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自治体のメール配信ガイド|防災・行政情報を確実に届ける仕組みとシステムの選び方

更新日:
執筆者: 森神 佑希

大雨特別警報を知らせる防災メールが迷惑メールと判定され、約3,000人に届かず、延べ192万通の配信が最大2時間遅れた。これは2018年7月に岡山県で実際に起きた出来事です。

自治体のメール配信は、防災・防犯情報から子育て支援、イベント案内、電子申請の受付通知まで、住民の生活に直結する情報を運んでいます。一方で、Gmailの送信者ガイドライン強化、自治体ドメインを悪用したなりすましメールの増加、2023年4月からの個人情報保護法の共通ルール適用、防災メール配信サービスへの不正アクセスやクラウド基盤へのサイバー攻撃など、配信を取り巻く環境はここ数年で大きく変わりました。

「登録者は増えているのに、届かないという問い合わせも増えている」「前任者が構築した配信サーバーの設定内容が分からない」「調達仕様書に何を書けばよいか判断できない」。こうした悩みを抱える情報政策・防災担当者は少なくありません。

本記事では、自治体がメール配信を行う際に押さえるべき課題、セキュリティ・法制度の要件、システムの構築パターンと選び方、導入手順までを、実際の事例と公的データをもとに解説します。

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自治体のメール配信とは?住民への情報発信で果たす役割

自治体のメール配信とは、事前に登録した住民に対し、防災・防犯・行政サービスなどの情報を電子メールで一斉に届ける仕組みです。多くの自治体が「〇〇市安心メール」「〇〇町情報配信サービス」といった名称で提供しており、気象庁も地方自治体の防災情報メールを、最新の気象情報を入手する手段の一つとして紹介しています。

自治体が配信している主なメールの種類

自治体のメール配信は、緊急度と配信タイミングによって性質が大きく異なります。システムに求められる要件も種類ごとに変わるため、まずは自団体で扱うメールを整理することが出発点です。

メールの種類主な内容緊急度配信タイミングシステムに求められる要件
防災・気象情報避難情報、気象警報、避難所の開設非常に高い随時(夜間・休日含む)高速配信、到達率、24時間の安定稼働
防犯・安全情報不審者情報、特殊詐欺の注意喚起高い随時地域別の配信、迅速な配信
子育て・健康情報健診案内、予防接種、子育て支援中定期属性別の配信、配信予約
広報・イベント情報広報紙の発行、イベント案内低い定期作成の手軽さ、配信停止の導線
手続き関連の通知電子申請の受付、施設予約の確認中申請・予約のたび(自動)既存システムとの連携、即時送信

見落とされがちなのが、表の最下段にある手続き関連の通知です。行政手続きのオンライン化が進むにつれ、電子申請システムや施設予約システムから自動送信されるメールが急増しています。これらは管理画面から手動で送るメルマガとは異なり、システムからAPIやSMTPで送信されるため、配信基盤の選び方も変わります。

緊急速報メール(エリアメール)との違い

災害時の情報伝達手段としては、携帯電話事業者の「緊急速報メール」もあります。緊急速報メールは、対象エリアにいる携帯電話へ登録不要で一斉に届く仕組みで、主に避難指示などの重大な災害情報に用途が限られます。

一方、自治体の登録制メールは、住民が自ら登録した受信者に届くため、エリア外に住む家族や通勤・通学者にも届けられます。避難所の開設状況や給水情報、復旧の見通しといった「緊急速報メールでは扱わない続報」を送れる点も強みです。両者は競合するものではなく、初動は緊急速報メール、続報と平常時の情報は登録制メールという役割分担で考えるのが現実的です。

SNS・アプリが普及しても自治体がメールを使い続ける理由

LINEなどのSNSや防災アプリでの発信に取り組む自治体も増えています。それでもメール配信が残り続けているのは、特定のプラットフォームに依存せず、スマートフォンでも従来型の携帯電話でも受け取れるからです。

SNSは運営企業の仕様変更やアカウント停止の影響を受けますが、メールはインターネットの標準技術で、自治体が自らのドメインで発信元を管理できます。高齢者を含め幅広い住民に情報を届ける「最後の砦」として、メールの価値は今も変わっていません。

防災メール配信サービスへの不正アクセスで、全国の自治体の配信が止まる

2026年10月、自治体の防災メール配信を支えるサービスが不正アクセスを受け、全国の自治体で配信の停止が相次ぎました。メール配信を外部サービスに任せる自治体にとって、ひとごとではない事案です。

