メールサーバーのランサムウェア対策|侵入経路と被害を広げない運用設計を解説

ある朝、社員から「メールが送れない」「受信トレイが開けない」と連絡が入る。調べてみると、メールサーバーのファイルが暗号化され、身代金を要求する脅迫文が残されていた。これは決して大企業だけの話ではありません。
警察庁の統計では、2025年に報告されたランサムウェア被害は226件。そのうち約6割を中小企業が占めています。2026年10月には、クラウド基盤やメール配信サービスが攻撃を受けて停止する事例も相次ぎました。メールは取引先との連絡、受注確認、パスワード再設定、請求書送付など、あらゆる業務の起点です。メールサーバーが止まると、事業そのものが止まります。
一方で、ランサムウェア対策は「怪しい添付ファイルを開かない」ことだと捉えられがちですが、実際には、メールサーバーはランサムウェアの「入口」になるだけでなく、サーバー自体の脆弱性を突かれる「標的」にもなり、窃取した認証情報を使った「足がかり」にもなります。
本記事では、警察庁・IPAの公表データ(2026年10月時点)をもとに、メールサーバーがランサムウェアに狙われる経路を3つに整理し、経路ごとの具体的な対策、被害を広げないための送信基盤の分離、感染が疑われるときの初動対応までを解説します。メールサーバーを管理する情報システム担当者やエンジニアが、明日から見直せるチェックリストとしてご活用ください。

ランサムウェアとは?メールサーバーが狙われる背景
ランサムウェアとは、サーバーやパソコン内のデータを暗号化して使えない状態にし、復旧と引き換えに金銭(身代金)を要求するマルウェアです。近年は暗号化だけでなく、事前にデータを盗み出して「支払わなければ公開する」と脅す手口が主流になっています。
ランサムウェアの手口は「暗号化」から「窃取+脅迫」へ
現在のランサムウェア攻撃で多いのは、データを盗んだうえで暗号化し、二重に脅迫する「二重恐喝(ダブルエクストーション)」です。さらに、暗号化をせずにデータを窃取して金銭を要求する「ノーウェアランサム」と呼ばれる手口も確認されています。
また、攻撃ツールをサービスとして提供する「RaaS(Ransomware as a Service)」の普及により、高度な技術を持たない攻撃者でも攻撃を実行できるようになりました。攻撃の担い手が増えたことで、規模や業種を問わず狙われる時代になっています。
2025年の国内被害状況
警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、2025年のランサムウェア被害の報告件数は226件で、高水準が続いています。主なデータは以下のとおりです。
- 被害件数:226件(前年比4件増)
- 中小企業の割合:約63%(143件)
- 業種別:製造業が約40%(91件)で最多、次いで卸売・小売業が約15%(34件)
- 復旧期間(アンケート回答107件):「1週間〜1か月未満」が約29%で最多。2か月以上かかった例も
- 調査・復旧費用(アンケート回答89件):「1,000万円以上5,000万円未満」が約36%で最多。1億円以上も約6%
出典:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
さらに、2026年9月に公表された令和8年上半期の資料では、被害報告は123件と、半期として過去最多を更新しています。このうち79件が中小企業でした。
出典:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
また、IPAが2026年1月に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織編)でも、「ランサム攻撃による被害」が1位となりました。2023年以降、4年連続で1位を維持しています。
メール配信システムやクラウド基盤の停止も相次いでいる
ランサムウェアの影響は、自社のサーバーだけにとどまりません。2026年10月には、国内のクラウド基盤サービスがランサムウェア攻撃を受けて障害が発生し、事業者は影響範囲を契約中の495の企業・自治体と公表しました(2026年10月14日時点で対応継続中)。その基盤上で動いていたメール配信の仕組みも止まり、会員向けメールやメルマガの配信が一部できなくなった企業が出ています。配信用のデータに含まれていたメールアドレスについて、漏えいの可能性を公表した企業もあります。
