運用する

SPF・DKIM・DMARCは、なりすまし対策であると同時に、受信側に「正規の送信者」と認識してもらうための前提条件です。未設定や設定ミスは、それだけで迷惑メール判定や受信拒否の原因になります。

設定して終わりではなく、新しい外部サービスからメールを送り始めるたびにSPFレコードを更新する必要があります。DMARCのレポートを定期的に確認すれば、自社ドメインを名乗る送信元の中に設定漏れや不審な送信がないかを把握できます。逆引きDNS(PTRレコード)の設定も忘れずに確認してください。

送信ドメイン認証とは?SPF・DKIM・DMARCの仕組みと設定方法を解説

業務メールとシステムメールの送信経路を分ける

見落とされがちですが効果が大きいのが、送信経路の分離です。社員が使う業務メールと、システムから自動送信する通知メール、さらにマーケティング目的の一斉配信が同じサーバー・同じIPアドレスを共有していると、どれか一つの問題が全体に波及します。

たとえば、一斉配信で迷惑メール報告が増えてIPの評価が下がると、同じIPから送るパスワード再設定メールまで届きにくくなります。用途ごとに送信経路を分けておけば、影響範囲を限定できます。

アプリケーション側にリトライとタイムアウトを実装する

システムからメールを送る場合、メールサーバーに接続できないときの挙動をアプリケーション側で設計しておく必要があります。接続のタイムアウトが長すぎると、メール送信を待つ間に画面の処理全体が止まり、メールサーバーの障害がWebサービス全体の障害に連鎖します。

メール送信は非同期のジョブとして切り出し、失敗時は間隔を少しずつ延ばしながら再試行する設計にすると、一時的な障害を自動で吸収できます。再試行の上限に達したメールは記録を残し、後から再送できるようにしておきます。また、タイムアウト時は実際には送信済みの可能性があるため、同じメールを二重に送らない仕組み(送信IDによる重複チェックなど)もあわせて設計します。

障害対応手順書と連絡体制を整備する

最後に、人と手順の備えです。障害時の確認コマンド、エスカレーション先、顧客向けの告知文テンプレート、メール以外の連絡手段を手順書にまとめておくと、担当者が不在でも初動が遅れません。

外部のメール配信サービスを利用している場合は、サービスが停止したときの代替手段(Webサイトでの告知、SNS、別の配信経路への切り替え手順など)も手順書に含めます。サービスの選定時には、接続元IPの制限や通信の暗号化、管理画面へのアクセス管理など、事業者と利用者の双方でどのようなセキュリティ対策を取れるかを確認しておきましょう。

手順書は作るだけでは機能しないため、年に1回程度は訓練として実際に手順をなぞり、古くなった記述を更新します。

メールサーバーを自社運用する場合の注意点

ここまでの対策をすべて自社で実施しようとすると、相応の工数がかかります。とくに送信系の運用には、自社運用ならではの落とし穴があります。

送信系の冗長化は「台数を増やす」だけでは成立しない

受信系はMXレコードで比較的シンプルに冗長化できますが、送信系は事情が異なります。障害時に予備の送信サーバーへ切り替えると、送信元のIPアドレスが変わります。新しいIPには送信実績がないため評価が低く、切り替えた途端に大量のメールが迷惑メール判定される事態が起こり得ます。

予備のIPにも普段から一定量の送信を流して評価を育てておく必要があり、認証設定もすべてのサーバーで整合性を保たなければなりません。クラウド環境では、宛先ポート25への外部送信が初期状態で制限されていることも多く、そもそも送信サーバーを立てる段階で制約があります。

障害の影響を試算しておく

対策にどこまで投資するかを判断するには、障害時の影響を数字で把握しておくことが有効です。仮に、新規会員登録が1日1,000件あり、登録完了にメール認証が必要なサービスで、送信系の障害が6時間続いたとします。

1日の登録が均等に発生すると仮定すると、6時間で約250件の登録手続きが認証メール待ちで止まる計算です。そのうち一定数は、メールが届かないことを理由に登録自体をあきらめてしまいます。さらに問い合わせ対応の工数も加わります。こうした機会損失と、冗長化や監視にかかるコストを比較することで、自社に必要な対策のレベルが見えてきます。

運用ノウハウが属人化しやすい

ブラックリストの解除申請、受信事業者ごとの流量制限への対応、バウンス処理の設計など、送信系の運用には専門的なノウハウが必要です。これらが特定の担当者に集中していると、その人が不在のときに障害が起きた場合、復旧が大幅に遅れます。

自社で運用を続けるのであれば手順の文書化と複数人での対応体制が欠かせません。運用負荷が見合わない場合は、送信系だけを外部のメール配信サービスに切り出すという選択肢も検討に値します。

メールサーバーの障害対策ならメール配信システムを活用する

メールサーバーの障害対策のうち、受信系は冗長化やクラウドメールの利用で対策しやすい一方、送信系はIPレピュテーションや認証設定、流量制御など専門的な運用が求められます。システムからのメール送信を安定させる手段として有効なのが、メール配信システムの活用です。

メール配信システムを使うメリット

メール配信システムを利用すると、送信サーバーの構築・監視・評価管理を専門事業者に任せられます。自社で送信系の障害対策を一から整備する負担を大きく減らせる点が最大の利点です。

  • 送信サーバーの運用負荷を削減:サーバーの監視やIPレピュテーションの管理を事業者側が担う
  • 未達型障害のリスクを低減:受信事業者ごとの送信制御や認証対応のノウハウを活用できる
  • 大量送信時の遅延を抑制:高速な配信基盤により、アクセス集中時もキューの滞留を起こしにくい