株式会社アルカディアは10月13日、自治体向けの防災情報配信サービス「SpeeCAN RAIDEN(スピーキャン・ライデン)」が第三者による不正アクセスを受け、個人情報が漏えいした可能性があると公表しました。経緯は次のとおりです。

  • 10月11日16時30分:不審な挙動を確認
  • 10月12日3時ごろ:侵入経路をふさぐ応急措置
  • 10月13日:侵入経路となったサービスの一部を緊急停止

漏えいした可能性があるのは、メールアドレス最大約313万6千件、電話番号約10万5千件、FAX番号約1万5千件(いずれも推定値)と、配信履歴として保存されていた本文です。

(出典:株式会社アルカディア「SpeeCAN RAIDENへの不正アクセスによる個人情報漏洩の可能性について」、2026年10月13日公表・14日更新)

報道によると、このサービスは約800の自治体が利用しています。総務省は、10月13日21時時点で36の自治体から防災メール配信などのサービスを停止したとの報告があったと明らかにしました(出典:共同通信(東京新聞デジタル)、2026年10月14日)。

個別の自治体では、たとえば横須賀市が、防災情報メール配信サービスの登録者47,065人分のメールアドレスに漏えいのおそれがあると公表しています(出典:横須賀市「横須賀市防災情報メール及び防犯あんしんメール配信サービス等における不正アクセスに伴う個人情報の漏えいのおそれについて」)。

件数や影響を受けた自治体は、2026年10月14日時点の情報です。今後の調査で変わる可能性があります。この事案から、自治体が確認しておきたい教訓は大きく3つあります。

配信サービスの停止に備え、代替の伝達手段を決めておく

配信サービスが止まると、防災の連絡網そのものが止まります。今回も、多くの自治体が配信の停止や新規登録の受付停止を余儀なくされました。

メール配信を外部サービスに任せる場合でも、そのサービスが使えなくなったときの代替手段を、地域防災計画や業務継続計画(BCP)の中で決めておく必要があります。代替手段には、緊急速報メール、防災行政無線、SNS、Webサイトなどがあります。代替手段に切り替えたことを住民にどう知らせるかまで、あらかじめ決めておくと安心です。

配信基盤に蓄積される個人情報を把握し、委託先を管理する

今回は登録者の連絡先だけでなく、過去の配信本文も漏えいの対象になりました。配信基盤に登録者名簿や配信履歴を、どこに、どれだけの期間保持しているかを確認しておくことが、万一の際の被害範囲を抑えることにつながります。

外部サービスへの個人情報の取り扱いの委託では、委託先の安全管理措置が十分かを契約や定期的な確認で把握しておくことも欠かせません。なお、改正個人情報保護法では、不正アクセスによる漏えいのおそれがある場合、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が求められることがあります。

自治体の名前を騙る二次被害に備える

アルカディアは10月14日、登録者に不審なメールやメッセージへの注意を呼びかけるよう、管理者である自治体に依頼しました。漏えいしたメールアドレスに、自治体や防災情報を装ったフィッシングメールが届くおそれがあるためです。

住民への注意喚起とあわせて、自治体ドメインにDMARCを設定し、なりすましメールを受信側で隔離・拒否できる状態にしておくことが、住民を守る具体的な対策になります。DMARCの導入状況と設定の進め方は、次の章で詳しく解説します。

自治体のメール配信で起きやすい課題

自治体のメール配信で最も深刻なのは、「送ったのに届かない」という問題が住民の安全に直結する点です。ここでは実際に起きた事例を交えながら、自治体が直面しやすい課題を整理します。

災害時に配信が遅延・未達になる

冒頭で紹介した岡山県の事例は、JIPDEC(日本情報経済社会推進協会)とTwoFiveが2020年に公表した自治体防災メールの調査報告でも取り上げられています。大雨特別警報という最も緊急度の高い情報が、迷惑メール判定によって一部の住民に届かず、配信全体も大幅に遅れました。

災害時は登録者数が急増し、短時間に大量のメールを送る必要があります。受信側の携帯電話事業者やメールサービスは、短時間に大量のメールを送ってくる送信元を警戒します。送信元のIPアドレスの評価(IPレピュテーション)が低い、送信ドメイン認証が設定されていないといった条件が重なると、最も届けたい瞬間に届かないという事態が起こり得ます。