出典:IDCフロンティア「【第2報】当社サービスの一部システムに対する不正アクセスについて」
同じ月には、自治体などが利用する登録制の一斉配信サービスでも、第三者による不正アクセスが公表され、侵入経路となった一部のサービスが緊急停止しました(原因がランサムウェアかどうかは公表されていません)。利用している自治体では、住民への情報発信に影響が出ています。ランサムウェアに限らず、外部からの攻撃でメール配信が止まり得ることを示す事例です。
出典:アルカディア「SpeeCAN RAIDENへの不正アクセスによる個人情報漏洩の可能性について」
一方で、メルマガと注文関連のメールを別々の仕組みで送っていたため、メルマガは止まったものの注文・発送メールには影響がなかったと公表した企業や、別のデータセンターにメール配信環境を構築し直し、約2日後に配信を再開した事業者もありました。メールの用途ごとに仕組みが分かれていたか、別の環境へ切り替えられる備えがあったかが、影響の範囲を分けた一因と考えられます。
出典:株式会社ジュン「当社業務委託先が利用するクラウド基盤におけるシステム障害について」
自社のメールサーバーを守るだけでなく、メールを送る仕組み全体が止まり得る前提で備えることが、これからのランサムウェア対策には欠かせません。
メールサーバーは「入口」「標的」「足がかり」の3役を担ってしまう
メールサーバーが特に危険なのは、攻撃の流れの中で複数の役割を担ってしまう点です。
1つ目は、不審メールを通じてマルウェアが社内に入り込む「入口」。2つ目は、インターネットに公開されたサーバー自体の脆弱性を突かれる「標的」。3つ目は、メールアカウントの認証情報が盗まれ、VPNや他システムへの侵入に使われる「足がかり」です。
つまり、受信フィルタだけを強化しても、メールサーバーのランサムウェア対策としては不十分です。3つの経路それぞれに対策を打つことが、被害を防ぐ前提になります。
メールサーバーがランサムウェアに狙われる3つの経路
ここでは、メールサーバーに関わるランサムウェアの侵入経路を3つに分けて整理します。経路によって、必要な対策がまったく異なるためです。
メール経由の感染(添付ファイル・URL)
最もイメージしやすいのが、メールに添付されたファイルや本文中のURLを経由した感染です。請求書、配送通知、取引先からの連絡などを装い、Office文書やPDF、圧縮ファイルを開かせたり、偽サイトへ誘導したりします。
ただし、警察庁の2025年データでは、被害組織へのアンケート(有効回答92件)のうち、侵入経路が「不審メールやその添付ファイル」だったのは2件(約2%)にとどまっています。これは「メール経由の脅威が小さい」という意味ではありません。メールで配られたマルウェアが認証情報を盗み、それが後のVPN侵入などに使われる可能性もあるため、統計上の「最初の経路」とは別の形でメールが攻撃の連鎖に関わっていると捉えるのが実務的です。
メールサーバー自体の脆弱性を突く攻撃
オンプレミスで運用するメールサーバーは、Webメールや外部接続のためにインターネットへ公開されていることが多く、脆弱性が見つかると真っ先に狙われます。
代表例が、Microsoft Exchange Serverの脆弱性です。2021年に公表された「ProxyLogon」「ProxyShell」と呼ばれる一連の脆弱性は、認証を回避してサーバー上で任意のコードを実行できるもので、パッチ未適用のサーバーが世界中で攻撃を受けました。これらの脆弱性を足がかりにランサムウェアが展開された事例も、セキュリティベンダー各社から報告されています。
ポイントは、修正パッチが公開されていても、適用されていないサーバーが大量に残ったことです。メールサーバーは「止めると業務に影響が出る」という理由で更新が後回しにされやすく、その隙を突かれます。
認証情報の窃取とVPN・RDP経由の侵入
警察庁の2025年データでは、被害組織へのアンケート(有効回答92件)で、侵入経路は「VPN機器」が61件(約66%)、「リモートデスクトップ(RDP)」が19件(約21%)と、合わせて9割近くを占めます。一見メールサーバーとは無関係に見えますが、Active Directoryやシングルサインオンで連携している環境では、メールアカウントの認証情報がそのままVPNや社内システムのログインにも使えます。