送信経路を外部サービスに切り出すことは、本記事で解説した「業務メールとシステムメールの送信経路を分ける」対策の実践にもなります。代表的なサービスを2つ紹介します。

おすすめのメール配信システム「blastengine」

ブラストエンジン

ブラストエンジン(blastengine)は、お客様のシステムとSMTPリレーやAPIで連携することで、一斉配信やトランザクションメールを簡単に行えるメール配信サービスです。送信サーバーの運用・メンテナンスはブラストエンジン側で行うため、自社でメールサーバーの障害対策や評価管理を抱え込む必要がありません。

  • 99%以上の高いメール到達率:国内キャリア・ISPへの個別送信ロジックで、未達型障害の原因となる受信拒否を抑える
  • API連携・SMTPリレー:既存システムの送信設定をSMTPリレーまたはAPIに変更し、SPF/DKIMなどのDNS設定を行うことで導入でき、送信経路の分離を実現
  • IPレピュテーション管理:ブラストエンジン側で運用・管理し、送信者評価の維持に努める
  • SPF/DKIM/DMARC対応:送信ドメイン認証に標準対応し、認証不備による受信拒否を回避
  • IPアドレス制限・SMTP認証:接続元や認証で利用を制限し、送信基盤の不正利用リスクを抑える

1時間あたり1,500万通の高速配信に対応しており、大量送信時でもパスワード再設定などの重要なメールを滞留させにくい配信基盤です。初期費用無料、月額3,000円(税抜)から利用でき、メールアドレスの入力のみで無料トライアルが可能です。

ブラストエンジン公式サイト:https://blastengine.jp/

おすすめのメール配信システム「ブラストメール」

ブラストメール

ブラストメールは、16年連続で導入社数シェアNo.1を獲得しているメール配信システムで、導入実績は30,000社以上にのぼります。メルマガやお知らせメールの一斉配信を、専門知識がなくてもシンプルな操作で行えます。

  • 迷惑メール判定対策:SPF/DKIMに対応し、一斉配信でも迷惑メール判定を受けにくい
  • Gmailガイドライン対応:Gmailの送信者ガイドラインに沿った配信が可能
  • 効果測定:開封率・クリック率・エラーカウントを確認でき、配信リストの品質管理に活用できる
  • 登録解除フォーム作成:配信停止の導線を用意でき、迷惑メール報告の抑制につながる

マーケティング目的の一斉配信を業務メールのサーバーから切り離せば、一斉配信が原因で業務メールが届かなくなるリスクも避けられます。月額4,000円(税抜)から利用でき、無料お試しも用意されています。

公式サイト:シェア1位のメール配信システム「ブラストメール」

まとめ

メールサーバーの障害には、送受信が止まる「停止型」と、サーバーは動いているのにメールが届かない「未達型」の2種類があります。停止型には冗長化・バックアップ・死活監視で、未達型には送信ドメイン認証・レピュテーション管理・到達監視で備えるのが基本です。

障害が起きた際は、原因究明より先に影響範囲を特定して関係者に共有し、SMTPエラーコードを手がかりに4xx系と5xx系で対応を分けます。滞留したキューを原因を取り除かないまま再送しないことも重要です。

次のアクションとして、まずは自社の監視項目に「キューの滞留件数」「バウンス率」「ブラックリスト掲載状況」が含まれているかを確認してください。あわせて、業務メール・システムメール・一斉配信が同じ送信経路を共有していないかを点検し、必要に応じて送信系をメール配信サービスへ切り出すことを検討しましょう。

FAQ

メールサーバーの障害はどのように確認すればよいですか?
A:まずサーバーの稼働状態、ディスク容量、キューの滞留件数を確認します。Postfixであれば「systemctl status postfix」「df -h」「postqueue -p」などのコマンドで状況を把握できます。特定のドメイン宛てだけが届かない場合は、ログに記録されたSMTPエラーコードを確認し、相手側の拒否や流量制限が起きていないかを調べます。
メールが送信済みなのに届かないのはなぜですか?
A:送信元IPアドレスの評価低下やブラックリスト登録、SPF・DKIM・DMARCの設定不備、受信側の流量制限などが考えられます。サーバーは正常に動いているため気づきにくく、受信者からの問い合わせで発覚することが多い障害です。バウンスメールのエラーコードと、ブラックリストの掲載状況を確認してください。
キューに滞留したメールはすぐに再送してもよいですか?
A:原因を取り除く前の一斉再送は避けてください。流量制限やスパム判定が原因の場合、再送によって受信側からの拒否がさらに強まります。原因を特定・解消したうえで、送信速度を抑えながら再送するのが安全です。キューを削除するとメールは失われるため、再送が必要なメールを把握してから判断します。
メールサーバーの冗長化だけで障害対策は十分ですか?
A:冗長化は停止型の障害には有効ですが、IPアドレスの評価低下や認証不備による未達型の障害は防げません。また、誤削除などのデータ消失にはバックアップが別途必要です。冗長化に加えて、送信ドメイン認証の運用や到達状況の監視を組み合わせることで、障害対策が成立します。
送信用のメールサーバーを外部サービスに任せるメリットは何ですか?
A:送信サーバーの監視、IPアドレスの評価管理、受信事業者ごとの送信制御といった専門的な運用を事業者に任せられる点です。業務メールとシステムメールの送信経路を分けることにもなり、一方の問題がもう一方に波及するリスクを抑えられます。

森神 佑希
この記事の執筆者

株式会社ラクスライトクラウド Webマーケティングリーダー
森神 佑希

顧客導入社数シェアNo.1のメール配信システム「blastmail」・「blastengine」のWebマーケティング担当。2年以上メルマガ配信の実務を行っており、先頭に立ってPDCAを回してきた。メルマガのノウハウは日本最高クラスと言っても過言ではない。

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