自治体の防災メールは、平常時はほとんど送らず、災害時だけ急に大量に送るという特徴があります。受信側から見ると、普段は静かな送信元から突然大量のメールが届くため、攻撃を疑われて送信制限(スロットリング)を受けやすいのです。かといって、送信元の評価を保つために毎日防災メールを送るわけにもいきません。

Gmailの送信者ガイドラインへの対応が求められる

Googleは2024年2月から、Gmailアドレスへのすべての送信者にSPFまたはDKIMの設定などを求めたうえで、1日5,000件以上送る送信者には、SPF・DKIM・DMARCのすべての設定や、ワンクリックでの配信停止などを求めるようになりました。

この影響は自治体関連の配信にも及びました。NTT東日本のコラムによると、警視庁は犯罪発生情報などを届ける「メールけいしちょう」のGmail宛て配信を2024年2月1日から一時停止し、システム保守を経て2月8日に再開しています。登録者が数万人規模になる自治体の防災メールでは、Gmail宛てだけで1日5,000件を超えることは珍しくありません。さらにGoogleは、2025年11月からガイドラインに準拠しないメールへの対応を強化すると公式ヘルプ(メール送信者のガイドラインFAQ)で案内しており、要件を満たさないメールは一時的または恒久的な受信拒否の対象になります。

【2026年最新】Gmail送信者ガイドラインを1から10まで解説|Outlook・Yahoo!の最新要件にも対応

自治体ドメインのなりすまし対策が進んでいない

自治体を装ったフィッシングメールは、住民の個人情報や金銭を狙う手口として増えています。対策の要となるのが、送信ドメイン認証のDMARCです。

GMOブランドセキュリティが2026年2月に全国862の都道府県・市区を対象に行った調査では、全体の66.9%にあたる577団体がDMARCを導入していませんでした。導入済みの団体でも大半が監視のみの「none」設定で、なりすましメールを隔離・拒否できる設定(quarantine/reject)にしているのは16団体、全体の1.9%にとどまっています。

団体の種別で見ると、導入率は政令指定都市が70.0%、都道府県が68.1%と高い一方、東京23区は30.4%、市は30.1%にとどまり、2倍以上の差があります(出典:GMOブランドセキュリティ「自治体 DMARC 導入状況」実態調査、2026年2月23日調査)。

一方で、北海道では道庁を含む道内全180団体が2024年にDMARC対応を完了しています(参考:ScanNetSecurity「JPAAWG 7th General Meetingレポート」)。広域での共同化により、小規模な団体を含めて対応を進めた例です。

DMARCとは?メリットや設定方法、DMARCレポートの読み方について徹底解説

クラウド基盤の障害や不正利用で配信が止まる・悪用される

最近は、防災メール配信サービス以外でも、メール配信を支える基盤の停止や悪用が相次いでいます。

2026年10月7日午前3時40分ごろ、IDCフロンティアのクラウドサービス「IDCFクラウド」の東日本リージョン1で障害が発生しました。同社は原因を第三者によるランサムウェア攻撃と公表し、影響は契約する495の企業・自治体に及んでいます(参考:INTERNET Watch)。茨城県のWebサイトが閲覧できなくなったほか、利用企業のメールマガジンや会員向けメールが止まったことも、各社から公表されています(2026年10月14日時点)。

Webサイト、申請・予約システム、メール配信が同じ基盤に載っていると、障害時に住民へ状況を知らせる手段まで同時に失うおそれがあります。災害対応と同じく、平常時から「メールが使えないとき」を想定しておく必要があります。

また2026年3月には、外部メール配信サービスのAPIキーが第三者に不正取得され、大量のメール送信に悪用された事案や、行政機関のメールサーバーが不正アクセスを受けてスパムメールの送信に使われた事案も報告されています(参考:LANSCOPE「2026年3月の気になるセキュリティニュース」)。正規の配信基盤が乗っ取られれば、自治体の名前で住民にフィッシングメールが届くことになりかねません。

担当者の異動で運用ノウハウが途切れる

自治体では数年単位の人事異動が一般的です。メールサーバーやDNSの設定は一度構築すると長期間そのまま使われるため、構築した職員や委託先が変わると「なぜこの設定なのか」を誰も説明できない状態になりがちです。