フィッシングメールで盗まれたメールアカウントの認証情報が、そのままVPNへのログインに使われる。侵入後は社内を横移動し、メールサーバーやファイルサーバー、バックアップまで暗号化される。メールアカウントの認証情報は、社内ネットワーク全体の鍵になり得ます。
| 経路 | 主な手口 | 想定される被害 | 優先すべき対策 |
|---|---|---|---|
| メール経由の感染 | 添付ファイル、URL、なりすましメール | 端末感染、認証情報の窃取 | 受信フィルタ、送信ドメイン認証の検証、教育 |
| サーバー自体の脆弱性 | 公開サーバーの未修正脆弱性の悪用 | メールサーバーの乗っ取り・暗号化 | パッチ適用、サポート切れ製品の更新、公開範囲の最小化 |
| 認証情報の窃取 | フィッシング、パスワード使い回し、総当たり | VPN・RDPからの侵入、横展開 | 多要素認証、パスワード分離、ログイン監視 |
メールサーバーがランサムウェアに感染すると何が起こるか
メールサーバーの被害は、ファイルサーバーやPCの被害とは異なる広がり方をします。社外とのやり取りが止まるため、影響が自社の外にまで及ぶ点が特徴です。
受信も送信も止まり、顧客対応が麻痺する
メールサーバーが暗号化・停止すると、問い合わせメールが受け取れず、見積もりや請求書も送れなくなります。さらに見落とされやすいのが、システムから自動送信されるメールです。
ECサイトの注文確認、会員登録の認証メール、パスワード再設定、予約リマインドなどのメールが同じサーバーから送られている場合、サービスの利用そのものが止まります。顧客は「メールが届かない」という形で異常に気づくため、問い合わせが急増し、サポート窓口も逼迫します。
メールボックス内の情報が窃取され、二重恐喝に使われる
メールボックスには、契約書、見積書、顧客の連絡先、社内の機密情報など、価値の高いデータが蓄積されています。攻撃者にとっては格好の窃取対象であり、「公開されたくなければ支払え」という脅迫材料になります。
ランサムウェアのように不正の目的による漏えい等のおそれがある場合、個人情報保護法に基づき、個人情報保護委員会への報告(速報は概ね3〜5日以内)と本人への通知が義務となります。技術的な復旧だけでなく、法務・広報の対応も同時に発生します。
乗っ取られたサーバーからの不正送信で、ドメインの信用が傷つく
攻撃者に制御を奪われたメールサーバーは、自社ドメイン名義のフィッシングメールやスパムの送信に悪用される可能性もあります。取引先に不審メールが届けば信用問題になるうえ、送信元IPアドレスがブラックリストに登録されると、復旧後も正規のメールが迷惑メール扱いされるおそれがあります。
暗号化からの復旧に目が向きがちですが、メールの到達率という「見えない資産」が損なわれるリスクも考慮に入れておく必要があります。
停止期間の影響を試算する
被害の大きさを社内で共有するには、停止期間の影響を数字で示すのが有効です。以下は、システム通知メールを1日1万通送っている企業を想定した試算例です。
- 1日停止:約1万通の通知メールが届かず、注文確認や認証メールの不達で問い合わせが増える
- 1週間停止:約7万通が届かず、会員登録・購入の離脱や取引先への連絡遅延が発生する
- 1か月停止:約30万通が届かず、売上機会の損失や解約・信用低下が顕在化する
警察庁のデータで最も多い復旧期間は「1週間〜1か月未満」です。メールが1か月止まる前提で業務を設計しているか、一度点検しておくことをおすすめします。
メールサーバーのランサムウェア対策【侵入させない】
ここからは具体的な対策です。まずは侵入を防ぐ対策を、3つの経路に沿って解説します。
パッチ適用とサポート切れ製品の棚卸し
最優先は、メールサーバーのOS・ミドルウェア・メールソフトを最新の状態に保つことです。脆弱性情報はベンダーやJPCERT/CCから公開されるため、公開から適用までの目標日数を社内で決めておくと、後回しを防げます。
特に注意したいのが、サポートが終了した製品です。Microsoftは、Exchange Server 2016と2019のサポートを2025年10月14日に終了しました。サポート終了後はセキュリティ更新プログラムが提供されないため、新たな脆弱性が見つかっても修正されない状態になります。