送信ドメイン認証の設定ミスやIPアドレスの評価低下は、配信が止まって初めて気付くことが多い問題です。属人化を避けるには、配信基盤の運用を専門の事業者に任せる、設定内容を引き継ぎ資料として残す、といった仕組みづくりが欠かせません。

自治体のメール配信で押さえるべきセキュリティ・法制度

自治体のメール配信は、民間企業のメルマガと比べて、個人情報の取り扱いとネットワーク構成に関する制約が多いのが特徴です。調達仕様書の作成やシステム選定の前に、以下の制度を確認しておく必要があります。

改正個人情報保護法の共通ルール(2023年4月施行)

2021年5月に公布されたデジタル社会形成整備法により個人情報保護法が改正され、2023年4月1日から地方公共団体にも全国共通のルールが直接適用されるようになりました。これまで各自治体の条例で運用されていた個人情報保護制度が法律に一本化され、所管も個人情報保護委員会に一元化されています。

メール配信で特に意識したいのが、個人情報ファイル簿の作成・公表です。改正法では、1,000人以上の個人情報を扱う個人情報ファイルについて、利用目的や記録項目を記載した帳票の作成・公表が義務付けられました。メール配信の登録者名簿が該当するかどうかは、自団体の個人情報保護担当課に確認しておくと安心です。

あわせて、登録フォームでは利用目的(防災情報の配信など)を明示し、取得する項目を必要最小限に絞ることが基本です。地域別の配信のために居住地区を尋ねる場合も、番地まで取得する必要があるかは慎重に検討します。

また、外部のメール配信サービスを利用する場合、登録者情報の取り扱いは個人情報の取扱いの委託にあたります。委託契約で安全管理措置や再委託の条件を定め、委託先を監督する必要があります。

情報セキュリティポリシーガイドラインと「三層の対策」

総務省の「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」は、各自治体がセキュリティポリシーを策定する際の指針で、年度ごとに改定されています。

2015年の日本年金機構の情報流出事案を受け、自治体のネットワークは「マイナンバー利用事務系」「LGWAN接続系」「インターネット接続系」の三層に分離されました(三層の対策)。その後、2020年12月の改定で業務端末をインターネット接続系に配置するβモデル・β’モデルが示され(参考:総務省「自治体情報セキュリティ対策の見直しについて」)、2024年にはLGWAN接続系から特定のクラウドサービスを利用するα’モデルも整理されています(参考:総務省 検討会 中間報告)。

メール配信システムを選ぶ際は、自団体がどのモデルを採用しているかによって、管理画面へのアクセス方法や配信データの受け渡し方法が変わります。インターネット接続系からクラウド型の管理画面を使うのか、既存システムから配信基盤へデータを連携するのかを、情報政策担当と事前にすり合わせておきます。LGWAN接続系の既存システムから連携する場合は、許可された通信経路を経由できるかを確認する必要があります。

送信ドメイン認証は自治体にも求められている

JIPDECとTwoFiveの調査報告によると、総務省のガイドライン(平成30年9月版)の時点で、なりすまし対策として送信ドメイン認証技術の採用が求められていました。SPF・DKIM・DMARCは、もはや「余裕があれば対応するもの」ではありません。

インターネット協会(IAjapan)の調査では、「lg.jp」ドメインのDMARC導入率は2023年10月の2.3%から2024年6月には31.7%へと上昇しました。Gmailのガイドラインを契機に対応は進んだものの、前述のGMOブランドセキュリティの調査が示すとおり、なりすましを実際に防げる段階まで進んだ団体はごく一部です。

DMARCは、まず「p=none」とレポート送信先(rua)を指定して導入します。届いたレポートで、庁内メールや委託先のシステムなど自団体ドメインで送信しているすべての送信元を洗い出し、正規のメールがすべて認証に合格することを確認したうえで、quarantine、rejectへと段階的に引き上げるのが定石です。外部のメール配信サービスを使う場合は、そのサービスから送るメールがSPF・DKIMの認証に合格し、DMARCの整合性(アライメント)を満たすかを必ず確認してください。

DMARCアライメントとは?必要性や種類、仕組みを徹底解説

特定電子メール法との関係

特定電子メール法は、営利目的の団体や個人が送る広告・宣伝メールを規制する法律です。自治体が行政情報を配信する場合は、一般に直接の規制対象にはあたらないと整理されることが多いものの、個別の判断は所管省庁の資料や法務担当に確認してください。

ただし、法律の対象外であっても、本人の同意に基づく登録(オプトイン)と、分かりやすい配信停止の導線を整えることは欠かせません。Gmailのガイドラインでも配信停止の容易さが求められており、住民の信頼と到達率の両面から必須の対応といえます。

自治体のメール配信システムの構築パターンと比較

自治体がメール配信を実現する方法は、大きく分けて4つあります。それぞれ得意な領域が異なるため、配信するメールの種類と既存システムの状況にあわせて組み合わせるのが現実的です。

構築パターン導入のしやすさ既存システムとの連携到達率を維持する運用負荷向いているケース
自前のメールサーバー低い(構築・保守が必要)自由度は高い非常に高い(IP評価・認証・バウンス処理をすべて自前で対応)専任のインフラ担当者がいる大規模団体
自治体向けパッケージ・ASP中(調達・設定が必要)製品の仕様に依存低い(事業者が運用)登録・配信・管理を一式でそろえたい場合
汎用のメール配信システム(管理画面型)高い(調達・審査後は短期間で利用を始めやすい)API連携に対応する製品もある低い(事業者が運用)広報・イベント情報などを職員が作成して送る場合
API・SMTPリレー型の配信サービス高い(ネットワーク要件を満たせば、既存システムの送信先変更で対応可能)非常に高い低い(事業者が運用)防災システムや電子申請システムからの自動送信

自前のメールサーバーで送る

庁内やデータセンターにメールサーバーを構築して配信する方法です。設定の自由度は高い反面、IPアドレスの評価管理、送信ドメイン認証、携帯電話事業者ごとの受信制限への対応、エラーアドレスの処理など、到達率を維持するための運用をすべて自前で担う必要があります。

岡山県の事例のように、平常時は問題なく送れていても、災害時の大量配信で初めて受信側の制限に引っかかるケースがあります。専任のインフラ担当者を確保できない団体には、負担の大きい選択肢です。

自治体向けパッケージ・ASPを利用する

登録フォーム、配信画面、登録者管理などを一式で提供する自治体向けの製品です。防災情報や気象情報との自動連携を備えた製品もあり、メール配信を一から立ち上げる団体には導入しやすい形態です。

一方で、製品の仕様に沿った運用になるため、電子申請システムや施設予約システムなど、他のシステムからの通知メールまで一元化するのは難しい場合があります。

メール配信サービスをAPI・SMTPリレーで連携する

既存の防災情報システムや電子申請システムなどの送信先を、外部のメール配信サービスに切り替える方法です。システム側の画面や業務フローはそのままに、配信部分だけを到達率の高い基盤に任せられます。

既存システムがインターネットへ送信できる環境であれば、SMTPリレー先の設定変更で切り替えられる場合があります。LGWAN接続系のシステムから送信する場合は、自団体の情報セキュリティポリシーや通信経路の確認と、システム保守事業者との調整が前提です。APIで連携すれば、配信結果やエラーの情報をシステム側に取り込むことも可能です。既存システムを作り直さずに到達率の課題を解決できるのが最大の利点で、システム改修の予算が限られる自治体と相性のよい方法です。

自治体向けメール配信システムの選び方

ここからは、調達仕様書の作成やシステム比較の際に確認したいポイントを解説します。価格や機能の多さだけでなく、「災害時に確実に届くか」という観点で評価することが重要です。

配信速度と到達率の実績

災害時のメールは、配信開始から最後の1通が届くまでの時間が勝負です。配信速度が不足していると、登録者数が多いほど後半の受信者に届くのが遅れます。

たとえば登録者50,000人に毎分300通で送ると約167分、毎分5,000通なら約10分かかります(試算。実際の到達時間は受信側の制限などで変わります)。

配信速度とあわせて、到達率の実績や、携帯電話事業者・メールサービスごとの受信制限への対応方法も確認します。災害時にだけ大量配信する自治体の場合、自前で送信元IPアドレスの評価を育てる(ウォームアップする)のは現実的ではありません。日常的に評価が維持されている配信基盤を使えるかどうかも、重要な判断材料です。速く送れても届かなければ意味がないため、両方をセットで評価してください。