オンプレミスで運用を続ける場合は後継のExchange Server Subscription Edition(SE)への移行、あるいはクラウド型メールサービスへの移行を検討する必要があります。自社でどのバージョンが稼働しているか、まずは棚卸しから始めてください。
Webメール・管理画面の外部公開を最小限にする
ProxyLogonやProxyShellのように、インターネットに公開された機能が攻撃の入口になるケースは少なくありません。Webメールや管理画面、リモート管理用のポートが不要に公開されていないかを確認します。
- 管理画面へのアクセスは社内ネットワークや特定IPアドレスに限定する
- 使っていないプロトコルやポートは無効化する
- 外部からの接続は、事前認証付きのリバースプロキシやゼロトラスト型のアクセス制御を経由させる。VPNを使う場合は、VPN機器自体のパッチ適用と多要素認証が前提
「公開しているもの=攻撃される可能性があるもの」という前提で、公開範囲を定期的に見直すことが重要です。
多要素認証とパスワードの分離
メールアカウントの認証情報が盗まれても侵入されないよう、多要素認証(MFA)を導入します。特に、管理者アカウント、Webメール、VPNは最優先です。
あわせて、POP・IMAP・SMTP AUTHなどの基本認証(レガシー認証)を無効化します。基本認証が残っていると、多要素認証を設定してもIDとパスワードだけでログインできてしまうためです。
システムからSMTP認証で送信する場合は、専用のアカウントを用意し、接続元IPアドレスを制限します。認証情報の保管場所と利用範囲も確認しておきます。連携していないシステム間ではパスワードを使い回さないこと、推測されやすいパスワードを禁止することも欠かせません。
受信メールの多層フィルタリング
メール経由の感染を防ぐには、ウイルス対策、スパム対策、URLの安全性チェック、添付ファイルの無害化(サンドボックスなど)を組み合わせた多層防御が有効です。
受信時に送信元のSPF・DKIM・DMARCの検証結果を確認し、なりすましの疑いがあるメールに警告を付ける設定も効果があります。完全に防ぐことは難しいため、怪しいメールを開いてしまった後に報告できる体制もセットで整えておきます。
送信ドメイン認証で自社ドメインのなりすましを防ぐ
自社ドメインを名乗ったなりすましメールで取引先が感染すれば、サプライチェーン全体のリスクになります。SPF・DKIM・DMARCを設定し、DMARCのポリシーを段階的に強化することで、自社ドメインの悪用を防げます。
強化の順序には注意が必要です。まずp=noneでDMARCレポート(rua)を受け取り、外部の配信サービスや基幹システムを含むすべての正規の送信元が、SPFまたはDKIMで認証・アライメントされていることを確認します。そのうえで、quarantine、rejectへと段階的に引き上げます。確認を飛ばして強化すると、自社の正規メールまで届かなくなるおそれがあります。
DMARCレポートを確認すれば、自社が把握していない送信元から自社ドメイン名義のメールが送られていないかも分かります。DMARCは「なりすまし対策」と「不審な送信の検知」を兼ねる仕組みです。ただし、自社ドメインに似せた別ドメインによるなりすましは防げません。
メールサーバーのランサムウェア対策【被害を広げない・早く戻す】
どれだけ対策しても、侵入のリスクをゼロにはできません。侵入された前提で、被害を広げず、早く復旧するための設計も必要です。
社内メールとシステム通知メールの送信基盤を分ける
見落とされがちなのが、送信経路の分離です。社員が使う業務メールと、Webサービスや基幹システムから送る通知メールが同じメールサーバーを経由している場合、そのサーバーが止まった瞬間にすべてのメールが止まります。
システム通知メールの送信を外部のメール配信サービス(SMTPリレーやAPI)に切り出しておけば、社内のメールサーバーが被害を受けても、注文確認やパスワード再設定といった顧客向けの通知は送り続けられる構成にできます。1台のサーバーに全メールを集中させないことが、被害の範囲を限定するうえで効果的です。