送信ドメイン認証とGmailガイドラインへの対応

自団体のドメイン(lg.jpなど)から送信する場合に、SPF・DKIM・DMARCの設定に対応しているかを確認します。特にDKIMは、配信サービス側で自団体ドメインの署名を付与できるかどうかが重要です。

あわせて、エラーアドレス(バウンス)の自動処理、ワンクリックでの配信停止への対応状況も確認しておきます。エラーアドレスに送り続けると送信元の評価が下がり、正常なアドレスへの到達率まで悪化するためです。

既存システムとの連携のしやすさ

防災情報システム、電子申請システム、施設予約システムなど、メールを送る既存システムが複数ある場合は、それぞれから配信基盤に連携できるかを確認します。SMTPリレーに対応していれば既存システムの改修を最小限に抑えられ、APIに対応していれば配信ログの取得など高度な連携も可能です。

セキュリティ要件と調達要件への適合

通信の暗号化(TLS)、管理画面や送信元のIPアドレス制限、SMTP認証、操作権限の管理など、自団体のセキュリティポリシーで求められる要件を満たすかを確認します。国の制度であるISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)への登録を調達要件に含める自治体もあるため、自団体の基準を事前に確認してください。

障害時の備えと不正利用への対策

平常時の性能だけでなく、障害が起きたときにどうなるかも確認します。障害情報の公表方法と連絡体制、Webサイトや申請システムとは別の基盤から配信できるか、APIキーや送信元IPアドレスの制限など不正利用を防ぐ仕組みがあるか、といった点が評価の目安です。

あわせて、配信システムが使えない場合に備え、緊急速報メール、SNS、防災行政無線など複数の伝達手段を、地域防災計画や業務継続計画(BCP)の中で整理しておくことが大切です。

サポート体制と運用の引き継ぎやすさ

人事異動を前提とすると、日本語で相談できるサポート窓口があるか、操作や設定がドキュメント化されているかは重要な評価軸です。配信ログを後から確認できれば、「メールが届かない」という住民からの問い合わせにも根拠をもって回答できます。

自治体のメール配信を始める手順

ここでは、自治体が新たにメール配信を始める、または既存の配信基盤を見直す際の手順を6つのステップで紹介します。

STEP 1:配信の目的と対象者を整理する

防災、防犯、子育て、広報など、配信するメールの種類と担当課を洗い出します。前述の「メールの種類」の表をもとに、緊急度の高いメールと定期配信のメールを分けて要件を整理すると、システムに求める条件が明確になります。

STEP 2:登録フォームと同意の取得方法を設計する

登録フォームには、利用目的、取得する項目、配信停止の方法を明記します。地区や関心分野ごとに配信を分ける場合は、登録時に選択できるようにしておくと、後から住民に再登録をお願いする手間を省けます。

STEP 3:配信用ドメインと送信ドメイン認証を準備する

配信に使うドメインを決め、SPF・DKIM・DMARCを設定します。DMARCは「p=none」とレポート送信先(rua)を指定して始め、すべての送信元が認証に合格していることを確認しながら、段階的にポリシーを引き上げます。DNSを管理する部署や委託先との調整に時間がかかることが多いため、早めに着手します。

STEP 4:配信システムを選定し、連携テストを行う

前章の選び方をもとにシステムを選定し、無料トライアルなどを活用して既存システムとの連携テストを行います。docomo、au、SoftBankなどのキャリアメール、Gmail、Yahoo!メールなど、住民が使う主要なメールサービスへの到達を確認しておきます。

STEP 5:テスト配信と災害時を想定した訓練を行う

職員の端末への配信テストに加え、防災訓練にあわせた大量配信の訓練も実施します。災害時に使う件名・本文のテンプレートを事前に用意しておくと、緊急時の作成ミスを防げます。

件名のテンプレート例は次のとおりです。

  • 【〇〇市防災】【警戒レベル4】避難指示発令(〇〇地区)〇月〇日〇時〇分
  • 【〇〇市防災】指定避難所を開設しました(〇か所)
  • 【〇〇市防災】給水所の設置について(〇月〇日〇時現在)
  • 【〇〇市安全】〇〇町付近で不審者情報

件名の冒頭に自治体名と分類を入れると、受信者がひと目で重要度を判断できます。なお件名は第三者も模倣できるため、なりすまし対策はDMARCなどの送信ドメイン認証で行います。

STEP 6:運用ルールを定め、配信状況を定期的に確認する

誰が配信を作成し、誰が承認するか、夜間・休日の配信体制はどうするかを運用ルールとして定めます。導入後は、エラー率や配信停止の件数、住民からの問い合わせ内容を定期的に確認し、運用を改善していきます。

住民に届けるための自治体のメール配信なら、メール配信システムを活用する

ここまで見てきたように、自治体のメール配信で求められるのは「速く」「確実に」「安全に」届けることです。こうした要件を自前で満たし続けるのは負担が大きいため、専門のメール配信システムを活用するのが現実的な選択肢です。

メール配信システムを使うメリット

自治体がメール配信システムを導入すると、到達率の維持や送信ドメイン認証といった専門性の高い運用を、配信事業者に任せられます。主なメリットは次の3つです。

  • 災害時の大量配信に強い:高速な配信基盤と受信側ごとの送信制御により、登録者が多くても短時間で届けられる
  • 送信ドメイン認証やガイドラインへの対応を任せられる:SPF・DKIM・DMARCやGmailの送信者ガイドラインへの対応を、専門の事業者の知見で支えられる
  • 担当者の異動があっても運用が途切れにくい:配信基盤の保守を事業者が担うため、属人化しやすいサーバー管理から職員を解放できる

既存システムからの自動送信が中心ならAPI・SMTPリレー型、職員が管理画面から広報メールを作成するなら管理画面型と、用途にあわせて選ぶことで導入効果を高められます。

おすすめのメール配信システム「blastengine」

ブラストエンジン

当社が提供するブラストエンジン(blastengine)は、既存のシステムとSMTPリレーやAPIで連携し、大量のメールを高速かつ高い到達率で配信できるメール配信サービスです。防災情報システムや電子申請システムなど、すでに運用しているシステムから連携することで、システムを作り直さずに配信部分を切り替えられます(LGWAN接続系からの利用可否は、自団体のネットワーク要件の確認が必要です)。

  • 99%以上の高いメール到達率※:国内キャリア・ISPごとの個別送信ロジックで、キャリアメールへの到達を高める
  • 1,500万通/時の高速配信:登録者が多い防災メールでも、短時間で送信処理を完了できる
  • SPF/DKIM/DMARC対応:送信ドメイン認証に標準対応し、なりすまし対策とGmailガイドラインへの対応を支える
  • IPレピュテーション管理とバウンスメール自動対応:送信元の評価維持やエラーアドレスの処理をブラストエンジン側で行い、職員の運用負荷を軽減
  • セキュリティ機能と日本語サポート:TLS対応、IPアドレス制限、SMTP認証に加え、電話・メールによる日本語のテクニカルサポートを提供

導入事例:自治体向け災害対応システムのメール配信基盤として採用

日本アイ・ビー・エム株式会社様は、地方公共団体向けの「IBM災害対応情報システム」で、住民への一斉メール配信の基盤としてブラストエンジンを採用しています。

導入前は、以前の配信の仕組みから国内大手キャリア宛てに2,000〜3,000通を送ると送信制限がかかり、メールの到達に時間がかかっていました。一度トラブルが起きると、影響範囲の洗い出しや復旧、事後処理を含めて80時間もの対応が発生することもあったといいます。

ブラストエンジンの導入後は、こうした送信制限に遭遇することがなくなり、トラブル対応の工数が大幅に削減されました。共用IPのため日常的なウォームアップが不要な点が、災害時に突発的に大量配信する用途に合っていたこと、データベースを持たない設計で既存システムからAPIでシームレスに連携できたことも、採用の決め手として挙げられています。

詳しくは導入事例「80時間を超えるトラブル対応を大幅削減!一斉メール配信を安定化」をご覧ください。

※導入効果は個別のお客様の事例であり、すべての環境で同様の効果を保証するものではありません。

初期費用は無料で、月額3,000円(税抜)から利用できます(2026年10月時点)。配信ログで送信状況を確認できるため、住民からの「届かない」という問い合わせにも根拠をもって対応できます。無料トライアルで既存システムとの連携テストを行ったうえで導入を検討できます。

ブラストエンジン公式サイト:https://blastengine.jp/

おすすめのメール配信システム「ブラストメール」

ブラストメール

ブラストメールは、導入数シェア16年連続No.1、導入社数30,000社以上の実績を持つメール配信システムです。専門知識がなくても使えるシンプルな管理画面で、広報やイベント情報などのメールを職員が手軽に作成・配信できます。