ただし、通知メールを送るアプリケーションサーバー自体が被害を受けた場合は送信できません。SMTPリレーの認証情報やAPIキーは社内サーバーとは別に管理し、接続元IPアドレスを制限しておくことが前提です。外部サービスを選ぶ際は、委託先としてのセキュリティ体制に加え、どの基盤で運用され、バックアップをどこに保管しているかも確認します。
また、前述の事例のように、外部のメール配信サービスも障害や攻撃で停止する可能性はあります。外部に切り出す場合も、重要な通知メールについては停止時に切り替えられる代替の送信経路を用意し、配信リストを自社でもバックアップしておくと安心です。1つのサービスに依存しきらないことも、送信経路を分ける目的の一つです。
自社でSMTPサーバーを運用する台数が減れば、パッチ適用や監視の対象も減ります。守るべき範囲を小さくすることも、ランサムウェア対策として有効です。
バックアップは「3-2-1-1-0」で設計する
ランサムウェアはバックアップも狙います。バックアップがネットワーク上から常に書き換え可能な状態だと、本番データと一緒に暗号化されてしまいます。
- 3つのコピーを持つ
- 2種類の異なる媒体に保存する
- 1つは別の場所(オフサイト)に保管する
- 1つはオフライン、または書き換え不可(イミュータブル)にする
- 0エラーで復元できることを定期的に検証する
メールデータは容量が大きく、復元に時間がかかる傾向があります。「どのメールボックスから、何時間で戻せるか」を実際に復元テストして確認しておくことが重要です。
クラウドサービスを利用している場合も、事業者側のバックアップに頼りきらないことが大切です。基盤ごと被害を受けると、同じ基盤上に置いたバックアップも使えなくなるおそれがあるためです。
ログ監視と異常送信の検知
侵入の兆候は、ログに表れることが多くあります。海外からの不審なログイン、短時間での大量のログイン失敗、深夜の大量送信、普段使わない転送ルールの追加などは要注意です。
メールサーバーのログ、認証ログ、送信ログを一元的に確認できる状態にし、異常を検知したら通知されるようにしておきます。送信ログを保管しておくことは、事後のフォレンジック調査でも欠かせません。
メールが止まった場合のBCPを決めておく
メールサーバーが止まったときに、誰が、どの手段で、誰に連絡するのかを事前に決めておきます。被害を受けたメールサーバーとは別の基盤で使える代替のメールアドレス、電話・チャットでの連絡網、Webサイトでの告知手順などを整理し、年に1回は訓練で確認するのが理想です。
ここまでの対策を優先度順にまとめると、次のとおりです。
- 優先度・高:パッチ適用とサポート切れ製品の更新、管理者・Webメール・VPNへの多要素認証、外部公開範囲の最小化
- 優先度・中:送信基盤の分離、3-2-1-1-0のバックアップ、受信フィルタの多層化、SPF・DKIM・DMARCの設定
- 継続的に実施:ログ監視と異常検知、メール停止を想定した訓練
ランサムウェア感染が疑われるときの初動対応
感染が疑われる場合は、初動の速さが被害の大きさを左右します。以下の流れを事前に共有しておきます。
STEP 1:ネットワークから切り離す
感染が疑われるメールサーバーや端末を、ネットワークから隔離します。物理サーバーはLANケーブルを抜き、仮想サーバーやクラウド上のサーバーは仮想NICの切断やセキュリティグループで通信を遮断します。電源は切らないのが原則です。メモリ上の情報やログなど、調査に必要な証拠が失われるおそれがあるためです。
STEP 2:ログと証拠を保全する
メールサーバーのログ、認証ログ、ファイアウォールやVPNのログ、脅迫文の画面などを保全します。侵入経路の特定や、どのメールが窃取された可能性があるかの判断に使います。
STEP 3:社内体制を立ち上げ、関係機関へ相談する
情報システム、法務、広報、経営層で対応チームを立ち上げ、指揮系統を明確にします。あわせて、都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口、IPA、JPCERT/CCなどへ相談・報告します。個人情報の漏えい等のおそれがある場合は、個人情報保護委員会への報告も必要です。身代金の支払いは、データが戻る保証がなく、犯罪組織の資金源にもなるため推奨されていません。