  • 配信承認機能:作成者とは別の職員が内容を確認してから配信でき、誤配信の防止に役立つ
  • ユーザー管理・権限設定:職員ごとにアカウントと権限を設定できる
  • フィルタ配信(セグメント配信):地区や関心分野などの登録情報にあわせて配信先を絞り込める
  • 登録解除フォーム作成とGmailガイドライン対応:住民が分かりやすく配信を停止できる導線を用意できる
  • 効果測定:開封率・クリック率・エラーカウントを確認し、配信内容の改善に活かせる

管理画面から職員が作成する広報メールにはブラストメール、システムから自動送信する通知や防災メールにはブラストエンジンと、用途にあわせて使い分けることもできます。まずは無料お試しで操作性を確認してみてください。

公式サイト:シェア1位のメール配信システム「ブラストメール」

まとめ

自治体のメール配信は、防災・防犯から行政手続きの通知まで、住民の安全と生活を支える重要なインフラです。一方で、Gmailの送信者ガイドライン強化、なりすまし対策の遅れ、個人情報保護法の共通ルール適用など、対応すべき課題は年々増えています。

本記事のポイントは次のとおりです。

  • 災害時の遅延・未達は実際に起きており、配信速度と到達率の両方を備えた基盤が必要
  • 都道府県・市区の約3分の2がDMARC未導入で、送信ドメイン認証への対応は急務
  • クラウド基盤の障害や配信基盤の不正利用も起きており、障害時の代替手段と不正利用対策を事前に確認する
  • 個人情報保護法の共通ルールや三層の対策など、自治体特有の制度を踏まえてシステムを選ぶ
  • 既存システムからの自動送信はAPI・SMTPリレー型、職員が作成する広報メールは管理画面型と使い分ける

次のアクションとして、まずは自団体のドメインでSPF・DKIM・DMARCが設定されているかを確認し、現在配信しているメールの種類と送信元のシステムを一覧にしてみてください。そのうえで、到達率に課題のあるシステムから配信基盤の見直しを検討するのが効率的です。自治体向けシステムでの活用例は、ブラストエンジンの導入事例も参考にしてください。

FAQ

自治体のメール配信と緊急速報メール(エリアメール)は何が違いますか?
A:緊急速報メールは、携帯電話事業者の仕組みを使い、対象エリアにいる携帯電話へ登録不要で一斉に届けるもので、主に重大な災害情報に用途が限られます。自治体の登録制メールは、登録した住民に届くため、エリア外にいる家族にも届けられ、避難所の開設状況や復旧情報などの続報、平常時の行政情報も配信できます。
自治体のメールがGmailに届かない場合、何を確認すべきですか?
A:まず送信ドメインにSPF・DKIM・DMARCが正しく設定されているかを確認します。Gmailではすべての送信者にSPFまたはDKIMの設定などが求められ、1日5,000件以上送信する送信者には、これらすべての認証とワンクリックでの配信停止が求められています。あわせて、エラーアドレスへの送信が続いていないか、送信元IPアドレスの評価が低下していないかも確認してください。
自治体のメール配信に特定電子メール法は適用されますか?
A:特定電子メール法は営利目的の広告・宣伝メールを対象とする法律のため、行政情報の配信は一般に直接の規制対象にはあたらないと整理されることが多いです。ただし個別の判断は法務担当などに確認してください。法律の対象外であっても、本人の同意に基づく登録と、分かりやすい配信停止の導線を整えることは欠かせません。
既存の防災システムを改修せずに到達率を改善できますか?
A:既存システムがインターネットへ送信できる環境であれば、SMTPリレー型のメール配信サービスの利用により、送信先サーバーの設定変更で配信部分を切り替えられる場合があります。LGWAN接続系のシステムの場合は、自団体の情報セキュリティポリシーや通信経路の確認と、システム保守事業者との調整が前提です。ブラストエンジンでは無料トライアルで連携テストを行ってから導入を検討できます。

森神 佑希
この記事の執筆者

株式会社ラクスライトクラウド Webマーケティングリーダー
森神 佑希

顧客導入社数シェアNo.1のメール配信システム「blastmail」・「blastengine」のWebマーケティング担当。2年以上メルマガ配信の実務を行っており、先頭に立ってPDCAを回してきた。メルマガのノウハウは日本最高クラスと言っても過言ではない。

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