STEP 4:代替の連絡手段で顧客・取引先へ周知する
メールが使えない状態でも、Webサイトでの告知、電話、別系統のメール送信基盤などで顧客・取引先に状況を伝えます。自社ドメイン名義の不審メールに注意するよう呼びかけることも重要です。
STEP 5:復旧と再発防止策を実施する
フォレンジック調査で侵入経路を特定し、クリーンなバックアップから復旧します。ユーザーのパスワードに加え、DKIM署名鍵、SMTPリレーやAPIの認証情報、サーバー証明書の鍵も更新し、侵入経路となった脆弱性や設定不備を修正したうえで再稼働します。復旧後は、送信IPアドレスがブラックリストに登録されていないかも確認しておきます。
メールサーバーの運用形態別に見るランサムウェアリスク
メールサーバーを自社で持ち続けるか、外部サービスを活用するかによって、対策の負担は大きく変わります。運用形態ごとの特徴を整理します。
| 運用形態 | ランサムウェア対策の負担 | 主なリスク | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| オンプレミスで自社運用 | 大きい(パッチ・監視・バックアップをすべて自社で実施) | 脆弱性の放置、サポート切れ、担当者不在 | 専任の運用体制があり、データを自社内に置く必要がある企業 |
| クラウド型メールサービス | 中程度(基盤はサービス側、アカウント管理は自社) | 認証情報の窃取、設定不備 | 社内の業務メールを効率よく運用したい企業 |
| 送信のみ外部配信サービスへ切り出し | 送信部分の運用負担を軽減できる | 送信側のAPIキー・認証情報の管理、委託先の障害・停止 | システム通知や大量配信を安定して送りたい企業 |
どの形態でも、アカウントの認証情報を守る責任は自社に残ります。外部サービスに任せる部分と自社で守る部分を切り分け、自社の守備範囲を明確にすることが、運用形態を選ぶ際の判断軸になります。
メールの送信経路を分けるならメール配信システムを活用する
メールサーバーのランサムウェア対策では、守るべきサーバーを減らし、メールの用途ごとに送信経路を分けることが有効です。特に顧客向けの通知メールや一斉配信は、外部のメール配信システムに任せることで、社内サーバーの運用負担とリスクを分散できます。
ただし、メール配信システムを導入すれば、ランサムウェアの被害を完全に防げるわけではありません。前述の事例のとおり、外部のサービスやその基盤が攻撃を受けて停止する可能性もあります。メール配信システムの活用は、被害が1か所に集中しないようにするための「リスク分散」の手段であり、ほかの対策の代わりになるものではない点に注意が必要です。
メール配信システムを使うメリット
自社でSMTPサーバーを構築・運用する場合、パッチ適用や監視、IPアドレスの評価管理まで、すべて自社で担う必要があります。メール配信システムを活用すると、次のようなメリットがあります。
- 送信サーバーの運用負担を軽減できる:送信基盤の運用・メンテナンスをサービス側に任せられる
- 送信経路を分離できる:社内メールサーバーとシステム通知メールの経路を分けておけば、どちらかに障害が起きても、もう一方への影響を抑えやすくなる
- 送信ドメイン認証に対応しやすい:SPF・DKIM・DMARCに対応した環境で、なりすまし対策を進めやすい
自社で運用するサーバーが減れば、攻撃を受け得る範囲もその分小さくなります。一方で、社内の端末やアカウント、外部サービスに接続するための認証情報(SMTP認証のパスワードやAPIキーなど)は、引き続き自社で守る必要があります。
外部サービスを選ぶ際は、どの基盤で運用され、障害時にどう復旧するのかを確認しておきましょう。重要な通知メールについては、サービスが止まった場合に備えて、代替の送信手段や連絡手段も用意しておくと安心です。。
おすすめのメール配信システム「blastengine」

ブラストエンジン(blastengine)は、既存のシステムとSMTPリレーやAPIで連携するだけで、システム通知メールや一斉配信を送れるメール配信サービスです。送信基盤の運用・メンテナンスはブラストエンジン側で行うため、自社でSMTPサーバーを抱えることなく、安定した送信環境を用意できます。
- SMTPリレー・API連携:既存システムの送信先をblastengineに切り替え、送信ドメインのDNS設定(SPF・DKIM)を行うことで、送信経路を社内メールサーバーから分離できる
- IPアドレス制限・SMTP認証:接続元と認証を制御し、不正な送信のリスクを抑える
- TLS対応:通信を暗号化し、送信中のメールを保護する
- SPF/DKIM/DMARC対応:送信ドメイン認証に対応し、なりすましを防ぎ、迷惑メールと判定されにくくする
- 配信ログ管理:配信状況を確認でき、異常時の原因調査に役立つ
社内メールサーバーと顧客向け通知メールの送信経路を分けたい企業や、自社運用のSMTPサーバーを減らして運用負担を下げたい企業に適したサービスです。初期費用は無料で、無料トライアルも用意されています。
ブラストエンジン公式サイト:https://blastengine.jp/
おすすめのメール配信システム「ブラストメール」

ブラストメール(blastmail)は、導入数シェア16年連続No.1、導入社数30,000社以上の実績を持つメール配信システムです。メルマガやお知らせメールの一斉配信を、専門知識がなくても管理画面から簡単に行えます。
- 迷惑メール判定対策(SPF/DKIM):送信ドメイン認証に対応し、なりすましと判定されにくい配信を実現
- ユーザー管理・権限設定:担当者ごとに操作権限を分け、アカウントの不正利用リスクを抑える
- 配信承認機能:配信前に承認フローを挟み、誤送信や不正な配信の防止に役立つ
- 効果測定:開封率・クリック率・エラーカウントを確認できる
顧客向けのメルマガやお知らせを社内メールサーバーから切り離し、安全かつ効率的に配信したい企業におすすめです。
公式サイト:シェア1位のメール配信システム「ブラストメール」
まとめ
メールサーバーのランサムウェア対策は、「怪しいメールを開かない」だけでは不十分です。メールサーバーは、メール経由の感染という「入口」、サーバー自体の脆弱性という「標的」、認証情報の窃取という「足がかり」の3つの役割を担ってしまうため、経路ごとに対策を講じる必要があります。
まずは次の3つから着手してください。
- 稼働中のメールサーバーのバージョンとサポート期限を棚卸しする
- 管理者アカウント・Webメール・VPNに多要素認証を設定する
- システム通知メールがどのサーバーから送られているかを確認し、送信経路の分離を検討する
あわせて、バックアップの復元テストと、メールが止まった場合の連絡手段を決めておけば、万が一のときにも被害を最小限に抑えやすくなります。
FAQ
- ランサムウェアはメールを開いただけで感染しますか?
- A:本文を表示しただけで感染するケースはまれですが、メールソフトの脆弱性を突かれ、プレビューや受信だけで被害につながった例も報告されています。また、添付ファイルを開く、本文中のURLにアクセスするといった操作で感染する可能性があります。メールソフトやOSを最新の状態に保ち、不審なメールの添付ファイルやURLは開かないことが基本です。
- クラウド型のメールサービスならランサムウェア対策は不要ですか?
- A:不要ではありません。サーバー基盤の運用はサービス側が担いますが、アカウントの認証情報が盗まれれば不正ログインやメールの窃取は起こり得ます。多要素認証の設定やパスワード管理など、利用者側の対策は引き続き必要です。
- メールサーバーのバックアップはどのくらいの頻度で取るべきですか?
- A:業務への影響や許容できるデータ損失の範囲によって異なります。重要なのは頻度だけでなく、ネットワークから切り離したコピーや書き換え不可のコピーを持ち、実際に復元できるかを定期的にテストすることです。
- ランサムウェアに感染したら身代金を支払うべきですか?
- A:支払いは推奨されていません。支払ってもデータが復旧する保証はなく、犯罪組織の資金源になるうえ、再び狙われるおそれもあります。まずは都道府県警察やIPA、JPCERT/CCなどに相談してください。
- 送信経路を分けると、なぜランサムウェア対策になるのですか?
- A:社内メールサーバーとシステム通知メールの送信経路が同じだと、サーバーが被害を受けた際にすべてのメールが止まります。通知メールを外部のメール配信サービスから送る構成にしておけば、障害時の影響範囲を限定でき、自社で運用・保護すべきサーバーも減らせます。
